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第25話:【静かなる侵食と、王都の震撼】

現実世界の六畳間。 翔太が飲み干したスポーツドリンクの空ボトルを置くと、陽葵ひまりが「もう一本、キンキンに冷えてるのがあるよ」と、甲斐甲斐しく次のボトルを差し出した。


「……翔太。あんたの身体、さっきよりまた一段と……厚くなってない?」


陽葵はそう言いながら、翔太の背後に回ると、汗を拭くフリをしてその分厚い広背筋にそっと指を這わせた。指先に伝わるのは、もはや人間の皮膚の質感ではない。熱を帯びた「高密度の岩盤」が脈動しているような、圧倒的な生命の重みだ。


「……あたし、こんなに凄い身体の男の人、見たことないわ。なんだか……怖いくらいだけど、触ってると、あたしまで変な感じになっちゃう……」


陽葵は顔を赤らめ、わざとらしく「肩、揉んであげるね」と言って、鉄のように硬い僧帽筋に体重をかけるようにしがみついた。細い指先が、翔太から立ち昇る野生的な熱気と匂いに包まれる。彼女の瞳には、かつての「幼馴染」を独占したいという歪な情熱と、誰にも渡したくないという強い執着が滲み始めていた。


(翔太……もっと、あたしに頼ってよ。あんたがどれだけ強くなっても、あたしが『燃料』を全部注いであげるから……)


── 異世界の激震:近衛騎士団の瓦解

異世界の戦場。 重力によって地面に叩きつけられた近衛騎士団のただ中で、団長のカール・フォン・バウアーだけが、血を吐きながらも折れた剣を支えに立ち上がろうとしていた。


「……化物め。我が王国の誇り……鉄血の牙を、指一本触れずにこれほどまで……!」


「誇りか。……それが、動けない人間をさらに踏みにじるための免罪符なら、そんなものはここで叩き壊してやる」


翔太は一歩、踏み出す。 その瞬間、彼の身体から溢れ出した魔力が物理的な「質量」を帯び、周囲の空間を歪ませた。


「させるかぁッ! 全員、命を燃やせ! 王家の秘儀、『竜殺しの陣』を起動せよ!!」


団長の絶叫と共に、這いつくばっていた騎士たちが、自らの生命力を魔力に変換する禁忌の術を発動させた。数百人の魔力が一箇所に集束し、翔太の頭上に空間ごと押し潰すような巨大な「光の断頭台」が形成される。


「高橋さん、避けて! あれは魂を削り取る魔法です!」


リーズが叫び、必死に防御障壁を重ねる。 だが、翔太は逃げなかった。 彼はその巨大な光の刃を見上げ、ただ静かに全身の筋肉を「硬化」させた。


[警告:超高密度の魔力反応を検知。] [新スキル:『高密度圧域ハイ・デンシティ・フィールド』を自動展開します。]


「……重い一撃を、見せてやる」


翔太が垂直に拳を突き上げた。 魔法の刃が彼の「圧域」に触れた瞬間、空間が「パリン」とガラスのように割れる音が響いた。 放たれたのは純粋な「質量」の波動。 数百人の魔力の結晶である断頭台が、翔太の拳に触れることさえできず、その周囲でただの光の塵へと粉砕されていった。


衝撃波が騎士団を襲う。 だが、翔太は直前で拳の軌道を逸らしていた。 殺すためではなく、その「格の差」を魂の最深部に刻み込むために。 騎士たちは、放たれた風圧だけで武器を取り落とし、戦う意志を完全に粉砕されてその場にへたり込んだ。


「あ……。あぁ……」


団長のカールは、膝から崩れ落ちた。 目の前に立つ男は、討伐の対象などではない。 逆らえば世界が圧殺される「不可避の天災」そのものだった。


「……リーズ、道は開けた。行くぞ」


翔太は、静まり返った戦場を悠然と歩き出す。 背後では、リーズが誇らしげに、そして熱烈な瞳で翔太の背中を見つめていた。 名門に捨てられた少女と、世界に絶望していた男。 二人が歩む先には、この国の支配を象徴する「王都の城門」が、朝日の中に無防備な姿を晒していた。


[レベルが上昇しました:Lv. 12  → Lv. 15]

[スキル:『高密度圧域』により、周辺の低レベル個体を自動で無力化します。]

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