【6話】挑戦と結果
よろしくお願いします。
「はあ。着いてしまった…」
今僕は、あの超エリート校の星峰の正門に来ている。超広大な敷地で、まるで別世界にいるような錯覚を受ける。
ちなみにさっきスマホで志願者数を検索したら、定員に対し十倍を超える人数だった。つまり、定員より仮に多く合格させたとしても倍率はおそらく十倍前後だろう。
僕は心底後悔した。受けなければよかった。こんなの受かるはずがない。
しかし、受けると決めて申し込んだのだから仕方がない。
「行くか…」
僕はその足で、その正門をくぐった。
受験票で教室を確認して、指定された教室に向かう。実際に向かうと、そこは誰も喋らずに勉強している。しかも、ほとんどが同じ制服だ。ちなみに、蓬莱院のお嬢様はこの教室にいないようだ。そもそも受けているのかは知らないが、おそらく何らかの形で受けているだろう。
それに、学校で彼女と話した時、彼女もその制服を着ていた。だから、おそらく彼女と同じ学校の人たちだろう。もちろん、僕みたいな普通の学校に通ってたのではと思しき人も見られるから、少なくとも安心感があった。これで僕一人だけだったら、それこそメンタルが押し潰されてただろう。
とりあえず、僕も席に着き、最低限の勉強をした。一般式は今まで通り五教科の合計得点だが、推薦式は三教科に小論文、そして面接による総合判定で合否が決まる。
その後、試験官と思われる人が現れ、説明が行われた。
時間は三教科は五十分、小論文は六十分である。そして、面接は集団面接で受験番号順に五人一組の班となるらしい。
当然、カンニングやそのように疑われる行為は失格となり退場となる。
試験の説明が終わり、問題用紙と答案用紙が配られ、必要事項を記入していく。
そして、開始のチャイムがなると、試験官が…
「試験開始!」
と発言して、試験が始まった。まずは国語である。僕は比較的国語は得意な方ではあるが…
(ぜ、全然分からない…)
とりあえず、分かるところは記入していったが、それも少しだけ。それに小説に加え古典まであった。古典なんて学校や塾でも少ししか習っていない。この静寂な空間にシャーペンや鉛筆で書いている音だけ聞こえてくる。つまり、何かしら書いているのだ。こんな問題常人のレベルが解ける問題ではない。やはりレベルが高い。
「はあ…」
思わずため息をついてしまう。諦めようと思った時、制服のポケットの中が光っているのが見えた。その中には、あのコインが入っている。
(何で今なんだよ…)
流石にマズかった。いくら相手には見えないとはいえ、明らかに集中を切らすものだった。しかし、思いがけないことが起こった。
「あれ?この問題…」
それは、あるわからなかった問題だ。それが、今なら何故かわかるような気がした。とりあえず思った答えを書いていく。
最初は偶然かと思ったが…
(やっぱり、このコイン…)
やはり偶然ではない。他の問題も同様だったからだ。そのおかげか、すべて埋められた。本当に謎のコインである。
その後の残り二科目、数学と英語も同様だった。正直見た感じではまったく分からなかった。なぜなら、習った内容がほとんどなく、応用だらけの問題だったからだ。少なくとも中学生の出すレベルではない。
まあ、こんな問題が解けるレベルの人たちが受けに来てるのだから、納得といえば納得である。対して、僕は目に見えないカンニング状態だ。
そして、コインはさらに強い光を放っていた。でも、それに気付く者はいない。しかし、この時僕は何か違和感を感じていた。
そして、小論文でその違和感がはっきりした。
(もう、なんなんだよ…)
もはや恐怖しかなかった。なぜなら、なぜか配られた論文用紙に、これを書けというような文字が見えたからである。実際には白紙状態であることはわかっているのだが、流石にこれはどうかと思った。
(コインまで僕を合格させようとしているのか)
僕は体が震えてきた。これを書けば間違いなく高得点が取れることは確実だろう。しかしこれの通りに書けば、今後何かがあった時このコインに依存しかねない。
それでも、今回で最後にしてほしいと願って、その通りに従った。
そして最後の面接では、まるでさっきの願いが届いたかのように何か起こるわけでもなかった。しかし、それが過度の安心をしてしまったことで、逆に緊張感を増幅させてしまい、言いたかったことが言えずに散々な結果となった。
「はあ、やっと終わった…」
筆記だけなら問題はないだろう。でも、面接は最悪の出来だったので、正直受かってるかなんてわからない。
そしてこれはついさっき知ったのだが、どうやら今回の推薦式は、面接の比重が大きいらしく、面接できちんと出来た受験者が合格するということを知った。
おそらく、面談の時にあのお嬢様が言ってたのはこのことだったのだろう。
でも、今まで慌てていたから、きちんと調べておくべきだった。やらかした、と思う僕だった。
〜合否判定会議にて〜
「これは本当なんですか!?」
会議に出ている一人の男性教諭が驚く。
「はい。面接はあまり良くはありませんでしたが、筆記については小論文含めすべて満点でした。すべて満点というのは一般式の受験者にもそのような受験者はいませんでした。」
採点した女性教諭がそう言う。一般式は推薦式の数日後に行われ、結果は同日となる。
「ですが、この受験生は外からなんですよね?」
驚いた男性教諭が質問するが…。
「そうですが、その表現は差別を助長するものと思われます。せめて外部からの受験生と言わないと…」
そう女性教諭言われて、男性教諭はハッとする。
「そうですね。すみません」
とりあえず冷静になった男性教諭に対し、リーダーである校長は…
「先生のことも理解できます。少なからず、こんなことは設立以来初めてのことなのですから。面接官としても立場からどうでしたか?」
そう聞かれた面接官の男性教諭。
「そうですね。あまり他人と話すことを好まないような印象を受けました。顔にも傷のようなものがありましたから、過去に何かがあって、人間不信のようなものがあるのかもしれません」
「そうですか。ですが、このような逸材を捨てる訳にもいきません」
そう校長が言うと…
「校長のおっしゃる通りだと私も思います。流石に首席という訳にもいきませんが」
別の試験官を務めた女性教諭がそう言う。
「では、彼は特待生として。そして首席は彼女ということでよろしいですか?」
全員頷いた。これにて合否判定会議は終了した。
〜合格発表当日〜
この日は星峰の合格発表日だ。ネット公開もあるが、それは合格発表時間より後に出るので、実際に見に来ていた。
ちなみに、他の高校もレベルは星峰より全然落ちるが受け、すべて合格している。
「はあ…」
僕は疲れていた。今まで受験の連発で、一番最初の受験なのに、一番最後に合格発表とか馬鹿げている。こういうの本当プレッシャーになるからやめてほしい。
そう思っていると、目の前の電光掲示板が光り、そこは合格者の番号が掲載された。そこには、僕の番号もあった。でも、この時僕は…
「まあ、そうなるよなぁ」
と思うしかなかった。
その後、合格証明書と入学手続きに必要な書類をもらい、帰宅した。
親に報告すると、驚きと同時に喜ばれた。本来の親ならこういうのが普通だろう。でも、僕は今までのこともあり、褒められても嬉しくはなかった。
一応学校にも報告したが、反応は親とまったく同じだった。
でも、南先生だけは心の底からおめでとうと言ってくれた。先生も、自分のことがなければ本当に尊敬していただろう。
後日、最後の学年末試験が行われて、結果は全教科九十五点以上で学年一位だった。しかも今回はコインを家に置いてきたので、コインがない状態でである。今までダメ人間だった僕が、成長できたと思えた瞬間だった。
あとは、卒業式を迎えるのみとなった。
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