三者面談⑤!
「じゃじゃーん!こんにちはー!」
「氷…。元気いいのはいいけど、今日のテンションおかしくないか?」
「えへへ。 面談ってちょっとプロ野球の年棒を決めるのに似てるかなって?」
「似てはないけど、氷が楽しそうなら別にいいか。」
時任氷
1月14日生まれ
右投げ両打ち
身長153.2cm
体重54.1kg
趣味 寝ること、野球本の読書
特技 速読
公式戦成績
出場試合数9
打率.455
出塁率.538
得点圏打率.333
打席数26
打数22
安打10
本塁打0
打点3
得点3
四死球4
盗塁0
犠打&犠飛0
失策1
スイングスピードC
50M走E
一塁到達スピードE
ベースランE
遠投B
ゴロ捕球能力&判断能力D
フライ捕球能力&判断能力C
投手適性5
捕手適正4
一塁手適正3
二塁手適正3
遊撃手適正3
三塁手適正9
左翼手適正8
中堅手適正0
右翼手適正7
氷の打撃成績は特にいうことはない。
チームでもトップ並の成績を残しているし、桔梗よりも少しだけだ率が高い。
選球眼もいいので四球も取れているし、後は、小さい身体でパワーが足りないので、スイングスピードを速くしたりと、捉えることは抜群に上手いのでボールを飛ばすコツも覚えて欲しい。
足の速さはどうにもならなさそうだけど、高校の寮に入ってから好きなお菓子やらアイスやらをそこまで食べられていないらしい。
そのおかげなのか、体重が入学時よりは落ちていて、脂肪が落ちて筋力アップしている。
氷は体重を落とせば足の速くなるタイプではなさそうだし、無理に体重を落としてもあまりいいとは思えない。
氷は少し丸い方が体のバランス的には良さそうなので、筋肉量が増えれば体重を維持しつつ体型も維持させたい。
氷は馬鹿にするなと怒りそうだから言わないが、体重管理も大切な練習のひとつだ。
「氷はよくやってるね。私がスカウトした氷と柳生がスタメンで活躍していて嬉しいよ。」
「私も白星に来てよかったです。監督とコーチにも色んなことを教えて貰えて助かってます。」
「そう。それはよかった。」
「コーチに聞きたいんだけど、これからどんな練習をしたらいいんだろ?」
「うーん。俺はそこを考えなくていいと思う。氷には氷の思うことがあるよね?」
「一応、自分がなりたい理想はあるよ?うんうん。」
氷は少し何かを考えて、自己完結したようにうんうんと頷いていた。
「氷が思った自分を目指したらいいよ。それには付き合うし、絶対に越えられないような壁が出てくると思う。その時には厳しい練習もあるかもしれないけど、頑張るんだよ。」
「はーい。任せて!ぐっ。」
力強いガッツポーズを見せて、そのまま胸を張って部室を出ていった。
スタメンに選ばれる選手の方が実力はもちろんのこと、自分のなりたい理想を持っている。
そのおかげか面談もスムーズに進むし、変に意見が食い違うこともなく簡単に終わる。
「うっす!お願いするッス!」
「ふぅ。来たか。」
「なんッスか!?その態度は!?圧迫面談ってやつッス!」
雪山沙依
7月7日生まれ
右投げ左打ち
身長160.8cm
体重54.7kg
趣味 漫画、アニメ
特技 スポーツ全般
公式戦成績
出場試合数3
打率.333
出塁率.333
得点圏打率.000
打席数6
打数6
安打2
本塁打0
打点1
得点0
四死球0
盗塁1
犠打&犠飛0
失策1
スイングスピードC
50M走A
一塁到達スピードA
ベースランA
遠投D
ゴロ捕球能力&判断能力D
フライ捕球能力&判断能力E
投手適性3
捕手適正0
一塁手適正4
二塁手適正8
遊撃手適正7
三塁手適正5
左翼手適正0
中堅手適正0
右翼手適正0
雪山は一年生大会にしか出ていないが、調子が良さそうだったのでもっと試合に使ってあげたかった。
それでも試合を見ているかのテストでスタメンを外されからは、大会も勝ち上がってきたので試合に出してあげられなかった。
それでも思ったよりもミスも少なく、足の速さを生かしたプレーも見られた。
雪山に関しては色々と教えることがあるので、この場でそういったことを話すことはない。
雪山のフライ適正は内野手としてなら、まだ見てられるレベルだが、これが外野になるとあまりにも酷い。
一生外野をやらせたくないレベルではあるが、そんなことを思っている選手がいつの間にか素晴らしい外野手になることもあるのだろうか?
俺にそのビジョンが見えてないだけで、雪山の可能性をもっと信じて指導するべきか?
それでも俺は雪山に挑戦してもらいたいことがあった。
これが上手くいくかどうかは微妙なところだが、雪山にとってはいいことだと俺は思っている。
この意見に雪山が簡単に頭を縦に振るとも思えないけど、それでも俺の意見を押し通すべきだろう。
「雪山、単刀直入に言うけど今の打ち方はあまり合ってないと思う。フォーム変更した方がいい。」
「なんでッスか?あのメジャーで活躍したヒットメーカーのフォームが悪いわけないッスよね?」
「かなり特殊だけど、それで打てるなら別に俺も問題ないと思う。けど、雪山の利き目って左目だろ?」
「利き目?右利きだから、目も右なはずッス!」
俺は雪山に親指と人差し指で丸を作らせて、部室の隅にある時計をその丸の中に入れさせた。
「右目、左目を瞑って丸の中に時計があるのはどっちだ?」
「ひ、左目ッス…。も、もう1回やるッス!」
利き目というのは何度やっても変わらない。
雪山も何度も色んなもので試しているが、すべて左目で見えるので雪山は驚いているようだ。
「雪山は多分良かれと思って左打者として野球を始めたんだと思う。雪山が無意識に左目でボールを見ようとしてるのを確認した。」
「うっ。それでフォームチェンジッスかか…。」
「振り子って言われてるフォームから、オープンスタンスに変えた方がいいと思う。そっちの方がボールを見やすくなるはず。それかオススメはしないけど、右打ちになるかやね。」
「うーん…。右打ちってそんな簡単に出来るようになるんッスか?」
雪山は絶対に拒否してくると思っていたが、思ったよりも俺の話に食いついてきた。
しかもオープンスタンスにではなく、右打ちに興味があるようだ。
「もしかしてフォーム変更じゃなくて右打ちになるつもりか?」
「聞いてみただけッス。」
「はっきり言ってどれくらいでマスター出来るかはわからん。俺の周りにもスイッチヒッターに挑戦した奴は1人しかいなかったし。そいつはセンスもあったし、3ヶ月である程度ものになってたけど。」
「ふーん。とりあえず右打ちやってみてもいいッスか?」
「いいけど…。なんでフォーム変更じゃないんだ?」
「右打ちになれたら、スイッチヒッターってことッスよね?最高にカッコイイッス!!」
そういうことか。
雪山のカッコつけが右打ちにかなり興味を示させたようだ。
俺は別にそれでもいいかなと思っていた。
確かに俊足を生かすなら左打ちの方がいいけど、右打ちになって長打が増えたり、コンタクト力がよくなれば、絶対にそちらの方がいい。
とりあえず素振りからやらせて、次にトスバッティング、マシン打撃とステップを踏ませる。
その途中であまりにも酷いようなら辞めさせればいいし、逆で打つ練習は身につかなくても左右でスイングするので体のバランスは良くなる。
「とりあえず右打ちの練習も組み込むね。あまりにも無理そうならすぐに辞めさせるから、調子乗って練習しないように。」
「了解ッス!それじゃお疲れッス!」
雪山との面談は思ったよりも早く終わったし、言い合いになることもなかったが、俺の想定とは違うことになってしまった。
監督も思わず困った顔をしていたが、雪山はまだまだ野球歴が短く変な癖もないので、右打ちへの変更は思ったよりもスムーズにいくかもしれない。
それもこれも雪山なのでやってみるまでは分からない。
「ちわーす。よろしくお願いしまーす。」
ここまでは全員制服で面談に来ていたが、ユニホーム姿で緩い挨拶しながら凛が部室に入ってきた。
ついさっきまで練習していたのか、少しだけ肩で息をしながらタオルで汗を拭っていた。
「凛、走り込みでもしてたのか?」
「え?よく分かったね。ダッシュとかやらされないとやらないんやけど、冬トレの前に少しは走っとこうと思って。」
「ほー。ちゃんと先を見据えてるっていうか、トレーニング真面目にやってるんやね。」
「凛はまだまだ全然力足りてないから…。」
「まぁそれはそうやね。」
「そこは少しくらいフォローしてくれんと?」
王寺凛
右投げ左打ち
11月26日生まれ
身長157.2cm
体重48kg
趣味 地元プロ球団の応援
特技 諦めないこと
公式戦成績
出場試合数8
打率.200
出塁率.200
得点圏打率.200
打席数10
打数10
安打2
本塁打0
打点2
得点3
四死球0
盗塁1
犠打&犠飛0
失策0
スイングスピードD
50M走A
一塁到達スピードA
ベースランA
遠投E
ゴロ捕球能力&判断能力B
フライ捕球能力&判断能力A
投手適性0
捕手適正0
一塁手適正3
二塁手適正7
遊撃手適正8
三塁手適正5
左翼手適正7
中堅手適正8
右翼手適正7
チームでも8試合と試合にはよく出ていた。
足も早く、守備もそこそこ上手く、頭も悪くないので層の薄い外野では試合に出る機会も多かった。
凛の性格はとにかく負けず嫌いで、何かと誰かと自分を比べて真面目に練習している。
自分が劣っていると思っていても、腐ることなく前を向いていけるのはスポーツ向きの性格だと思う。
凛は身体付きがまだまだ中学生と変わらないので、この冬トレの間に少しは身体を大きくすれば、弱点でもあるパワー不足を解消出来るはず。
「まぁ打撃結果はあんまり打席に立ってないからなんとも言えないけど、10打席の内5打席が得点圏だったから、よくチャンスで回ってきてたね。」
「そのうち1回だけしか打ててないんやね…。打ててないとは思っとったけど。」
「巡り合わせってのもあるからね。それにしても凛はあんまり打撃が向上しないね。」
「分かっとるよ!けど、打てんものは打てん。練習するしかないっちゃろ?」
「とりあえずこれ見て。素振りしてる時の凛と、その日の海崎先輩が投げて打ってる場面と、この前の試合の凛のフォームね。」
俺は順番に凛に自分のフォームがどうなっているかを見せた。
確かに素振りやトスバッティングの効果が出ているのか、素振りの時のフォームはかなり綺麗にまとまってきた。
軟式でビヨンドバットを使いすぎて、ミートポイントを掴めていないのは今も変わらないけど、1歩ずつ前進はしているはず。
「うわ。詩音先輩との対戦の時のフォームひどすぎ。素振りの時と比べると同じ人とは思えないやん。」
「凛は素振り、トスバッティング、マシン打撃、シート打撃、試合と進んでいくうちに段々とフォームが崩れていくんだよね。ヒットを打たないとっていう気持ちが強すぎるのかも。」
「う、うん…。この映像みてすぐ分かった。」
「打撃練習はもちろん続けていくけど、凛は瀧上先輩ともっとコミニュケーションをとったほうがいいよ。同じ外野でも瀧上先輩からは学んだ方がいいことが沢山あるから。」
「舞先輩に?それって守備でってこと?」
「そういうことやね。あと1年もいないし、外野手としてはお手本になるから、盗めるプレーは出来るだけ盗んでおいた方がいい。」
俺も指導者として瀧上先輩に外野ノックを打ったりするが、守備については口を出したことがない。
彼女は俺よりも監督よりも外野守備の極意を知っている。
凛の目指すべき姿は瀧上先輩のような守備型の選手がいいと思う。
それを言ってしまうのは、凛のこれまでの努力を無駄にしてしまう気がした。
凛が行き詰まったときに、そういった道を示してあげられればいいだろう。
「王寺はチームでもトップレベルに努力してるし、これからもそういった姿勢を続けていけばいいと思う。」
「ありがとうございます。これからも頑張ります!」
凛は監督から褒められると素直に嬉しそうに返事をしていた。
「東奈くんもありがとう。瀧上先輩のプレーを盗めるように頑張るからね。」
「もし瀧上先輩に聞きづらいことがあれば、俺や監督に聞いてみて。それでもイマイチ分からなかったら、瀧上先輩に代わりに聞いてみて、凛に伝えることも出来るからね。」
「それは助かるかも。とりま、練習に戻ってくるけん。お疲れ様でしたー。」
凛は引き続き自主練に励むようだ。
俺も休息日を作って、上手く身体を休めるようにしていたけど、選手たちにも練習だけではなく身体を休めることの重要性を教えてあげないといけない。
それもこれも冬のトレーニングで1から選手たちに教えてあげよう。
俺はこの後に1年の一般生の面談を終わらせて、部室を後にするのであった。