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第62話:【死線の盾】

燃え盛る森の中を、獣人たちの悲鳴が切り裂く。 翔太とリーズ、そして二ノ、エイベルや虎人のリーダーとはぐれてしまった八人の一行は、背後から迫る「葬儀部隊」の冷徹な足音に追い詰められていた。


「クータ、こっちだ! 足元に気をつけろ!」


「う、うん……あうっ!」


ドジな子供のクータは、何度も根っこに足を取られながらも、必死に大人たちの後ろを走っていた。そんな彼を支え、守りながら逃げていたのは、昨夜まで互いを疑い合っていた仲間たちだった。


不意に、進行方向の藪が不自然に揺れた。


「危ないッ!!」


鋭い叫びと共に、一人の大柄な獣人がクータを突き飛ばした。 昨夜の焚き火で「親父と干し肉を売ってたんだ」と懐かしそうに語っていた、あの獣人だ。 彼の胸元を藪の中から突き出された銀灰色の槍が深く、無慈悲に貫いた。


「が……はっ……」


「おじちゃん!」


クータが叫ぶ。槍を突き出したのは、伏撃ふくげきしていたヴォルガの兵士だった。だが、獣人は槍を刺されたまま、自らの肉体でその武器を固定し、兵士の動きを封じた。


「……逃げ、ろ……クータ。ねーちゃんも……早く!」


彼は血を吐きながら、隣で震える女獣人を突き出すように促した。


「……国に着いたら、親父に伝えてくれ。……一緒に肉を売れなくて、ごめんな……ってな。……行けぇ!!」


獣人は一矢報いようと、刺されたまま腰のナイフを抜き、兵士の喉元へ食らいついた。それは逃げ道と時間を稼ぐための、あまりにも壮絶な最期の輝きだった。


── 狂気の中の献身

逃走は、もはや一方的な虐殺に近いものへと変わっていた。 だが、その極限の絶望の中で、キャンプでの不信感は嘘のように消え去っていた。


「次は私だ! お前たちは先に行け!」 「故郷を……ウル・ズールの壁を、あの子に見せてやってくれ!」


一人、また一人と、大人たちが女子供を守るために足を止め、鋼鉄の軍勢の前に立ちはだかっていく。 彼らは皆、死を覚悟した瞳で、最後に愛する者への、あるいは故郷への短い遺言を残して散っていった。


かつてキャンプにいた百名近い同胞のうち、この集団に残っていたのはたったの八人。 その内、六人がクータと女獣人を守るための「盾」となり、次々と命を散らしていった。

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