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「っ……。えっ?〈はじまりの森〉と全く変わらねぇ」
包まれていた光が消え、転移が終わり見渡すが〈はじまりの森〉と景色が変わらなかった。
「ほんとだ!変わらないね!」
「どっちも森だから、変わらないのかな?」
「確かにな。確認はしとくか…………ちゃんと〈魔獣の棲まう森〉に来てるな」
【実用の投映】を発動し、フィールド画面を開き確認すると、〈魔獣の棲まう森〉に来ている事が分かった。
「クエストも確認しとくか……雪祈音、風羽花どれからしたいとかあるか?」
俺の腕には転移前の状態と変わらず、雪祈音と風羽花が抱きついていたので、俺の【実用の投映】を一緒に見ながら聞いてみた。
因みにだが、一緒に見れる事を知ったきっかけはたまたまで、風羽花と雪祈音が抱きついてる事が多いから、一緒に見れねぇかなと思いながら見てた時に、2人が見えるようになった事に気づいたのがきっかけだな。逆に見られたくない時は見られないようにもできる。まぁ隠すことはないからいいんだけどな。
「うーん、ウルフとモンキーは動きが速いだろうし、ベアとオークは力が強いだろうし、難しいー!」
「そうだね。私はオークがイメージ通りなら最初に会いたくはないかな」
「じゃあ、オーク以外で初めて会った魔物にするか」
俺が見せたのはメインクエストのルーウルフ20体、ラピッドモンキー20体、ウルスベア10体、オーク10体だ。報酬はどれも5万ポイントだった。報酬が高くはなっているが、その分手強くなっているのだろう。
「それいいね!」
「うん、分かった」
「クエストは決まったし、拠点を探しに行こうか」
「前みたいにツリーハウスにする木を見つける?」
「いや、今回は猿が出てくるからツリーハウスは止めとこうと思う」
「じゃあ、どんな拠点にするの?」
「洞窟か崖がある所に作ろうと思う。理由としては全方向を警戒するより、一方向を警戒した方が集中できると思ってな」
「確かにそうだね。一方向を警戒の方が集中出来るもんね」
「うんうん!それいいね!」
「拠点探しに出発するか」
俺の言葉に風羽花は小さな声だがやる気いっぱいの「おー!」を、雪祈音は少し恥ずかしそうに「お、ぉおー」と返事をしてくれた。
俺と風羽花は【六感の覚醒】で、雪祈音は【魔波の感知】で警戒をしながら歩き出した。
30分ほど経った時、魔物の気配がした。
俺が先頭に気配の方に進んで行くと、ついに魔物が視界に入った。俺たちのことは気づいてないみたいだ。できるだけ静かに近寄るが、魔物にバレてしまった。さすが狼だな。
俺たちが初めて見つけたのはルーウルフだった。3匹居てバラけてこっちに向かってきた。
「相手は速いが慌てるなよ!」
俺の言葉に慌てる事なく2人は冷静に返事を返してくれた。
真ん中を突っ込んで来たルーウルフに挨拶代わりに〈死獄〉と〈生天〉を【武器の格納】、3発づつ計6発の弾丸を速射すると、素早く動いて木の影に避けやがった。ルーウルフは警戒したのか、さっきよりもジグザグに動きながら近づいてきた。
木に隠れられない場所に来た時に、脚に向けて2発放ち、ジャンプして避けた瞬間を見逃さずに追加で2発を頭にぶち込んだ。
風羽花は〈雷光〉の長さを分からなくするように構え、ルーウルフを間合いギリギリまで引き寄せ、〈雷光〉を振り下ろすと共に身体を真横に向け腕を伸ばし、石突近くまで手を滑らせ握り、遠心力で速度、重さを上げた一撃を頭に喰らわせていた。
雪祈音は魔力をギリギリまで削ったハリボテの【氷結の弩砲】で、新しく覚えた魔法【氷結の芽突】の場所に誘導し、ルーウルフが通る瞬間に小さく見えないようにセットしていた【氷結の芽突】に魔力を注ぎ込み膨張させ、ルーウルフの腹を貫いていた。
【氷結の芽突】は雪祈音曰く、いつの間にか習得していたらしく、心当たりがあるとすれば【氷結の弩砲】を地面から放つ練習をしていたからかもと言っていた。俺はそれもあるが、雪祈音は群を抜いて魔力の扱いに長けているからだと思っている。
ルーウルフの体長は150センチほどの大きさだった。油断したら【空鎧の魔纏】を結構削られそうだ。
「お疲れ様。速かったが危なげなく倒せたし、クエストも決まったな」
ルーウルフを見つけた時にクエストを受けて正解だったな。少し遅れてたら無駄になるところだったわ。
「お疲れ様!そうだね、速かったけど油断しなかったら大丈夫だね!」
「お疲れ様。うん、油断しなかったら対応できる速さだね」
「速い相手でも余裕で対応できるように頑張っていこうか」
雪祈音も風羽花も「うん」とやる気を出しながら返事をしてくれた。
拠点を探す為に再び歩き始めた。
魔物に会わないように避けながら歩くこと2時間ほど。ついに崖を見つける事ができた。高さは6メートルぐらいだった。
「もう少しいい所があるか探してみようか」
「うん!そうだね!」
「まだ時間に余裕があるもんね」
「じゃあ、もうちょい頑張ってくれ」
2人とも笑顔で「うん」と返事をしてくれた。
水分補給をしたあと、もう少しいい場所を探すために崖沿いを歩き始めた。
30分ほど経ったとき、いい場所が見つかった。
幅が5メートル、奥行きが15メートルほど凹んでいたのだ。ここを拠点にする事にした。
「ここを拠点にしようか」
「おっけー!手伝える事はある?」
「うん。わたしにも手伝える事あるかな?」
「まぁ【想造の製作】でちゃちゃっと作れるからなー……じゃあ、昼飯と癒しを頼む」
「りょーかい!任せてよ!」
「うん。わたしも頑張る」
「それを楽しみに作るわ」
すぐに拠点作りに取りかかった。
室内を縦3メートル、横4メートル、奥行きが8メートルの2部屋に分けた石材の家を作り、〈はじまりの森〉では雨が降らなかったが、〈魔獣の棲まう森〉では降るかもしれないから、2メートルの庇と地面から室内を50センチ離しているのでスロープも作り、さらに屋根には剣山のようなトゲトゲの罠を仕掛けている。
家は【想造の製作】で5分程で作れたが、これからが少し時間がかかる。作るのは崖の凹みの入口に両端を50センチほど残し、横4メートル、奥行2メートル、深さ4メートルの落とし穴を作り、家の屋根と一緒の罠を仕掛ける。これで不測の事態の時間稼ぎは出来るはずだ。
「よしっ、とりあえず家は出来た」
「おぉー! 一瞬で出来たよ! 雷雨凄い!」
「本当に雷くん凄いね。中見てもいい?」
「おう、見に行こうか」
「あっ、そうだ。〈雲隠れの帳〉はどこに置く?」
「玄関の辺りに置こうか」
「うん。分かった」
3人で玄関に向かい、扉を押して入った。扉は鉄で作っている。鉄はゴブリンの剣を回収したものだ。たまたま【想造の製作】でゴブリンが死んで消える前に試してみたら出来たが、ゴブリンは回収出来なかった。
「わっ! 凄い! 中は木で作ったんだ!」
「ほんとだ。木の方が慣れしたんだから落ち着くね」
「ここがダイニングキッチンで奥が寝室だな。内装の方は風羽花と雪祈音に頼む」
「うん! 任せてよ!」
「わたしも頑張るよ」
「じゃあ、俺は外でもうすこしやってくるわ」
落とし穴を作りに行くのに声を掛けると、2人から「いってらっしゃい」と言われ、なにかジーンと心が暖かくなった。さっさと終わらせて、癒してもらおう。




