プレオープン①
商業ギルドに行ってからの3日間はあっという間に過ぎ、ついにプレオープンの日がやってきた。
どのくらい売れるかが全く分からなかったので、量を調節できるよう日本でパスタなど日持ちする食材を多めに仕入れた。
値段については、1日だけのプレオープンだし、宣伝の意味を込めて予定する金額の半額を目安に設定した。計算しやすいように全部同じ値段で。一部原価ギリギリになるけどまぁいっか…という風に適当に決めた。
広告宣伝活動は特に行わず、食堂のドアに小さな張り紙をしただけだ。
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ランチ:11:00~14:00
ランチメニューは全品銅貨3枚均一!(本日限り)
ディナー:17:00~21:00
食べ飲み放題で銀貨2枚!(本日限り)
宿泊:16:00~翌10:00
素泊まりで銀貨2枚!(本日限り)
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今日来ることが確定しているのは「これからよろしくお願いします」という意味で無料招待したビルさん夫妻と町長さんご家族の2組だけ。町長さんは40歳ぐらいの紳士でビルさん夫妻に紹介してもらった。町長さんは貴族ではなく日本の町長と同じような役職で、町長さんの上に5つの町を統括する領主様(子爵)がいるらしい。町長さんの奥さんは30代前半くらいの超美人、お子さんは10歳くらいの女の子と8歳くらいの男の子の2人。
安くてもあまり知られていない食堂や宿屋なんて、ほとんど人は来ないだろう…そんな風に思っていたのに、ランチ営業が始まる11時前から人、人、人…!!!
『えっーーー!なんでーーー!!』
どうやら、ビルさん夫妻と町長さんの宣伝効果らしい。後から聞いたら、町長さん夫妻もおばあちゃんの食堂の常連さんだったとか。
当時おばあちゃんの食堂で知り合った人達に『マーサちゃんの孫が食堂兼宿屋を再開するらしい。1日限定価格であの料理とお酒が味わえる』と話したら、一気にその噂が広がって、ランチ営業前に約30人もの人が集まってしまったという経緯みたい…。
相席してもらったらギリギリ全員入れる人数だったので、開店時間を15分繰り上げて入店してもらう。
そして、想像以上の大繁盛でどう考えても手が足りないので、夜のたこ焼きだけ手伝ってもらう予定だったビルさん夫妻に泣きついて今日1日給仕を手伝ってもらうことに。本当に申し訳ない。(後で豪華ランチを別で用意します!夕食後にはお酒もプレゼントします!と心に誓って…)
ランチメニューは海鮮系のイタリアンが中心。
AIをフル活用して自作した写真風イラスト付きのメニューを渡していく。
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本日のメニュー
・海鮮パスタ(トマト・クリーム・オイル)
・グラタン
・ピラフ
・クラムチャウダー
・バゲット(プレーン・ガーリック)
・ノンアルコールドリンク(オレンジ・りんご・紅茶・コーヒー)
・グラスワイン(赤・白)
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『すぐに提供できるメニューだけにしておいて本当によかった…。』
夜の分も含めて各20食ずつ用意していたグラタンとピラフ(炊飯器で炊いただけ)は開店後ものの10分で完売。パスタもクラムチャウダー、バゲットも好評な様子。特にトマトパスタとガーリックトーストがよく売れている。昼だけどワインを頼む人も結構いた。
『料理と給仕と会計は3人でなんとかなったけど、今度はお皿とグラスが足りないーー! 』
途中で気が付く段取りが悪い私。ビルさんが機転を利かせて近所に住むビルさん夫妻のお孫さん家族を招集してくれて、皿洗いを手伝ってもらって何とかなりましたが…。ありがたやー。もうビルさん夫妻には足を向けて眠れません!