課題が山積み①
プレオープンの翌朝、小春は日本の自宅のパソコン前でうなっていた。
何せプレオープンで数多くの問題が浮き彫りになったからだ。
何よりの問題は人手不足。
今回はビルさんたちがいてくれたから何とかなったけど、人材の確保は急務。ビルさん夫妻にしばらく手伝ってもらう前提でも、追加で少なくても宿屋に1人、食堂に2人は人手が必要だ。シフト制にして休みを設けるならもっと必要だろう。
今日の夕方にビルさんたちとお疲れ様会やることになったから、その時にでも向こうの世界の求人のやり方を教えてもらおう。
次に宿屋の課題は宿泊者アンケートを参考に解決を図る。
全体的に「キャンドルがすごく良いにおいで貴族みたい」「こんなふかふかなベッドと暖かい布団は以前泊まった銀貨5枚の宿にもなかった」など特にアロマキャンドルと寝具を褒めるコメントが多く、満足度は比較的高かかったようで一安心。
要望欄は、「2~4人で泊まれる部屋があったら良かった」というコメントが目立ったので、さっそく対応を考える。どうもこの町は1人で宿泊する人は少数派らしい。
『とりあえずベッドを増やして…特別室も作るか…』
早速1人部屋は2室だけ残して、シングルベッドを2つ入れた2人部屋を4室、2段ベッドを2つ入れた4人部屋を2室作ろう。特別室は1室は畳を敷き詰めて和室に、もう一室はキングサイズのベッドを入れて、ちょっと高く見えそうな家具を入れてみても良いかもしれない。和室は日本亭の和室を洋室にリフォームする予定だったので、使わなくなる畳を再利用すればいいし、人気がなければ従業員用の休憩スペースにするくらいの気持ちで。
料金は、素泊まりで1人部屋が銀貨5枚、2人部屋は銀貨7枚、4人部屋と特別室は金貨1枚くらいかな。ビルさんたちから、この町で一番高級な宿の料金が2人部屋で金貨1枚程度と聞いたので、少し高い気もするけど、高級宿や貴族の屋敷にしかまだ普及していないという水洗トイレもあるし、風呂はないけど日本の海の家にあるような簡易的な水浴びができるスペースもあり、お湯も自由に使えるから、どう考えても先日競合調査で止まった銀貨3枚の宿よりは高い値段にしても問題ないはずという計算だ。もともとこの町の宿屋の値段は、比較的お金に余裕のある冒険者や行商人、旅人に合わせた高めの価格設定になっているって聞いたし、昨日みたいに安すぎてお客さんが殺到するのも嫌だしね。ちょっと高いくらいの価格設定にしてちょっと暇になるくらいがちょうど良いだろう。
洗濯機がない向こうで洗濯するのは大変すぎるし、寝具の柔軟剤の香りが好評だったから、シーツとかの洗濯だけは日本でやる予定だったけど、毎日清掃やシーツ交換をするのも大変だから、基本宿泊は3泊から受け付けることにしよう。家賃もかからないし、向こうの世界は日当も安いから稼働率50%くらいでも経営的には問題ないはずだ。3日に1回の清掃と受付程度なら、スタッフが少なくても何とかなるだろう。