課題が山積み②
食堂のほうも本営業を始めるまでに解決しないといけない問題が山積みだ。人手不足の問題はもちろん、食堂の方は日本と異世界の物価の差も大きな問題だった。
ヨハンの町の人の平均的収入は日本の4分の1程度。胡椒や砂糖は超高額というのも異世界あるあるだけど、ヨハンの町で流通している砂糖や胡椒の値段は日本の3倍程度。収入の差を加味すると10倍以上の価値なんだけど、日本のものを売って大儲けとはいかない値段だ。
普通の食事の値付けはさらに難しい。異世界の物価に合わせて販売価格を日本の4分の1にしてしまうと、日本での仕入れ価格が高いからどんなに工夫しても赤字になってしまう。逆に日本の価格に合わせると、大衆居酒屋程度のメニューと価格設定(お酒込みで4,000円程度)にしたとしても、一般の人には滅多に行けない価格帯のお店になってしまう。特に、昨日採用した飲み放題は大酒呑みが多かったのと、物価の差を考えたらどんなに安いお酒を仕入れて、飲み放題を銀貨3枚に設定したとしても赤字になってしまうので経営的にNG。向こうの人はお酒好きな人が多くて、飲み放題は喜ばれるから本当は続けてあげたいけど難しそうだ。
『ヨハンの町の人から愛されていたおばあちゃんの食堂を裕福な冒険者や豪商、貴族などお金を持っている人しか来れないようなお店に変えてしまうのも何か違うよなぁ。物価の差を埋めるには、できる限り向こうの食材と人を使うしかないよね。特にヨハンの町は魚介類が激安だからそれをうまく活用すれば原価を抑えられるはず。既製品の消費を抑えるためにも調理を任せられる人も早く探さないと!』
あとは、両替の問題。お酒や調味料はどうしても日本でしか仕入れられないから、売り上げが向こうの通貨だと、どうしても日本円が減ってしまうのだ。
おばあちゃんのタンスにあったへそくり?と一緒に見つかったおばあちゃんの遺言書のようなノートによると、向こうの硬貨は隣町に金や銀、プラチナを買い取ってくれる店で買い取ってもらえるらしい。ただし、向こうの金貨・銀貨の価値ではなく、こっちの金・銀の価値に応じた買取価格になっているから、できる限り金貨で両替しろと書かれていた。向こうなら銀貨10枚で金貨1枚だけど、こっちの金の価値は銀の100倍近いから銀貨で両替すると大損するんだって。
『そのお店が今でも営業しているのか、近いうちに確かめに行かないと…』
そんな風にあれこれ考えているとビルさんたちと約束したお疲れ様会の時間が迫ってきたので、慌てて準備する小春だった。