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第20話:【断絶の質量と、鋼の慈悲】

月明かりの下、ヴァルハイト家の魔導騎士団が放つ魔法の光が、夜の森を白く焼き尽くそうとしていた。 だが、その光の渦の中心で、高橋翔太は一歩も退かずに立っていた。


「……それが、全力か?」


翔太の声は、魔法が爆ぜる轟音の中でも冷徹に響いた。 現実世界で陽葵が用意した過剰なまでのエネルギーが、今の彼の肉体で猛烈な熱量を帯びている。皮膚の表面では魔力が陽炎のように揺らめき、飛来する光の矢を、ただその「密度」だけで霧散させていた。


「バカな……! 第4階梯の攻撃魔法を無防備に受けて、傷一つないだと!?」


騎士団長の声が裏返る。 翔太は答えず、ただ地を蹴った。


ドォォォォンッ!


爆鳴と共に地面が陥没し、翔太の巨躯が「見えない弾丸」と化した。 速すぎる。 騎士たちが反応するよりも早く、翔太は最前線の重装騎士の懐へと滑り込んでいた。


「ぐ、あああッ!?」


翔太は拳を握らなかった。 掌を騎士の巨大な盾に添え、ただ「押し出した」だけだ。 重力の操作を伴ったその一撃は、鋼鉄の盾を紙細工のようにひしゃげさせ、騎士を後方の木々ごと十メートル以上も弾き飛ばした。


[パッシブスキル:『重圧の加護』を発動。] [対象の武装を損壊。生命への致命的な打撃を回避し、戦闘能力を奪います。]


「殺すな……。こいつらには、生きて絶望を味わわせる」


翔太の瞳が、青白いシステムウィンドウの光を反射して冷たく輝く。 彼は次に、詠唱中の魔導師たちの中心へと跳んだ。 降り下ろされた氷の剣を、翔太は素手で掴み取り、握力だけで粉々に砕く。 驚愕に目を見開く魔導師の首筋に、手刀を軽く当てる。 たったそれだけで、強化された神経伝達は対象の意識を強制的に刈り取った。


「ヒッ……くるな、くるなあああッ!」


正気を失った騎士が剣を振り回すが、翔太はそれを指先で弾き飛ばし、鳩尾に軽い衝撃を叩き込む。 殺しはしない。 だが、二度と自分たちに牙を剥こうとは思えないほどの「恐怖」と「無力感」を、その骨の髄まで叩き込んでいく。


[レベルが上昇しました:Lv.8 \rightarrow Lv.10] [称号:『蹂躙する者』のランクがアップしました。]


わずか数分。 森に広がっていたのは、全滅した騎士団――しかし、一人として命を落としていない奇妙な地獄絵図だった。 ひしゃげた鎧、折れた剣、そして恐怖で失禁し、白目を剥いて倒れ伏す騎士たち。


リーズはその圧倒的な光景を、息を呑んで見つめていた。 自分を「不浄」と呼び、死の迷宮へ追いやった一族の精鋭たちが、この男の前では赤子同然に扱われている。


「……高橋さん。どうして、止めを刺さなかったのですか?」


リーズが、震える声で問いかける。 翔太は乱れた息一つ乱さず、ひしゃげた兜を足元に転がした。


「……死んだら、後悔もできないだろ。こいつらには、自分がどれほど無力な存在に喧嘩を売ったのか、生きながらにして理解させる」


その言葉には、かつて自分が社会の底辺で味わってきた屈辱を、力でねじ伏せた者の静かな重みがあった。 翔太はリーズの元へ歩み寄り、彼女の細い肩に手を置いた。


「行こう、リーズ。……お前を捨てた家系ヴァルハイトに、本当の『不純物』が誰なのかを教えに行く」

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