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第47話:【断罪の白銀と、守護の誓い】

── 束の間の安らぎの終わり

翌朝、キャンプに差し込む朝日は、昨夜の穏やかな空気の名残を微かに孕んでいた。 翔太は、昨夜リーズに掛けた上着を彼女が丁寧に畳んで返してくれた時の、少し照れたような笑顔を思い出していた。


(かなわないよな、あいつには……)


現実世界では、誰かに無条件で感謝されたり、期待されたりすることなんてなかった。ましてや、自分の存在を「優しい」と肯定してくれる者など。 翔太は、 Lv. 20 の力を宿した拳を静かに開閉する。この力は、彼女の理想を守るための「盾」として振るうべきだと、改めて自分に言い聞かせた。


だが、その決意を嘲笑うかのように、キャンプの外縁から鋭い咆哮が上がった。


「英雄様! 北の街道より、白銀の甲冑を纏った一団が接近! その数、およそ五百!」


偵察の狼人が、息を切らせて飛び込んできた。その顔には、これまでの貴族軍を相手にしていた時にはなかった、根源的な恐怖が刻まれていた。


── 教団騎士団、来襲

街道を埋め尽くすのは、統一された白銀のプレートアーマーを纏い、黄金の太陽を象った盾を掲げる騎士たち──西方諸国で絶対的な権威を持つ『太陽聖教団』の直属騎士団だった。


「止まれ、異形にくみする者共よ」


最前列に立つ、一際豪華な甲冑に身を包んだ男が剣を抜いた。 その立ち振る舞いだけで、彼らがこれまでの腐敗した兵士たちとは一線を画す、鍛え抜かれたエリートであることを示していた。


「我は断罪騎士団長、アルス。神の沈黙を良いことに、獣の軍勢を率いて聖域を汚す不浄の化け物……そして、堕ちた聖女リーズ。主の御名において、貴様らに裁きを下すために来た」


その冷徹な宣言に、解放軍の獣人たちが殺気立つ。 だが、アルスという男の放つ魔力は、かつての暗殺者「影の牙」の頭領とは異なり、どこまでも純粋で、鋭利な刃のようだった。


── 突きつけられた「正義」

「待ってください! 私たちはただ、故郷へ帰りたいだけです! 争うつもりはありません!」


リーズが前へ飛び出し、必死に声を張り上げた。 だが、アルスは冷ややかな一瞥をくれただけで、その剣先をリーズへと向けた。


「黙れ、裏切り者。獣を癒やし、人に刃を向けさせるその行為、もはや聖女の風上にも置けぬ。貴様の罪は、その首を教団の祭壇に捧げることでしか購えぬ」


「リーズに触れさせはしない」


翔太が、リーズを庇うように前へ出た。 Lv. 20 の威圧感が、白銀の騎士たちを飲み込む。だが、教団騎士たちは訓練された規律でその重圧に耐え、一歩も引かない。


「……ほう。貴様が『人の形をした災厄』か。確かに、並の人間ではその威圧感に耐えられまい。だが、我らには神の加護がある」


アルスの剣が、白銀の光を放ち始めた。


── 不殺の誓いと、至難の制圧

「……翔太さん」


リーズが後ろから、翔太の服の裾を震える手で掴んだ。 昨夜の約束。無闇な殺生はしないという、彼女との誓い。


「分かってる。……リーズ、下がってろ」


翔太は武器を構えることなく、ただ両の拳を固めた。 殺してしまえば、一瞬で終わるだろう。だが、今の翔太にとって、殺さずにこの練度の高い五百人を無力化することは、全力で戦うよりも遥かに過酷な試練だった。


「総員、突撃! 異端を排除せよ!」


アルスの号令と共に、白銀の波が押し寄せる。 翔太は、襲い来る騎士たちの剣を、 Lv. 20 の反射神経で見切り、その腹部や関節へと、寸止めに近い精密な打撃を打ち込んでいった。


「ぐ、はぁっ!?」


重装甲を纏った騎士たちが、一人、また一人と、内臓を揺さぶられてその場に崩れ落ちる。 だが、殺してはいない。急所を外し、意識だけを刈り取る戦法。 しかし、その精密な制御は、翔太の精神を極限まで削り、筋肉を悲鳴を上げさせた。


(……クソッ、なんてストレスだ。普通に殴り飛ばした方がどれだけ楽か……!)

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