【3話】本当に偶然か?
よろしくお願いします。
「もう、何なんだよ…」
嫌な予感は的中し、見事に特賞に当選していた宝くじ。その賞金は十億円。最早どうすればいいのかわからない。それに、これは本当に偶然か?とつくづく疑問に思う。
「あの二人に伝える?いや、そんなことをしたところですべて奪われるに決まってる。だったら…」
僕はこれを寄付に使おうと思った。何に寄付するかはこれから決めるが、少なくとも僕みたいな不幸な人間が解放されるなら、それはそれで本望だ。
あの後、母親から聞かれたが、七等だけ当たったと誤魔化しその番号を渡したので、これで問題なしである。他のも確認されそうになったが、自分の子どもも信じられないのかと言って黙らせた。
その後は、年末特番を見たり年越しそばを食べたりして、のんびり過ごした。そして…
〜元旦〜
「二人とも、あけましておめでとう。今年も宜しく」
「あけましておめでとう。こちらこそ宜しくお願いしますね」
「あ、あけましておめでとう。今年も宜しくお願いします…」
ついに、新年がやってきた。普通の家庭なら、子どもにお年玉を渡すのが通例だろうけど、僕は一度も貰った事がない。せいぜいお小遣い程度。そもそも、そんなの貰ったところですぐに使われてしまうんだ。そんなんだったら最初からお年玉なんて貰わない方がいい。同じとするなら、初日の出や初詣、おせち料理を食べることくらいだろう。
それに、僕はお年玉以上に価値のあるものを手に入れたから、それこそお年玉なんて必要ない。これで、あとは志望の高校に合格できれば、晴れてこの腐った両親とおさらばだ。
あの後、仮眠程度の睡眠を取り、初日の出を見にいくために近くの初日の出スポットに向かった。
「よし、着いた。やっぱりここは初日の出を見る場所としては最適な場所だなぁ」
父が言うその場所は、とある丘の上。近くではスポットとして有名である。そのため、近所の住人やカメラを持った人も多く来ていた。
そこでしばらく待っていると…
「来た!」
誰かが叫ぶと、一斉に太陽の方を向く。周りが新年がはじまっただとか、太陽が綺麗だとか、はたまたカメラを連写して太陽を撮影してる人もいた。
両親も感心している中、僕は何故かその太陽に不気味な感覚を覚えた。まるで、自分のすべてを見透かされているような感覚である。まさか、このコインと繋がってる訳ないだろう。
念のため、僕はコートのポケットに入れていたHAPPY COINを取り出す。そして、太陽にかざしてみる。
「やっぱり、何もないか。」
そう言って、ポケットにしまう。その時、僕はコインが光っていたことに気付いていなかった。
初日の出を見た僕たちは、神社へ向かった。初詣をするためである。手水し、一礼して本殿に入る。
今いる神社は室川神社である。年間一千万人以上参拝に訪れるという全国的にも有名な神社である。特に三ヶ日は大渋滞を起こしやすく、今日は元旦というのもあり、ものすごい人だった。
本殿の賽銭箱にお金を入れ、二礼二拍手一礼をして祈願した。その祈願はまずは高校受験に合格する事、そしてあの両親に少しでも罰があるように、と。
その後はくじ引きだと絵馬を書いた。絵馬は当然、第一志望の高校に合格することである。
そして、くじ引きはこの神社ではよく当たるらしく、購入する人も尋常じゃない。
僕は意外にも中吉だった。これまで、異常なくらい幸運と呼べるものがあったが、これで大吉なんて出たら、それはそれで怖くなる。たまにはこんなこともないとね。
だが、両親のくじが揃いに揃って凶という最悪の結果だった。
(ざまぁみやがれ!)
僕は内心喜んでいた。あんなに悔しそうな両親を初めて見た気がする。
両親はくじを結びつけに行っている間に、僕は帰ろうとする。その時…
「やめてください!」
「うん?」
叫び声のようなものが聞こえてきた。しかも、声が頭に入ってくる感じである。けれども誰もその声に気付いてないような感じだ。僕はその場所へ向かう。理由はわからないが、その場所に何かあるのではと思ったのだ。
実際に行ってみるとそこは、生い茂った森林でしかも立ち入り禁止エリアだ。そして、そこから声が聞こえてきたので、こっそりそばの倉庫らしき建物にいき、横から顔を覗かせる。
すると、そこには一人の女の子が何人かの男に囲まれていた。しかも、その連中は…
「おい姉ちゃん!凌牙さんの言うことを聞いた方が身のためだぜぇ!ですよね?」
「ああ、ただ遊ぼうぜって言ってるんだ。なぁ、良いよな?」
よりによって、佐藤凌牙の連中だった。正直関わりたくない。ここで関われば、間違いなく自殺行為になる。でも、このまま彼女を見捨てるわけにもいかない。自分みたいな不幸なやつにはなってほしくない。
「あなた方がどちら様か知りませんが、とにかく帰ってください!それに連れもいるんです!」
「じゃあ、その連れってのはいつ来るんだ?」
「ここにいるけど…」
一斉に僕の方を向く。この時、僕は本当に馬鹿なことをしたと思った。
「お前、松下じゃねぇか。なんでこんなところにいんだよ?」
「初詣だけど、それ以外に何かあるの?とにかく彼女を離せよ!」
「あ、あなたは…」
本当、何でこんな馬鹿なことしてるんだろう。こんなこと間違いなく自殺行為だってわかってるのに。だから本当に自分が嫌になる。
「んだとぉ?コラァ!もう一度言って…」
「凌牙さん!流石にここでの暴力はマズイっすよ」
「いや、ここは死角だから余程見える範囲に出ねぇと見えねぇよ」
そう、やつの言う通りここは死角だ。そして、僕がいる場所はちょうど境目だ。つまり…
「ここからあいつを出さなきゃ、誰にも気付かれないってわけだ」
コイツ、暴力的なくせにかなり頭がキレるから本当にムカつく。僕は間違いなくヤツには勝てない。だから…
「アズサ!」
突然別の女の子が現れた。
「リナ!」
「良かった、無事で」
どうやら本当に知り合いが来たようだ。なんて運がいいことやら。
「あなた達がどなたか知りませんが、私は彼女の連れですので、ここを引いていただけるとありがたいです」
「おいおい、随分と威勢がいいじゃねえか。まさか、俺とやり合おうなんて…」
「先程警察を呼びました。あなた方が行っていたことは誘拐未遂です。それでもやりますか?」
いや、あんた思いっきり探してたよな?それで本当に警察呼んでたら、それこそ驚きだよ。
「そんな見えついた嘘なんて…」
それを下っ端が引き止める。
「凌牙さん、ここは引きましょう。ここで本当に警察来たらマジで終わりますって!」
「大丈夫だって、そんな嘘は…。って!コイツ、なんて目をしてやがる…」
佐藤が恐れている?まさか彼女の威圧感に押されてるのか?
「チッ…。松下も、学校始まったらただじゃ済まねえからな!行くぞ!」
なんとか何もされずに済んだ。佐藤たちに襲われてた彼女が近づいてくる。
「あの、助けていただいてありがとうございました」
紺の着物を着ていて、黒髪を髪飾りで結っている。清楚という言葉がそのまま当てはまるような感じである。
もう一人も同じように赤い着物で、ダークブラウンの髪を髪飾りで結っている。見た目は優しい感じがするが、さっきの佐藤の反応からして、何かあるのではと感じた。
でも結論として、どちらも美少女と呼べるだろう。
「あ、いえ…。じゃあ僕はこれで…」
僕はそのまま立ち去った。きっと、もう会うことはないはずだ。もうこういうのはこれっきりにしてほしい。ただ…。
「普通ならあそこは余程声を大きくしないと聞こえないはず。なんで聞こえたんだろう?」
そう考えると、自ずとあのコインを取り出す。
「まさか、ね…」
僕はそのままあの後、一応両親と合流して帰宅した。
あの後、彼女たちも後にして黒い車に乗っていた。
「本当にご無事で良かったです。ですが、勝手に出歩き回らないということを約束してください!」
「わかってるわよ。まったくリナったら…」
「それが心配だからですよ!まったく、今回はなんとかなったものの、次はどうなるか…」
「気をつけるわよ」
「本当に、次から気をつけてくださいね?あなたはあの 蓬莱院家のご令嬢なのですから」
「ええ、わかってるわ。それと、一つお願いしても良いかしら?」
「なんでしょうか?」
「助けてくれた彼を調べてもらえる?今度きちんとお礼を言いたいから…。ついでに襲った人たちについてもお願い」
「かしこまりました」
この時、僕は知る由もない。助けた彼女の正体が、あの大財閥のお嬢様であることなど…
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