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そいつは体長が5メートルもある魔物だった。外見はクマのようだが、輪郭はサイに似ていた。だが、サイと違い角は3本あった。1本は鼻と目の間から上に反るように1メートルほどの凶悪な角が生えており、残りの2本は左右の目より少し上の部分から外側に少し出てから、カーブして前の方に向かって凶悪な角が生えており、大きく避けないと真ん中の角は問題なくても左右の角が突き刺さりそうだ。
「こいつはやべぇな。殺り甲斐がありそうだ」
「にひひっ! なんか雷雨のその笑顔見るだけで安心するよ!」
「うん。雷くんのその笑顔カッコよくて好き」
「また笑ってたか。まぁ相手さんもそろそろ待つのが嫌になったみたいだし、殺ろうか!」
無意識に笑ってしまってたみたいだ。強い奴と戦えるってなると楽しみになるんだよな。まぁ雪祈音と風羽花が好感もってくれてるからいいんだけどな。
相手も痺れを切らし「グガアアアァァッー!」と叫びながら突っ込んできた。
雪祈音と風羽花には先に逃げてもらい、避ける時間ギリギリまで速射しまくったが、全然効かなかったから【想造の製作】で岩のブロックを出し、足場にして前宙ハーフで避けた。【想造の製作】で出した岩のブロックが一瞬で砕かれた。パワーもやべぇが防御力が素でやべぇ。こいつ防御系のスキル、魔法使ってないのにこれかよ。【磁場の雷砲】を使わないと駄目そうだな。
「風羽花、雪祈音、魔法を使わないと効かなさそうだ。身体のデカさのわりに初速も速いし、パワーもヤバいから無理して近づくなよ!」
「おっけー!」
「わかった」
サイグマは思った以上に初速が速かった。油断したらあの角で一突きだろうな。
できるだけ俺にヘイトを向けるようにしとかないとな。
サイグマが俺の方に向き直し、突っ込もうとしてきたから5パーセントほどの魔力を込めた【磁場の雷砲】を放った。が――角で弾き飛ばしやがった。
サイグマ、俺が【磁場の雷砲】を放つ瞬間、魔法が来ると察知したのだろう、角に関する魔法を使いやがった。
〈魔獣の棲まう森〉にはサイグマ奴らがうじゃうじゃ居るのか……。いいね、いいねぇー。楽しみだ。
サイグマが俺に集中して、周りが見えなくなったのだろう。後ろから風羽花が近づいてるのが分かってないようだ。
風羽花は自身に気づいてないと分かり、一気にサイグマに近づき【風刀の魔纏】を発動し後ろ脚を斬りつけた。サイグマの防御力が高いため深くは傷をつけられなかったようだ。
「……っ! めっちゃかたーい! 1割ぐらい魔力込めたのに!」
風羽花が悔しそうに叫んでいた。
サイグマが「ググガアアァァ」と痛そうに叫びながら、暴れ始めた。たぶん、傷をつけられる事がなかったのかもしれないな。
風羽花はヒットアンドアウェイで攻撃してたため、サイグマの攻撃範囲からは逃げられていた。だが、サイグマのヘイトが風羽花に向かってしまった。風羽花に突進をしようとした時、雪祈音が【氷結の弩砲】を放ち、サイグマの横っ腹に突き刺さった。
サイグマは刺さった【氷結の弩砲】を抜こうと大暴れしていた。
「やった。成功した」
雪祈音は【氷結の弩砲】がサイグマに刺さり喜んでいた。
「なにが、成功したんだ?」
なにが成功したのか気になり雪祈音に問いた。
「普通に【氷結の弩砲】を放っても傷がつかないと思ったから、銃弾のように螺旋回転をイメージして発動したら、イメージ通りに放つ事ができたから。それに、新しい魔法【氷結の狙撃】として習得する事もできたの。でも、あまり大きくは作れないんだ」
「まじか! それでも、すげぇな!」
なにか集中してるなとは思っていたが、こんな状況で新しい魔法を習得するとか凄いわ。風羽花も新しい魔法を習得してたし、俺も負けてられないな。
サイグマもやっと【氷結の狙撃】が抜けたようで、大暴れしていたのが止まっていた。
次の標的が雪祈音に変わり突進しようとしたので、【想造の製作】を発動して、サイグマの目の前にデカい土ブロックを出し、雪祈音の逃げる時間を確保しつつ、【氷結の狙撃】でできた傷にサイグマが当たらないように避けるまで銃弾を何発も速射した。すると、サイグマはチクチク攻撃してくる俺にムカついたようで、角の魔法を発動し土のブロックを破壊したあと、魔法を発動したまま俺を標的に突進をしてきた。
俺は真っ向勝負をする事にした。〈死獄〉と〈生天〉に4割ずつの魔力を込めた【磁場の雷砲】で、左右外側に生えている角目掛けて放った。【磁場の雷砲】とサイグマの角が衝突した時、ギャイイィンと音が鳴り響き、サイグマの角は折れ耳には抉られた傷ができていた。
サイグマは衝撃で脳が揺れたのだろうか、足がフラフラしおぼつかない状態になった。
その瞬間を見逃さず、風羽花は【風刀の魔纏】を纏わせた〈雷光〉を【氷結の狙撃】で傷を負っている所に突き刺し、雪祈音は【氷結の狙撃】5本を反対側の横っ腹に放った。
サイグマの咆哮が弱くなり聞こえなくなったあと、バタンと倒れ消えていった。
「いやぁ、強かったな! 魔力がほぼないわ」
「雷雨は楽しそうに戦ってたね! 私もほとんどないや!」
「うん、雷くん凄く楽しそうに笑ってたね。わたしもほとんどなくなった」
「ほらよっ」
【実用の投映】から魔力を回復するドリンク――魔力ポーションを取り出し、雪祈音と風羽花に渡すと「ありがとう」と受け取り、3人で飲んだ。
魔力ポーションは前から持っていたが、実践で使うことになったのが今回で初めてだ。それだけ強敵だったって事だな。回復量は魔力が全快するし、味はスポーツドリンクで量が100ミリリットルと飲みやすい。不味くなくて良かった。でも1本5万ポイントもするからポンポンと買うことができない。
「あの魔物、クエストには載ってないやつだったよな?」
「うん、載ってた魔物に一致するのは居なかったはずだよ!」
「クマのクエストはあるけど、ウルスベアって名前だから印象が違うもんね。あんな怖い角があるなら今までの名前を参考に考えると、角に関する名前が付いてると思うんだよね」
「確かにそうだよな。魔物の名前が分かるスキル、魔法を獲得するべきかなぁ?」
「あった方が便利そうだね!」
「だよな。まぁ今すぐ獲得は出来ないし、ゆっくりと3人で考えるか。よしっ、帰ろうか!」
雪祈音と風羽花が「うん」と返事をしたあと、雪祈音が右腕、風羽花が左腕に抱き着いてきた。2人が少し震えているように感じた。あれだけ強い魔物と戦い勝ったことで、安堵して今怖さが出てきたんだろうな。そのままの状態で帰るために【六感の覚醒】をフル活動させ、魔物に合わないよう家に向かって歩き始めた。




