【1話】不幸体質の少年
初投稿です。よろしくお願いします。
僕、松下遼は自分でも言うのはなんだけど、極度の不幸体質だと思う。
「おい、松下ァ!放課後裏門に来いよ!そうでなきゃ、わかってるよなぁ」
「わ、わかってるよ…」
今話したのは、佐藤凌牙である。いわゆるヤンキーであり、放課後とか当たり前のようにタバコを吸ったり、バイクを運転したりしている。
暴力的な性格であり、周りからは恐れられていた。しかもコイツの両親は大物らしく、積極的に寄付を行なっていたこともあり、先生も責められなかった。
〜放課後〜
「おい、松下ァ!今日も見てていいザマだなぁ!オラァ!」
「痛っ!もう、やめてよ…」
今日も当たり前のように、佐藤率いるヤンキー軍団が殴ったり蹴ったりしてくる。しかも…
「うわぁ、凌牙さん!コイツ漏らしてますよ〜!キモいっすね!」
佐藤とつるんでる一人が笑いながら話す。そして、それに追随するように笑い出す。それも仕方のないことだ。事実なのだから。その時…。
「凌牙さん。南が来ました」
「チッ。行くぞ」
佐藤たちが逃げていく。その理由は…
「松下くん、大丈夫!?ケガは?」
「み、南先生…」
南菜穂先生。僕のクラスの副担任であり、教員の中で唯一理解してくれる先生だ。
「もう、本当彼らは…。本当に大丈夫?」
「はい、大丈夫です…。じゃあ、帰りますね。さようなら…」
「辛くなったら、いつでも相談にのるからね!」
あの一言で十分だった。今日も見事に全身アザだらけだ。本当に笑うしかない。
僕の学校生活はいつもこんな感じだ。そして、佐藤が南先生を恐れるのには理由がある。それは、佐藤の父親が働いている企業で就いている役職より、南先生の父親が就いている役職の方が上のため、佐藤はいじめを報告されれば父親は仕事を失う可能性があるため、喧嘩を売れないのだ。
しかし、南先生が報告できないのにも理由がある。それは、佐藤が南家の弱みを握っているかららしい。詳しいことは知らないけど、それを知られると、父親の立場は加え南先生自身にも危害が及ぶ恐れのある重大なものらしい。
だから、結局教師は誰も信用できない。いくら相談に乗ったところで報告できなきゃ意味がない。
そして、帰っても地獄は続く。
「た、ただいま…」
「おかえり、じゃあテスト見せて!」
今のは僕の母親だ。僕の両親は成績に厳しく、満点を取れないと…
「アンタ、またこんな低い点数取って!間違えた問題を復習して、再テスト!満点取るまで夕飯なし!」
これである。満点取れなければ、何度もやり直し。これが僕の家での日常。さらに…
「ただいま」
「おかえりなさい」
「おかえり…」
「おっ、ちゃんとやってるなぁ。どこまでやって…って、なんて点数なんだ。じゃあ、風呂で息止めな」
そう言った父は、僕を風呂の浴槽に連れて行き、そのまま頭を強引に突っ込む。これが当たり前、要するに虐待である。
両親からは虐待の日々。これまでに、手足の骨折は当然で、頭蓋骨骨折や頭から血を流すなんて事もあった。また、階段から突き落とされたこともあった。
正直もう限界だった。何度も死にたいと思った。でも、こういう時に限って死なせてくれない。
いじめや虐待はおそらく、僕自身の容姿や成績にある。見た目はブスでケガだらけだし、両親は年齢にしては美男美女系で、一流大卒というエリートだ。対して僕の成績は学年でも低レベルである。つまり、彼らは僕を人間としてでなく、非人間としてしか扱っていないのだ。
他にも、虐待相談センターに相談したこともあったが、受け入れて貰えなかった。どういうわけか、事前に両親が根回ししたらしく、取り合って貰えなかった。
要するに、誰からも信じられていない。南先生は相談に乗るとは言ってるけど、一度も相談に乗れた事はない。また逆もしかりで、僕は誰も信じてもいない。そして、いつからか自分自身すら信じることが出来なくなった。
理由は単純で、僕自身が弱者だからだ。
このまま中学を卒業しても、今後が決して良くなるとは思えない。どうせ高校に行っても、このような日々が続くだけである。
「はぁ、もうやだ…」
〜12月のとある夜〜
今、僕は塾の帰りである。どうせ帰ったところで居場所などないのだ。せめての救いは今日から学校の冬休みってことくらいだろう。これで、佐藤たちの件はとりあえず置いておける。
そう思い、俯きながら歩いていると、道端の草の中から、
「今、一瞬光ったような。気のせい?」
一瞬光った物を見たような気がした。しかし…
「ま、いいや…」
あまり気に止めなかったため、そのまま通り過ぎた。しかし、ある程度進んだ所で立ち止まる。
「なんでだろう。なぜかさっきのが気になる」
あの光が気になった。普段は一切気に止めないのに、まるで引き止めるような風に感じた。理由はわからない。僕は引き返し、さっきの場所に走って戻った。
「ハァ、ハァ…。着いた、ここだよな。さっきの…」
さっきの場所にたどり着き、草の方を見ると…
「やっぱり。光ってる…」
その光は、まるで僕を呼んでいるかのように発光していた。恐る恐る近づくと…
「何これ、コイン?」
そこにあったのは、透明な袋に入った謎のコインと一枚の紙だった。中を見ようと思ったが、流石に暗かったため、家に持ち帰ることにした。
この時、コインを拾ってから、僕の人生が大きく変わることなど思ってもいなかった。
はじめまして、yomaと申します。
よろしくお願い致します。
読んでいただきありがとうございます。
面白ければ、【ブックマーク】や下記のポイント評価をしていただければ幸いです。