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お疲れ様会①

食堂でお疲れ様会用の食事の準備をしていたら、ビルさんたちがやってきた。


今日のメニューは準備する時間が限られていたのでほとんどが日本のスーパーで買ったお惣菜が中心。エビフライや唐揚げ、ピザ、そしてケーキなどクリスマスパーティーや子どもの誕生会などで人気のパーティーメニューをそろえてみた。

「うわ~、どれもおいしそ~!」

目をキラキラさせるアンジーちゃん。すぐに食べたいけどお行儀が悪いからとうずうずしている姿がほほえましい。

「みんな揃ったし、冷めないうちに始めよっか。グラスに好きな飲み物を注いでください。」

私が声をかけると、待ってましたとばかりに用意したワインやウイスキー、高級ジュースに群がる面々。

大人組は昨晩プレゼントしたお酒で早速酒盛りをして、日本のお酒のとりこになってしまったらしい。

「皆さん、グラスは持ちましたか?昨日はプレオープンお疲れさまでした!今日は思いっきり楽しんでくださいね!カンパーイ!」

「「「カンパーイ!」」」

左手にグラス、右手にピザや唐揚げを手に、日本のパーティ料理に夢中になるビルさん一家を見ながら、しっぽりと白ワインをたしなんでいると、ステラさんが

「昨日は久々にこの食堂が昔みたいににぎやかになって、10年前に戻ったみたいだったよ。」

と話し始めた。

「マーサちゃんたちが急にお店を閉めちゃってから、町のみんなマーサちゃんの料理が食べられなくなったことを嘆いていていてね。この店が閉まってから試行錯誤したんだけど、誰一人としてマーサちゃんの味を再現できなくてね。昨日開店前からたくさんお客さんが待っていただろ。10年間マーサちゃんの料理の味を忘れられなくて、再開を待ち望んでいた人がそれだけ多いってことさ。それで、いつから営業始めるんだい?」

「そうですね~。まずは人手が全く足りないので、求人をして、研修をして、それからですかね。」

と話しているとアンジーちゃんが「それって私じゃダメかな?」と割って入った。

「ダメじゃないけど、学校とかは大丈夫なの?」と聞くと

「学校は15歳までだから。この町では18歳以上しか正式に雇ってもらえないところがほとんどだから、今はお母さんの手伝いくらいしかやることなくて暇なんだ。女の子は卒業したらすぐに結婚する子も多いんだけど、私はまだ結婚は早いかなぁって。男の子たちは、学校をしたら見習いとして働き始めることが多いんだけど、正式採用前はほとんどタダ働き同然なんだって。だから女の子も男の子も18歳までは働かずに家の手伝いだけしている子も多くて、友達にも暇している子がたくさんいるよ。」と教えてくれた。

「18歳以上じゃないと正式に雇わないってところが多いのには何か理由があるの?」

「あー、それは昔は女の子は18歳までに結婚する子がほとんどだったからじゃないかな。男の子は2年間見習いとして修業して手に職をつけてやっと半人前で、半人前未満のうちは教えてもらうんだから給料は無しってのが普通だったみたい。ほんと時代遅れで困るよね。」

「なるほどね。じゃあ、16歳、17歳の子はどんな条件の求人ならぜひ働きたいって思うのかな?」

「このお店で、18歳未満OKなら、1日銀貨1枚の条件でも応募が殺到すると思うよ。だから月金貨1枚、まかない付きくらいがいいんじゃない?まかない付きは絶対ね!」

「えっ、そんなに安くて良いの?」

「うん。だって小春さんの料理を食べられて、自分でも作れるようになるかもしれないんだよ!小春さんの料理作れる人はこの町だと貴重だから、マスターできたら貴族家の料理人として声がかかるかもしれないし、もしかしたらお金持ちに求婚されちゃうかもしれないじゃん!」

裏表なく話すアンジーちゃんのたくましさに圧倒される小春。横で苦笑いしながら話を聞いていたケビンさん、スージーさんに確認したら、うちの子で良ければぜひ雇ってあげて欲しいとのこと。


「よし、アンジーちゃん採用!条件はアンジーちゃんが言った月金貨1枚、まかない付きで。がんばったら、昨日みたいにジュースとかたまにお土産も付けちゃう!友達でうちの仕事が向いていそうな子がいたら、紹介してね!アンジーちゃんみたいに全員即採用ってわけにはいかないけど、一度面接させてもらいなって。昨日みたいに1日仕事を体験してもらって、お互い大丈夫そうなら採用っていうのでも良いし。」

「了解!任せて!料理上手な子とか愛嬌が良い子とかいっぱいいるから紹介するね!」

こうして一番の課題だった人手の問題は一瞬で解決するのだった。


『あんなに悩んだのに…もっと早くに相談すれば良かった…』

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