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堕ちた先は魔界でした  作者: 榊 雅樂
第1章 
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第4話 3つの派閥

「街の方を通りますので、私の手を離さないでください」


「街があるの? 魔界なのに」


 魔界と言われると、岩だらけで何も無いような場所を想像していた。けれど、私がこの目で見たのは、少し人間界むこうと形が違う自然や動物。

 

「弱い悪魔や穏健派の悪魔が集っています」


「おんけん……?」


 聞き慣れない言葉を復唱するも、詳しくは家に帰ってから、と言われた。


 館を出て少し歩くと、街が見えてきた。

 街と言っても、日本で見るような住宅街ではなく、ヨーロッパ、それもフランスやドイツ辺りで見られそうな街並みだった。


 幸いにも、今は人通り……いや、悪魔通りが限りなく少ないから、バレなさそうだ。


 辺りがオレンジ色の照明で照らされる。玄関の灯りや、ちょこちょこ付いている家の灯りが、そうしている。


「やはり、この時間だとほとんどの者が寝ていますね」


 彼女は良かったと小さく呟いた。


「あれ、ウァサゴ?」


「!」


 前から私より少し背の低い女の子が、ランタンらしき物を持って歩いてきた。

 暗くて顔が見ずらいけれど、可愛らしい顔立ちをしている。


 その悪魔ヒトは私たちのすぐそばまで歩いてきて、ランタンで照らす。


「やっぱりウァサゴだ。こんな時間に何してるの? というか、その子は?」


 彼女がこちらへ灯りを向けてきたので、私は少しビクッとした。


「少し眠れなくて散歩してたら、偶然この子に会っただけ。迷子らしくて」


「そうなの? ウァサゴ一人で大丈夫? 一緒に探そうか?」


「いや、大丈夫。もうこの子の行き着く先は見つけたから」


 金髪の少女は、「そっかー、さすがだね」と言い、手を振りながらこの場を去って行った。


「あの小さい子も悪魔なんだ……」


「ええ、あなたよりも多く人の世を見てきています。行きましょう」


 小さくうん、と言うと、彼女はまた歩き出した。今度は、先程よりもギュッと手を繋いで。引っ張るのではなく、優しく私を連れて行ってくれる。


 ––––そう言えば、さっきタメ口で話してたなあ。



 しばらく歩いた後、ウァサゴの家についた。彼女の家も、街で見たような雰囲気の家だった。


 家に入ると、彼女にある程度の家の構造について説明してもらった。お風呂やトイレ、キッチンの場所などを教えてもらった。


 私が寝る部屋もあるらしく、その部屋はそれなりの大きさだった。

 本当にこんな部屋を使っていいのか、と問うと、大人しく使えと言われた。


「––––さて、とりあえず魔界ここの説明からしましょうか」


 ウァサゴの部屋で、彼女はベッドの上に座った。私は彼女の前に椅子を持ってきて、話しやすい形にした。


「まず、この魔界は3つの派閥に別れています」


「3つの派閥?」


「はい。先程私が言った”穏健派”の他に、”中立派”、”過激派”がいます」


 それぞれどのような派閥なのかは、おおかた予想がつく。彼女が言うには、こんな感じらしい。


 穏健派は、人間をなるべく襲いたくない、『善』の心を持っている者の派閥。人間を襲うことは基本的にない。


 中立派は、どちらでもない、もしくはどちらでもいいと思っている者の派閥。言うなれば、人間がどうなろうと、他者がどうなろうと、自分が良ければそれでいいと思っている。


 過激派は名の通り、人間を積極的に襲おうとする者の派閥。人間の血肉が好みであり、よく人間界に立ち入っては襲っている。

 そこまでは行かずとも、やはり人間にちょっかいをかける者も多くいる。穏健派と対立状態にある。


「––––ざっとこんな感じですね」


「さっき通ったのは、穏健派の集う街ってこと?」


 私が訊くと、彼女はそういうことだと言うふうに黙って頷いた。


「ところで、あなた––––結羽はここにしばらくここに留まることになりますが、それでいいのですか?」


「ああ……うん、別に。大学はちょっと困るけど」


 そう言うと、ウァサゴは「そうですか……」と言った。


 私と母の関係は良くない。こんな夜遊びばかりしている娘を好くなんて、誰だって嫌だろう。


「––––お風呂、入りますか?」


「え、あるの?」


「ありますよ。こちらも、人間界と何ら変わりません。今日は疲れたでしょう、ゆっくり休んでください。着替えは……昔の私の服でも?」


「うん、ありがとう」


 好みの服では無いけれど、このまま今の服を来ておくより全然いい。むしろ、ありがたいぐらいだ。


 そして、私はお風呂に入って、人間界と何ら変わりない料理を食べて布団に入った。


 ––––料理、あれ何食べたんだろ……。ってか、このまま取って食われたりしないよね。…………まあ、そうなったら”ばち”が当たったと思おう。

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