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第29話:【狂う感覚と、鋼の確信】

── 現実世界:侵食の共鳴

静まり返った六畳間。 陽葵は、翔太の首筋に走る「異変」を目の当たりにしていた。 小さな傷口から、墨を流したような黒い線が、彼の血管に沿ってじわじわと広がり始めている。


翔太……? どうしたの、その色……。


陽葵の震える指が、その黒い線に触れる。 その瞬間、翔太の身体が大きく跳ねた。 現実の彼の肉体は眠っているはずなのに、筋肉は鉄のように硬直し、歯を食いしばる音が部屋に響く。 陽葵は恐怖に顔を歪めるどころか、その苦しげな彼の表情にさえ、自分しか知らない彼の一面を見出したような歪な喜びを感じていた。 彼女は翔太の胸に耳を当て、狂ったように速まり、時折止まりそうになる不規則な鼓動を、指先を立てて数え始めた。


── 異世界の王城:見えない刃

玉座の間では、死の舞踏が繰り広げられていた。 「影の牙」頭領は、もはや実体のない残像となっていた。 翔太の放つ「高密度圧域」という物理的圧力を逆手に取り、気圧のわずかな変化を捉えて最短距離で滑り込んでくる。


キィィィィィィィン!


再び、翔太の肩口に火花が散る。 一ミリ、また一ミリと、鋼の皮膚が削られ、そこから神経毒が追加で流し込まれていく。


[現在レベル:Lv. 15] [警告:神経伝達阻害率18%。左腕の随意運動に重大な遅延が発生しています。]


翔太の視界が、ぐらりと歪んだ。 左手の感覚はすでに消え、冷たい氷の塊をぶら下げているような違和感だけが残っている。 国王はそれを見て、玉座の上で膝を叩いて快哉を叫んだ。


ははは! 見ろ、足取りがふらついているぞ! 頭領よ、なぶり殺せ! その傲慢な肉体を、一欠片ずつ削ぎ落としてやれ!


頭領は王の叫びなど耳に入っていない。 ただ、冷徹に「獲物」を観察していた。 毒の効果は確実に出ている。 だが、目の前の男の瞳にある火は、消えるどころか、より深く、昏い輝きを増していた。


翔太は、動かなくなった左腕を、自身の右手の握力だけで無理やり固定した。 感覚がないなら、ただの「重り」として使えばいい。 彼は自身の質量を一点に集中させる。


お前は凄いな。システムなんて関係ない、純粋な殺意だけでここまで届くのか。


翔太の声は、肺の奥から響くような重低音だった。 毒によって肺の筋肉さえも麻痺し始めている。 呼吸の一つひとつが、焼けた鉄を飲み込むような激痛を伴う。 しかし、その痛みが、翔太の生存本能を極限まで呼び覚ましていた。


……だが、手加減はやめだ。お前を殺さない程度に加減する余裕は、もう俺にはない。


翔太が右足を一歩、踏み出す。 たったそれだけで、王城の床が支えを失い、下の階へと崩落を始めた。 毒で狂った神経系を、翔太は自身の「意志」という力技で強引に上書きする。


[スキル:『絶対質量』を強制励起。] [警告:肉体への過負荷により、一部の筋繊維が崩壊の危機にあります。]


翔太の身体から、物理的な衝撃波が全方位に放たれた。 頭領の速度を上回る、圧倒的な「空間の圧縮」。


[現在レベル:Lv. 15  → 変動なし] [状態異常:神経汚染22%。左半身の機能不全。]

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