氷のようなエルフの女性
昔、世界は争いによって、疑心暗鬼になり
争い事が増えた。
青年・健司は愛を知りたくて、旅に出た。
健司は雪の降り積もる森を旅していると、静寂の中に響く女性の声を聞いた。その声に導かれるように進むと、一人のエルフの女性が佇んでいた。彼女は真っ白な髪に氷のような瞳を持ち、周囲の空気さえ凍らせるような冷気を纏っていた。
健司は彼女に話しかけた。
「こんな場所で一人でいるなんて、寂しくないですか?」
エルフの女性は冷たく笑った。
「寂しさなんて、人間が作り出した弱さにすぎないわ。私はそのような感情に縛られない。」
健司は彼女の言葉に傷ついたような表情を見せつつ、問いかけた。
「でも、誰かを思い出すことがあるんじゃないですか?あなたがこんなにも冷たい目をしているのは、心の中に何か抱えているからじゃないですか?」
その言葉に彼女は眉をひそめた。
「どうして私を知りもしない人間が、そんなことを言えるの?私は人間に裏切られたのよ。信じた相手に、利用されて捨てられた。あなたたち人間に愛を語る資格なんてないわ。」
健司は一瞬言葉に詰まった。しかし、彼は心の奥底から湧き上がる想いを込めて言った。
「僕も…同じような経験をしたことがあります。信じていた人に裏切られ、全てを失った気持ちになりました。でも、それでも僕は愛を諦めたくない。たとえ傷つくとしても、誰かと心を通わせることが、生きる希望になると思うんです。」
エルフの女性の瞳が微かに揺らいだ。
「…あなたは怖くないの?また裏切られるかもしれないのに。」
健司は頷いた。
「怖いですよ。でも、怖いからといって心を閉ざしてしまったら、本当に何も手に入らないと思うんです。だから僕は、誰かを信じることを選びたい。」
彼女は健司をじっと見つめた。凍てつく空気の中、彼の言葉だけが暖かさを持って彼女の胸に届いていた。
「不思議ね、こんなに愚かで弱い言葉なのに…心に触れる。」
彼女は小さく微笑んだ。
「あなたのその愚かな強さに、少し興味が湧いたわ。」
そう言って彼女は歩み寄り、健司に手を差し出した。
「もしあなたがこの凍った世界の中で、私の心を溶かせるなら…少しだけ付き合ってあげる。」
健司はその手を取った。
「一緒に温かい場所を見つけましょう。」