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元天才選手の俺が女子高校野球部のコーチに!  作者: 柚沙
第4章 高校1年秋
179/280

秋の終わり!




「みんなお疲れ様。いい試合だった。」



1年生大会は準決勝で負けた。

でも、この試合が選手たちの力になることは間違いない。


次は絶対に勝つという気持ちと、負けた相手がこれからの甲子園を争っていくであろう福岡国際なのもよかった。




今日の結果を改めてマネージャーの書いたスケッチブックで確認していた。




福岡国際 4ー3 白星高校



試合結果


結果 打安本点得四死盗犠 

四条 420110000

中田 420000000

時任 400100000

橘  321111000

月成 410000000

柳生 420000000

円城寺320000000

七瀬 310010000

王寺 200000000




途中交代


結果 打安本点得四死盗犠

江波 100000000

雪山 000000000



投手成績


結果回安振四死失責 球数

七瀬7960043 96球




七瀬はこれを見るとよく投げている。


いつもなら平均四死球2つは出すのに、今日は0個とコントロールはほぼ完璧なピッチングと言っていい。




打線の方も11安打も打ってるし、本塁打が一本出ているのに三点なのは少し物足りないけど、結衣や滝本さんに対してよく食らいついた方だろう。




「俺から言うことは特にはないかな。四強である福岡国際のフルメンバーを、ここまで追い詰めたことは自信を持っていいと思う。」




「でも、かのんがあんな無理しなかったら負けてなかったかもしれないのに。」




雪山がかのんの行いについて苦言を呈していた。


雪山の言いたいこともよく分かるし、俺もかのんのことはどうしたらいいか迷っていた。




「沙依!流石にそれは言い過ぎ!かのんだって痛みに耐えてプレーしてたんだし。」




「けどさ、美咲は怪我してプレーして決勝点を許すことになったかのんの肩を持つの?」




「え…それは…。」




美咲も咄嗟にかのんを庇ってみたが、怪我を隠してプレーして、それが負けに繋がったことに関しては庇いきれないんだろう。




「みんなに聞くけど、かのんが怪我を隠してプレーして、結果的には決勝点を与えることになった。それについてはかのんの行いには賛同出来るか?それとも批判するか?」




「かのんに賛同出来る人は?」




みんな周りの顔色を伺っていて、手を上げようとしない。


俺も選手だったら、かのんの身勝手さには呆れるかもしれない。




「……。私は分からないこともない。」



手を上げたのは凛だった。


もし手を上げるなら庇うために桔梗か美咲かと思っていたが、まさかの凛が手を上げてみんながビックリしていた。




「凛はいっつも途中交代されたり、出たりするから、最初から最後まで試合に出たい気持ちは分かる。」




凛は確かに足の速さと、外野手不足で試合に出られることが多い。


試合に出れるだけで満足せず、フル出場したいという凛の意気込みはよく分かる。




「まぁそういう感想でいいなら、私もかのんの行動は別におかしくないと思うかな。」




凛の話に桔梗も乗っかって、かのんのことを擁護する方に回った。


桔梗は実際のところはかのんの行いは看過できないはずだが、このままだと戦犯として吊し上げられると思ったんだろう。




「2人だけでいいか?なら、擁護できないって思う人は?」




手を上げたのは雪山と市ヶ谷だけだった。

この二人は思ったことをズバズバいうタイプなので、多分こうなるんじゃないかとは思っていた。




「それ以外の人は分かるところもあるし、それはちょっとって思うところもあるってこと?」



1番賛同しやすいどっちの言い分も分かるという答えを提示すると、みんなが一斉に頷いていた。



俺も選手の立場だったら、多分このグループに入っていただろう。




「まぁみんなの考えは分かる。けど、今はそんなことを聞きたいんじゃない。凛達が自分の意見をきっちりと持って、片方の意見で手を上げた。例えばだけど、明日とかにかのんに雪山と市ヶ谷が批判してたよって言われる可能性もあるんだぞ。」




「そんな陰口みたいなこと言いません!」




「例えばだから。円城寺が怒るのも分かるけど、本当はみんなはどちらかの答えじゃないかって思ってるはず。円城寺はどうなんだ?」



「あたしは…。」



「一人に聞くのも可哀想だから、もう1回全員に聞く。次は絶対にYESかNOで答えてもらう。」




改めて聞き直すと、断然かのんのやったことには賛同できないという意見が多かった。



誰もが気持ちは分かるけど、そのせいで試合に負けたという結果がみんなの答えが批判的になっている。



少ない人数ながら賛同する方に手を上げたのは、七瀬と氷だった。




「七瀬と氷はなんでかのんのプレーに賛同出来るに手を上げたんだ?」




「うーん。確かにかのんは怪我をして出てたけど、最後の打球だってかのんだからグラブに収まってたんじゃないの?」



「氷もそう思う。その前のベアハンドからの一塁送球もかのんだからアウトに出来た。うんうん。」




俺も2人の言っていることは正しいと思っていた。


かのんのやったことに関しては俺はどっちでもいいと思っていた。


確かに怪我をして試合に出てるとはいえ、あの回のプレーはなにも責めるところはないと思っている。



あのエラーも一般的なセカンドならグラブにボールを当てられないと思っていたし、グラブに入ってもキャッチ出来るかは分からない。



かのんの性格、守備の上手さが災いしてこんな問題になってしまっている。




「東奈くんはどう思いますか?コーチの意見も聞きたいです。」




円城寺が俺にいじわるしたいとかそんな気持ちではなく、真面目な性格通りに素直な言葉を俺に投げかけてきた。




「俺はかのんのやったことは間違ってると思う。怪我を悪化させてまで試合に出ることは、上を目指す人間がやることではない。」



みんなもそうだよねと言った感じで俺の意見に頷いていた。


だが、俺は皆とは少しだけ思うことが違っていた。




「けど、俺はかのんのせいで負けたとは思ってない。七瀬や氷が言ってた通りで、ツーアウトを取ったベアハンドも、あのエラーになったダイビングキャッチもかのんじゃないと届いてなかった。」




「でも!かのんだからバッテリーが打たせたってことも考えられるでしょ!?」




次につっかかってきたのは市ヶ谷だった。


市ヶ谷は同じ内野手なので、かのんが怪我したと言っておけば、市ヶ谷が試合に出られた可能性があったので気持ちは分かる。




「そうだね。だから、みんなが今思ってることは間違いはないよ。」




「それなら!」




「なら負けたのってかのんに責任があるんじゃないのって話。みんなもそう思ってるんでしょ?」




「…う、うん…。」




俺は一連の話を聞いていて、チーム同士で言いたいことを言い合えるようになっていることに気づいた。



それはそれで喜ばしいことなのは間違いないが、俺にはそれよりも気になることがあった。




「俺から言うことはないって言ったけど、一つだけ言いたいことが出来た。柳生、さっきから俺たちは何を話してる?」



「え?なにって?負けた原因を話してるんじゃないの?」



「そうだよね。けどね、試合終わって負けた原因を話しているようじゃ、多分四強には勝てない。強くなるチームは負けた理由じゃなくて、今日の試合どうしたら勝てたかを話し合うんだよ。」




「どうしたら勝てたかか…。」




みんな俺の言ったことに納得していた。


かのんの話を俺が振っておいて、こんな話をするのもおかしな話だが、多分振らなくても結局こんな話のは流れにはなっていただろう。




「東奈くんの言う通りだと思う。次戦う時には絶対に負けたくない。なら、どうしたら勝てたかを話し合うべきだよ!」




「だね。夏実の言う通りだと思う。責任をなすり付け合うくらいなら、次は負けないよう話し合うしかなくない?」




夏実と美咲の両キャプテンが俺の言葉に完全に乗っかってきたので、みんなそれ以上なにも反論してくることはなかった。



俺のこの言葉を理解できない選手がいたらそれはそれで問題なのだが…。




この後は美咲が中心となって、今日の試合の振り返りを行っていた。


誰が良くなかったとかではなく、こうしたらもっと点が入ったんじゃないか、失点を防げたんじゃないのかと言うのを話し合っていた。



美咲はいろんな人に意見を促したりして、発言に困ると夏実がカバーしてという構図で話し合いはかなりスムーズに進んでいた。




「東奈くん。一応話し合えることは終わったと思うけど、どうだろう?」




「いいんじゃないかな?今みたいなミーティングが出来て、それを踏まえてしっかりと練習すれば自ずと上手くなるし、試合にも勝てるようになっていくよ。」




「それじゃ、私からもお話させてもらおうかな。」



それまで俺たちの話を黙って聞いてた監督からの話があるようだ。




「とりあえずみんなお疲れ様。」



「「お疲れ様でした!」」



「試合の総括はね、みんなが思ってるより私はいい試合だと思ってるよ。試合には負けたけど、ほぼ勝ったと言ってもいいんじゃないかな?」




監督はとても明るく優しい声でみんなのことをべた褒めしていた。




「向こうは監督がしっかりとサインを出して、作戦を練ったり変えたりしてきてたけど、こっちは東奈くんがみんなに任せてこの試合展開でしょ?普通に東奈くんがガチガチに作戦を決めてたら勝てたと思う。」




監督がそう言うと試合に勝ちたかった選手達から少し睨まれてしまった。



確かに選手の気持ちやプレースタイルを無視して、勝ちに徹底したら勝てた可能性は全然あった。



でも、俺は勝ち負けよりも格上の相手にどれだけやれるかを見たかったので、監督が言ってることはたらればに過ぎない。




「時任は4タコだったよね?あれは完全に氷を防ぐシフトと配球がなされていた。」



「え?私の対策ですか…?」




氷は自分が考えてもいなかったことを監督に伝えられて、少しびっくりした表情で監督に真意を聞こうとしていた。




「時任の打球傾向がバレてたね。ストレートはインコースだろうが、アウトコースだろうが右左に打つけど、変化球を打つ時は違うことが多いというのは気づいてた?」




「うーん…。変化球は素直に芯で捉えて弾き返すようにしてるのでなんとも…。」




「それが仇となったね。多賀谷か柳生のどちらかがそれに気づいていたっぽいね。時任はインコースが苦手で、インコースに曲がってくる変化球は身体の前で弾き返すから、一二塁方向に打球が飛ぶって分かってた。」




「そんな癖が…。これって直した方がいいんですか?」




「いや、その必要は無い。別に癖という訳では無いし、それで変にバッティングを変えることは氷のためになるとは思えない。」




監督が声に出す前に俺から氷にその必要は無いと伝えた。


確かに相手は上手く氷対策をしてきたかもしれないが、すべてほんの僅かなところでアウトにしただけで、もう1回やれば2安打、3安打と結果は変わるだろう。




「東奈くんの言う通りだね。時任はこのままでいいよ。ただ、今日はなんで勝てなかったのかを知りたいと思っただろうから、それだけは伝えておこうと思って。」




「私のせいですか?」



氷がとても申し訳無さそうな顔で恐る恐る聞き返した。




「時任のせいではないよ。ただ、時任の対策をかなり練ってきてた。3番をきっちりと抑えることで、4番の橘に極力チャンスで回さないようにしたんだと思う。」




そこまでやってくるのかと、選手たちは驚いていた。


相手のことを知っているなら当たり前のようにその情報は使う。


あっちのことに驚いているけど、うちも柳生が姉の弱点や特徴を事細かに教えてくれた。




「秋山さんは橘の元チームメイトだけど、対策が思いつかなかったんだろうね。だから、その前の選手を抑えることで橘に打たれても最低限の被害で抑えようとしたんだよ。」




「そういうことですか…。とても参考になりました。ありがとうございました。」



氷が丁寧に監督にぺこりと頭を下げながら、言葉遣いもとても丁寧だった。




「まぁ、それに気づいても東奈くんは何も言わなかったから、時任が責任感じることになったのは本当にごめんなさいね。」




「氷、それについては申し訳ない。」




「うぅん。大丈夫です。ぶぃ。」




俺ににっこりと笑いかけてVサインで気にしてないと言ってくれた。


氷のいつも通りの態度に、みんなもかなり和んだようだった。




「それじゃ。今日のミーティングは終了ね。お疲れ様。」




「「お疲れ様でした!」」




ミーティングも終わって、選手たちの緊張感もなくなり、いつものように仲良くし話しながら自分の道具を片付けていた。



話しながらでも素早く動いて、直ぐに帰る用意を済ませた。


もう1つの準決勝の試合も少し気にはなったが、監督が今日は早く学校へ戻ると決めていたので、そのまま学校へ戻ることになった。




学校に戻ってくると、いつもよりも試合道具を丁寧に手入れをさせて、俺と監督はその間にこれからの予定について最後の打ち合わせをしていた。




学校に戻ってきてから1時間くらい道具の手入れをさせて、学食で選手たちはカレーを食べていた。




「お疲れさーん。」



「お、最上さんお疲れ様。その様子だと負けちゃった?」




「ふんっ!負けたわ!あの伊志嶺ってやつえぐかー。バックスクリーンに満塁ホームラン打たれたんさね。」



「梨花もホームラン2本打たれたからねー。桔梗も最上さんもまだまだあのレベルには追いつけなさそうだね。」




「今はそうかもしれん。やけど、来年には追い越しとるばい。橘はどうか知らんけど。」




友愛は九州大会準決勝まで進出して、今日の一試合目にうちが一回戦で負けた琉球波風と試合をしていた。



結果は7-5で負けたらしいが、2点差はこの大会で1番波風を苦しめた高校と言ってもいいかもしれない。



最上さんはヒットは打てなかったみたいだけど、2四球でチャンスメイクをしたらしい。



九州大会絶好調で4番に打順を上げてきた樹林さんが、この試合もスリーランを放ったらしい。




「でも、甲子園出場おめでとう。」



「例年ベスト4が進出してるだけで、確定じゃないから発表のある春になったら、また祝ってくれてもよかばい。」



「だね。正式に出たらまたおめでとうって言わせてもらうよ。」



「けど、白星の二年生にはマジでお世話になったさね。改めて東奈からもお礼を言っといてくれ。」



「分かった。」



「んじゃ。挨拶も済んだし、俺達は長崎に帰るわ。」




俺のお別れの挨拶も聞かずに、言いたいことだけ言うとその場を去っていった。


嵐のような人だと改めて思いながらも、試合に負けて落ち込んでいるはずなのに、強い人なんだと改めて思うのであった。




「東奈くーん!」



「青柳さん。今日はお疲れ様でした。どうかされましたか?」




「いや、私達は長崎に帰るから挨拶だけでもと思ってね。私は2年だから来年は合宿でも顔を合わせられないかもしれないから。」




そうだった。


来年は青柳さんには会えないかもしれないのか。


たまに連絡を取り合ったりするし、俺に好意的で色んなことに協力的な人なので、会えなくなるのは少し寂しくなる。




「だから、夏の甲子園に出てきて。私たちは来年の夏は絶対に落とさないよ。練習試合じゃなくて、本気で勝負してみたいよね。」




「ははは。そうですね。うちは死に物狂いでやらないといけないですけどね。出来ない約束はしない主義なので、約束は出来ませんが、チーム一丸となって努力します!」




「東奈くんらしい答えだね。けど、その言葉を聞けてよかった。それじゃまたね。」




青柳さんとがっちりと握手をして、彼女は手を振りながら友愛のバスへと乗り込んで行った。



すっかり友愛と白星は姉妹校と言っていいほど仲良くなっていた。


違う県なのでそもそも会うことも少ないし、公式戦でバチバチやり合う場面も九州大会か、甲子園くらいしかない。



白星メンバー総出で友愛のバスを見送ると、監督が選手たちをグランドに集めた。





「1年生は大会お疲れ様。2年生は九州大会で友愛のサポート本当にありがとう。友愛の監督コーチが物凄く感謝してたよ。」




「いえ!姉妹校として良き友人として当たり前のことです。」




大湊先輩が代表で返事しているが、美咲たちとは違うチームの大黒柱としてのどっしりとしたキャプテンシーを改めて感じる。




「けど、練習時間を削ってまでサポートしてもらったから本当にありがとうね。」




「それでお礼とは少し違うけど、来週の文化祭が終わるまでの1週間は秋休みにするからね。文化祭準備を楽しむのもよし、ストレス発散するのもよし。」




「まじで?」


「やったー!休みだー!」





「んんっ。」



監督がわざとらしく咳払いをすると、思わずはしゃいでいた選手たちは我に返って、ピシッと背筋を伸ばした。





「けど、その間に私と東奈くんと選手一人一人と三者面談をするから、順番を決めておいて。一日五人ずつくらいを予定してるから、その日だけはちゃんと予定を開けて部室に来て。」




「「はい!分かりました!」」




「それで元気が余ってる人だけでいいけど、今からちょっとしたテストしたい。もし今日受けなかったら、明日その為だけにグランドに集まってもらうけど。どうする?」




「「やりまーす!!」」




まぁ、1週間休みを貰えたのにわざわざ休みを潰すなんてことはしない。



まだ昼の2時くらいなので、選手たちはすぐにグランドに駆け出して行ってウォーミングアップを開始した。




「おい。七瀬はだめだぞ。先発したピッチャーがまたプレーするのは身体に優しくない。」




「えっ。てことは私はまた後日ってこと?」



「まぁそういうこと。」



「普通にやだよ!休みちゃんと欲しい!」




七瀬にしてはかなり聞き分けが悪い。


選手からすればやっぱり長い休みはそう簡単には貰えないので、一日でも長く自由な時間が欲しいのだろう。




「東奈くん。投げるって言っても今日は七瀬のピッチングをテストとして、遠投とか送球だけだから、本人がやりたいならやらせてあげていいよ。」




「うーん…。あんまり先発ピッチャーには賛成しかねますけど…。」




「七瀬、東奈くんはこう言ってるけど、ナイスピッチングしてたから特別に許してあげる。その代わりちゃんと肩は念入りにケアしてね。」




「ありがとうございます!」




選手たちは面談に使う為のテストを班ごとに別れて、テキパキと行っていた。



50m走、遠投、スイングスピード測定、球速測定などは選手たちがファールグランドを使ってやっていた。



グランド内では、実際にネットにボールを打ち返してから一塁までの到達点タイム、ベース一周のタイムを測った。



その後は選手たちに全てのポジションを守らせて、ローテーションでガンガンノックを打ちまくって、それと同時にランナーもやらせた。



エラーをしても気にせずにノックを続けるので、不慣れな内野や外野でミスしまくる選手たち。




「これで最後ね。お疲れ様ー。」



なんだかんだ全員のテストが終わるまでに3時間はかかった。


ほとんどノックで時間を使ってしまったけど、いいデータも取れたし俺は満足だった。




「簡単なテストとか言ってた割に、ランナーめっちゃキツかった…。」



「こんなに走らされるとは思わなかったよ…。」




「ま、明日から1週間休みなんだから少々キツくても文句言うんじゃない。」




選手たちはブーブー文句を言いながら、嬉しそうに部室に着替えに行った。


1週間休みは選手たちにとってもモチベーションの回復にもなるし、これまでの疲れを一旦抜いてもらおう。




「東奈くん。三者面談で完全な休みは上げられなくてごめんね。代わりに再来週に3日間はお休みあげるから安心して。」




「ありがとうございます。後は今日の結果をまとめて、守備位置の適正とか上手さは監督と自分で意見を照らし合わせしないといけませんね。」




「資料のまとめは私がするね。このプリントにこんな感じで、選手の守備の適性をまとめて私に頂戴。それを照らし合わせて話し合いしようか。」




「分かりました。こんな感じでまとめてきますね。」




監督から5枚のプリントを受け取り、家に帰ってすぐにこれを完成させないといけない。



日曜日なのに、家に帰ってまでやらないといけないことがあるのかと思うと、流石にテンションも下がる。



それでも新しい何かを行う前にはやることが沢山あることに気がついた。



俺は文化祭の準備よりも、冬に向けての準備に取り掛かることにした。




「ふー。俺の休みもまだ先みたいだ。」




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