【2話】謎のコイン【HAPPY COIN】
よろしくお願いします。
家に着いた僕は、結局いつも通りの仕打ちを受ける。仕方がない、その言葉がすべてを物語っていた。
なんとか親からの仕打ちを耐え、自分の部屋に戻る。僕はこの時を待ち侘びていた。持ち帰ったあのコインをついに見ることができるからである。ポケットに入れておいた袋を取り出し、コインと一緒に入っていた紙の内容を読む。
「えっと、これは【HAPPY COIN】と呼ばれるコインです。このコインは極度の不幸体質者にのみ見えるものであり、普通の人には見えません。このコインの所持者はきっとあなたを幸運にしてくれるでしょう」
まったく信用出来ない内容に呆れた。【HAPPY COIN】?聞いたことがない。しかも、差出人不明とか論外である。ただ、この内容が本当なら親には見られないはずだとも思った。まったく信用していないが、実験も兼ねてあえてわかりやすい玄関前に置いて寝た。
翌朝、両親は仕事のため朝早く出て行った。肝心のコインはまったく気付いていない。偶然かもしれないので、引き続き検証することにした。そして、僕は今日も塾へ行く。そう、あのコインを持って…
塾は毎回授業後に小テストが行われる。特にこのシーズンは僕を含め三年生にとって、追い込みの季節でもある。
なので、本来なら授業内容から出題されるが、今は時期的にランダムに出題される。
僕はいつも通り、教科書やノートを確認していく。しかし、今回の小テストに妙な違和感を感じていた。そして、それは現実のものとなる。
(何だ、これ!?ラッキー!)
僕が直近まで確認していた場所が出てきた。当然作られた問題ではあるが、僕にとってはラッキー問題だった。
そして、それは他の教科にも及んだ。なので、おそらく人生初かもしれない。このおかげもあってか、満点を取り両親からの罰を受けずに済んだ。
その日の夜、僕は翌日の模試に向けて軽く範囲を復習していた。とはいえ範囲は全範囲なので、どうしてもいくつかの単元は疎かになってしまうが、それでも頑張るしかなかった。
就寝前、僕は急遽あのコインを持って寝ることにした。未だによくわからないコインだが、何故だかこれからいろんなことが起こるのではと、心のどこかでそう思わせているのだろう。でも僕は、少なくとも信用していない。これは紛れもない事実である。
「まさか、ね…」
そう呟きながら手に持っていたコインをズボンのポケットにしまい、就寝した。
この日、僕は珍しく夢を見た。それは僕が模試の問題と模範解答を見て、答え合わせをしているのである。
(そんな夢が現実になるのなら、本当に苦労しないよ)
そう思いながら、僕は少し笑みを浮かべていた。
そして、その日がやってきた。今は受験会場である近くの高校に来ており、コインは一応お守り代わりとして持ってきている。当然、夢で見たことは夢でしかない。仮に正夢だったとしても、“偶然”という言葉ですべて片付けられる、そう思いながら入った。
席に着き、志望校を書いていく。僕はそこまで頭良くないのを自覚してるから、必然的にレベルの低い学校を選ぶ。どうやら佐藤たちはいないようで、安心していた。
そして、いよいよ模試が始まった。ところが、問題を見て驚愕した。
(これ、夢で見た問題に出てきたやつ、しかも一言一句一緒なんて…。いやいや、そんな訳…)
正直信じたくないものの、どうしても答えは合っているので、恐怖しかなかった。しかし、その恐怖はどんどん膨張していった。
その後も続き、結果として今回出てきた五教科の総問題数のほとんどが夢に出てきた問題、つまり正夢だった。模試を終えた僕は、最早何も言える状態ではなかった。
帰ると、早速母親に模試の自分の回答を見せろという。そして、お互いに確認した。そして、母は驚愕した。
「ねぇ、アンタ本当にこれ、自分の回答なの!?」
「だっ、だったらなんだよ…」
「あっいや…。まさかカンニングなんて…」
「する訳ないだろ!いい加減自分の子どもくらい信用しろよ!」
「ご、ごめんなさい」
珍しく母親が謝ってる。でも、どんなに許しを乞いたところで、僕は許さない。そして、信用もしない。これが今回のことではっきりした。
学校も冬休みに入ってるため、僕は塾で高校入試の勉強をし続けた。あれ以降、夢を見ることはなかったが、事前勉強をしていた場所が問題は違えどもそのまま出たことで、余裕で満点を取っていた。
〜大晦日〜
この日は流石に年末年始で塾も休みだったので、僕は家で勉強していた。
あのコインは、結局気付かれなかった。どういう構造をしているのかはわからないが、とりあえず自分だけに見えているということだけはっきりした。
そして、この日は年末ジャイアント宝くじの当選がある。これまで両親は幾度となく買ってきたが、当たっているのはほとんど見たことがない。良くて五等あたりだろう。
そして、この日だけは一年で唯一といってもいい休息日だ。宝くじの結果を手伝う代わりに罰は無しというものだ。この両親、本当に信用ならない。絶対に当たってると毎年信じてるからだ。そんな僅かな確率にかけてるくらいなら、息子への罰の確率を下げてほしいものだ。
いよいよ、その時が来た。僕は下一桁から数字を読んでいく。そして、父はスマホで番号を確認する。枚数はなんと三百枚!馬鹿だとは思うが、一応大手企業に勤めているというのもあって、年収は良い。パートとはいえ、一流企業に就職している母も、僕と一緒で番号を読んでいる。
それに両親はともに一流大学を出ているので、自他ともに認めるエリートである。おそらく、自分も優秀な学校に進んで欲しくてこんなことをしてるのだろうが、結局虐待と変わらないので何も言わない。本当、頭は優等生で子育ては劣等生だ。
そして、残り十枚まで来た。ここまで当たったのは五等以下。
「いよいよ、残り十枚だ。いくぞ!」
父が高らかに宣言する。それに応える母。本当、どうして頭だけのバカな両親に生まれてきてしまったのだろうと、後悔してもしきれない。
結局最後も七等が当たったのみ。まぁ、結論としては大赤字といってもいいだろう。
「クソォ!来年こそは!」
「ええ!」
これ以上両親に付き合えなくなり、自分の部屋に戻る。そもそも、確率ありきのものなんか信用するだけ馬鹿らしい。
だが、これには目的があった。僕は机の引き出しを開けると、そこには開封前の十枚一セットの宝くじがあった。以前僕の誕生日があり、母が宝くじを買ってきて、誕生日プレゼントとしてもらったものだ。普段毎日のように罰をするくせに、こういう時だけ母親面する。本当ムカつく。
もちろん、母も持っているので結果は勝手に見るだろう。
そして、目的はあのコインのせいなのか確かめるためである。まあ、仮に当たったとしても当たらなかったと誤魔化すだけだから問題ない。下一桁の番号が他の当選番号と重ならないことは、さっきので確認済みである。
さっきはコインを持っていなかった。もし持っていて本当に当たるようなことがあれば、正直考えなければならないかもしれない。持っていれば必ず何か良いことが起こる、と…
こっそり開けて、自分のスマホで確認する。この時、嫌な予感はしていた。
「う、嘘だろ…」
その十枚の内一枚が、特賞の当選宝くじだった。
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