【8話】高校見学
よろしくお願いします。
〜数日後〜
「星峰の高校見学、ですか?」
「はい」
今僕の家に、なぜか蓬莱院さんが来ている。その後ろには、ボディーガードらしき男の人もいる。
卒業後、僕はしばらく寮への引っ越しのために必要な物の準備や制服の採寸合わせなど、やることが多く忙しかった。しかし、高校からの課題がなかったのが幸いだった。
そして、今日はある意味休息日ともいえる、はずだった。
突然、蓬莱院さんが僕の家を訪ねてきたからだ。住所はどうせ調べたのだろうが、本当に彼女はやることが大胆だ。両親は仕事でいなくてよかったと思った。
しかも、その話の内容が高校見学とか。正直そんなことで来るくらいなら、最初から来ないでほしい。
「あまりに急であることは重々承知しています。ですが松下さん一人ではと思いまして…」
「一人ではって言いますけど、蓬莱院さんは星峰のこと知ってるんですか?」
「知ってるも何も、私は中等部からの上がりなので…」
ん?今なんて言った?
「えっと、今中等部からの上がりって言いました?」
「そうですよ?そして、私は松下さんと同い年なので、高校では同級生となります」
「マジですか…」
まさかの同級生かよ。てっきり星峰の先輩かと思ってた。そして、あの制服は中等部のやつだったのか。
てことは、受験の時の同じ制服を着ていた受験生は全員星峰の中等部かよ。まあ、今まで星峰の制服なんてまともに見たことなかったから、納得ではある。
改めてよく受かったなと思う僕だった。
「ちなみに、私も推薦で特待生として合格していますので、おそらくクラスも同じになると思います」
ん?また、聞き捨てならないことを言った気がする。
「えっと、クラスが同じになるってなぜわかるんですか?」
「これは、私も具体的なことはご存知ないのですが、噂では新たなクラスが発足するのではといわれています」
「噂、ですか…」
噂を言うくらいなら、せめて根拠のあることを言ってほしい。根拠のない噂なんて言われても信じようがない。
「はい。特待生だけが集まったクラスだとか…」
「…はあ?」
ちょっと待て!どういうことだ?特待生だけが集まったクラス?それがもし本当なら、僕は確実に落ちこぼれパターンじゃないか!あっ…
その時、ふと思った。
「まさか、僕を高校見学に誘った理由って…」
「はい。松下さんの思ってらっしゃる通りで、その噂が真実かを確かめにいくのです。まあ、実際に高校の校内を見てみたいというのもありますけどね。今まで見たことありませんので」
彼女が笑いながら理由を話す。
「それならそうと、先に言ってもらえればまだ納得出来ましたよ…」
「すみません。こうでもしないと、断られそうだったので」
「はあ…」
思わずため息をついてしまう僕。でも、たしかにどのような感じなのかは気になる。受験の時は緊張していて、ほとんど勉強じまいで、教室なんてどのような感じだったかほとんど覚えていない。
「わかりました。行きましょう」
「ありがとうございます!」
嬉しそうな顔をする蓬莱院さん。
「で、いつですか?」
「そうですね。来週から春休みに入るみたいなので、この日とかでどうでしょう」
カレンダーで指した場所は、来週の金曜日だった。
「わかりました。親にも伝えておきます」
「お願いします。予約はしておきますから」
そう言って、蓬莱院さんは帰っていった。
「高校、ねぇ」
僕はこれまでのこともあり、面倒なことには出来るだけ関わりたくなかった。
「今そんなこと考えてもしょうがないか」
あの後、両親が帰ってきて一応説明した。
「わかったわ。帰ってきたら、どういう感じだったか教えてね」
「楽しみにしてるからな」
頭だけがエリートである両親でも行けなかった高校。そもそも受けてたのか知らないが。
その後は、いつも通り忙しい日々を過ごした。
〜高校見学当日〜
「改めて見ると、本当にデカイな」
僕は私服で星峰の正門前に来ていた。正門前が集合場所だからである。すると
「お待たせしました!」
蓬莱院さんがやってきた。白のワンピースにカーディガンを羽織っている。それに、少し化粧をしているのだろうか。それに高級そうなバッグを持っている。
一方、僕は白いTシャツにジーパンといういかにも普通な服装に、スマホと財布が入った小さなポシェットだ。あまりにも存在感が違いすぎる。まさに貴族と平民とでもいうような感じだ。
すると、蓬莱院さんの元にもう一人やってきた。
「あれ、隣にいるのはたしか…」
「私は、一宮理奈と申します。お嬢様のメイドで、今度からこの高校に通う者です。以降、お見知り置きを」
やはり、元旦の時に助けに来た子だったか。
「彼女は特待生ではありませんが、推薦で合格しています」
「はあ…」
彼女も推薦なのか。でも、一応挨拶しておこう。
「松下遼です。こちらこそ、よろしくお願いします。でも、メイドって…。それに、あの時と随分雰囲気が違うような…」
「理奈は私の専属メイドであり、友人です。人前では今のような口調なんですけど、プライベートでは普通にタメ口で話したりもしますよ?」
「そ、そうなんですか…」
普通メイドだと敬語が当たり前だと思ってたけど、そういう訳ではないのか?それとも、彼女たちが特別なだけなのか?まぁ、今そんなこと考えても仕方がない。
「じゃあ、行きましょうか!」
蓬莱院さんがそう言うと、僕たちは高校に入った。
「改めて見ると、本当に凄いな!」
女性事務員の葉山さんに案内してもらう形となっている。以前は入試でほとんど見られなかったが、今回はじっくり見ることができる。
ここまで、教室はもちろん、音楽室や美術室、化学室や生物室、さらには歴史室や古典室なんて教室もあった。それにどの教室もかなり広く、さらに同じ科目の教室がいくつもあった。
「あの、教室の広さが極端に違う気がするのですが」
蓬莱院さんが質問する。
「それはですね。おそらく入学後に説明があると思いますが、この学校は単位制であり、大学のように自由に選択できます。つまり、人気の科目とかは人数が多くなる可能性も考えられる訳です。なので、教室ごとに広さを変えています」
なるほど、単位制なのか。
「なるほど。ありがとうございます!」
「いえいえ、わからないことがあれば質問してくださいね?」
その後も食堂でお昼を食べ、各グラウンドなども見た。どこも広く人工芝であり、メイングラウンドでは陸上トラックまで完備されていた。
そして、驚いたことがいくつもあった。まずは…
「スーパーやコンビニまであるのですか!」
そう、スーパーやコンビニといったお店があるのだ。大学ではあるかもしれないが、まさか高校であるとは…
「そうですね。この学校は基本的には夏休みとか年末年始を除いて校外に出ることは禁止となっています。あとは、家電製品店やホームセンターなども完備しています」
凄いな、でもそれだと…
「それだと、お金払わないと…。」
「それも説明があると思いますが、入学式の日に皆さんの学生証となるIDカードが支給されます。そこにはポイントが入っており、それを交換することで物を入手できるのです。そのポイント入手は成績によって異なります」
なるほど、こうして自立性を生み出している訳か。
ここで、さらにとんでもない場所に来た。
「えっと、ここは…」
そこにはタワーマンション級の建物が並んでいた。
「ここがみなさんが住む寮となります」
「………はあ!?」
僕は大声をあげてしまった。いくらなんでも馬鹿げている。こんなやつがあったらそりゃ授業料とか尋常ではない。もし特待生でなかったら、間違いなくやめていただろう。本当、とんでもない金持ち学校だ。
そして、最後にこの場所に案内された。
「ここが、大講堂となりますね」
大講堂の扉を開けると…
「うわー!」
「凄いですね!」
大講堂は、まるでコンサートホールのような感じだった。
「ここは、入学式と卒業式しか使われない場所なので、厳重に管理されています」
「そうなんですか…」
蓬莱院さんが感心する。
「では、始業式とか終業式とかはどこでやるのでしょうか?」
一宮さんが質問する。これは僕も気にしてたことだった。
「始業式や終業式というのはありません。学期末近くにガイダンスが行われて、そこでいろいろ説明を受けるでしょう」
「そうですか。ありがとうございます」
「いえいえ。これで一通り場所は周りました。他に何かありますか?」
葉山さんが質問する。
「あの、成績とかはどうするんですか?」
僕が質問した。
「成績は、各自の部屋およびご実家宛に郵送されます」
「そうですか。わかりました」
僕は納得した。きちんとしないとおそらく本当に帰れなくなる。
「あとは大丈夫でしょうか?」
「はい、本日はありがとうございました!」
蓬莱院さんがお礼を言って頭を下げ、僕も慌てて頭を下げた。この時、一宮さんはすでに頭を下げていた。
「いえいえ、みなさんの入学を楽しみにしています」
こうして、高校見学が終わり正門に向かってる途中で、あることをやっていないことに僕らは気付いた。
「そうでした!あの噂を確認するのを忘れてしまいました。すみません」
そう、特待生だけの新しいクラスが発足するというあの噂だ。
「ですが、それは入学式の日にどの道わかるのではないでしょうか?」
一宮さんがそう言うと、とても腑に落ちた。
「そうですね」
「そうね。帰りましょうか!」
そう言って、僕たちは正門を出て別れ、帰宅した。
その頃、とある会議では…
「では、新クラス発足という形でよろしいでしょうか」
校長の言葉に、全員が頷く。
今まさに、新しいクラスが誕生していた。当然、僕たちは噂程度のことでしか知らない。
「ただいま…」
「お帰り。どうだった?」
どうやら父はまだ帰ってきてないらしいが、僕は父が帰ってきたら、あんたが話せと言われるだろうから、僕が見た物をそのまま話した。
それに流石に母も感心するしかなかった。
今回の出来事を、母は後に父にも話したらしいが、やはりドン引きしたという。
しばらく時間が流れ、ついにこの日がやって来た。
「ついにお引越しだ!」
そう、星峰の生徒寮に引っ越す日がやってきた。
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