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元天才選手の俺が女子高校野球部のコーチに!  作者: 柚沙
第4章 高校1年秋
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文化祭準備!



3回戦が終わり、その翌日。



「コーチ。おはよー。ねむねむ。」



「おはよう。氷はあんまり試合とか見てないと思ってたけど、ちゃんと見てたんやね。」



「えへへ。なにか新しい技術を見つけられるかもだもん。ぶい。」



氷はそこまで頭が良くないが、野球頭脳はいいほうだと思うし、選手を見る目があるしよく野球について勉強してきたことが分かる。



問題の点数的には4番目の点数を取っており、次の試合は余裕のスタメン入りとなった。



うちのクラスの中でスタメンに入れなかったのは、柳生だけであった。


自分は1年生大会で試合に出れないと思っていたのか、あんまり試合を見ていなかったみたいだ。


それでも11番目だったので惜しいといえば惜しかったのだが。



「ねぇねぇー。なら次の試合、氷はスタメンってことでいいの?」



「さぁ。どうだろう?それは次の試合のお楽しみにね。」



「けち。それじゃおやすみなさいっ。すやすや。」



「おいおい!後10分で…。」



「………zzz。」



氷は寝付きが良すぎるし、いつも眠たそうにしてる割には寝起きもいいのだ。


起こされるとすぐに起きるし、放っておいたらすぐに寝てしまう。


それは起きてないのかという問題になるが、本人がいうにはちゃんと起きてるし、すぐに寝るのは寝てもいいタイミングだと思い寝てるらしい。



俺は最初は何回も起こしたりしていたが、最近だと先生に起こせと目配せをされた時にしか起こさなくなった。



俺が起こすのが1番ちゃんと起きるという理由で、俺が起こさないといけなくなった。



先週くらいから文化祭で何をするかの話し合いや、今週はそれについての準備などをしないといけない。



うちのクラスは相談喫茶という、飲み物を出しながら様々な人の相談を受けるというそのままの企画になった。


うちのクラスは結構色んな部活に入ってる人が多く、来店してくれた人の相談に合わせてクラスメイトの中で適材適所の人が相談を受ける。



俺は女子野球部のコーチなので、下手すると引っ張りだこになる可能性も大いにある。


恋愛の話だと一切出番はないだろうが、その時に男子を指名されたら蓮司がどうにでもするだろう。



俺は蓮司のことをよく知っているので、全て蓮司に相談すれば何となく形にはなるだろうと思っていた。


俺がちょっとした相談は全て蓮司に相談するし、解決しなくても聞き上手なので話すだけで大分気持ちも楽になる。



そんな蓮司も軽音楽部で青春を謳歌してるみたいだった。


俺は蓮司が白星に一緒に来てくれたことを有難いといつも思っていた。


その反面申し訳ない気持ちもあったが、毎日楽しそうにしているので俺の気持ちも楽になっていた。




「おーい。龍ー。ちょっとこっち来て。」



蓮司のことを考えていると、丁度蓮司から呼ばれた。


うちのクラスは何故か席替えをしないので、廊下側の蓮司の席に行くと、当たり前のように円城寺と夏実もその話の輪に入ってきた。




「東奈さん、おはようございます。」


「おはよー!」



「おはよう。それで俺を呼んだってことは3人でなにか話し合いでもしてた?」




「そうなんだよ!文化祭で俺の演奏聞いて欲しいけど、クラスの出し物もあるじゃん?だから、俺の演奏の時間だけクラスの出し物止める方法ねぇかなって!」



「いや…無理やろ。俺と桔梗はその時間は絶対空けてもらうから、それだけで我慢したら?」



「まぁ2人には来て欲しいけどさー。緒花ちゃんも夏実ちゃんにも来て欲しいんだよ。」



そんな事言われてもなと思いつつも、蓮司にしてあげられることはそんなに無いので、誰かに相談出来ないか考えていた。



「みんなおはよ。話聞こえてたけど、大迫くんはクラスメイトにライブ見に来て欲しいんだよね?」



俺の隣に来たのは三海さんだった。

机に軽く腰掛ける姿も学園ドラマさながらというか、同じクラスメイトとは思えない。



「蓮司くんには少し酷かもだけど、ライブ見たいかを聞いてみて、行きたい人だけは行けるように調整してもらう?」




「お!いいね!けど、全員行きたいって言ったらどーすんの?」



「そうなったら15分間だけおやすみにしてもらって、みんなで一斉にダッシュして大迫くんの演奏聞いて戻る?」



三海さんは笑いながら少し無理そうな提案をしていた。


彼女からすれば、蓮司の演奏を見に行きたい人数がいい感じになると思っているようだった。



実際アンケートをしてるみと、クラスの半分は蓮司の演奏を聞きに行きたいという結果になった。


行きたくないって人はほとんどいなかったが、どっちでもいいという声が多かった。



結局、蓮司と仲のいい10人のクラスメイトが見に行けるように、三海さんと実行委員長が調整してくれたようだ。



俺と桔梗には気になることがあった。


桔梗とは中学校の時に私生活で遊ぶことはほとんどなかったが、蓮司と俺はよく遊んでいたし、桔梗と蓮司もたまに遊んだりしていたことを最近知った。



桔梗から誘っていたとは思えないが、蓮司も蓮司なりに桔梗との仲も取り持とうとしていたんだろう。




俺と桔梗の2人で蓮司の話をしていたことを思い出していた。




「そういえばさ、蓮司とカラオケ行ったことある?」



「え?どうだったかな…。そういう桔梗は行ったことあるん?」



「うぅん。ないよ。」



「なんか改めてそう言われると行ったことない気がするな…。」



中学生がどこかにお出かけ出来ることなんてあまりない。


ボーリングに行ったり、ゲームセンターに行ったり、スポーツしたり、家でゲームをしたり。



その中でもカラオケは時間帯によってはとても安価で遊べて、歌うのが嫌いじゃなければ行かない理由もない。



俺は野球を辞めて暇な時は、蓮司と2週間に1回は土日のどちらかで遊んでいた。



それなのに俺と蓮司はカラオケに行ったことがなく、しかも桔梗もカラオケに行ったことがないらしい。



俺と桔梗は確か1回か2回はカラオケに行ったことがあったはずだ。


こんなこと言うと怒られるかもしれないが、俺も桔梗もあまり歌が上手くはないと思う。



それでもいつもクールな桔梗は歌を歌うのが好きなのか、上手くないなりに楽しく歌っている姿をよく覚えている。




「蓮司って軽音楽部に入ったけど、歌声聞いたこともないし、ベースとかギターでボーカルはしてないのかな?」



「いや、歌って演奏してがモットーって言ってたし、ボーカル兼ギターとかしてんじゃない?」




「「わかんないね。」」



俺たちは本人に聞けばいいのになぜか蓮司に聞けないでいた。


だからこそ、俺と桔梗は蓮司の軽音楽部での演奏を心待ちにしていた。




「蓮司の演奏が下手でも努力は褒めてあげようね。」



「そうだね。桔梗が蓮司に気を使うって珍しいね?」



「龍が迷ってた時に背中を押したって聞いてからは、蓮司は本当に龍のこととか私の事も本気で心配してくれてるんだって思って。」



確かに蓮司は人当たりがいいし、見ようによっては八方美人に見える。


俺は同性だし、中学校の時は別にクラスの中心でもなければ女子にモテてるわけでも無い。



蓮司は持ち前の明るさでいつもクラスの中心にいて、別に俺と仲良くしなくても学校生活は充実していた。



それでも勉強をして白星に来て、軽音楽部で楽しそうにしている。


全ては俺の為というのは流石に自意識過剰だとは思うが、俺が蓮司の立場なら俺は蓮司みたいにはしてあげられなかっただろう。



「どうした?ボケっとして。」



「あぁ。ちょっと考え事してて。」



「そうか。野球以外のことならなんでも相談してきなよ。」




蓮司は親指を立ててニヤリと笑っていた。


いかにも話を聞かなそうな態度の蓮司を無視して自分の席に戻った。



俺は2週間後の文化祭の楽しみがさらに増えることになった。




「東奈くん。和水ちゃんに話をしてみたけど、文化祭には来てみたいって言ってたよ。対決のことも思ったよりも前向きみたいだったかな?」



「ほんとに?それなら良かったよ。」



「多分和水ちゃんから連絡来ると思う。勝負の詳細が聞きたいんじゃないかな?」



上木さんもやるからには勝つつもりで来るんだろうか?


投球技術なら紫扇さんの方が上木さんよりも何枚も上手で、打撃となると紫扇さんよりも上木さんの方が何枚か上手だろう。



上木さんは左ピッチャーで、クローズスタンスの右打ちの紫扇さんとは普通に考えると相性が良くないはず。



逆に紫扇さんはほぼサイドスローの左投げで、左打ちの上木さんは相当苦戦するだろう。



打つ方でも投げる方でも完全な左キラーの紫扇さんが勝ちそうな気もするが、俺が久しぶりに見た姉の姿を感じさせる上木さんがあっさり負けるとも思えない。



1番最近でいえば穂里が群を抜いて才能があると思ったが、穂里は姉を一切目指してないせいなのか、独自の感覚を持ったプレイヤーになる気がする。



成長していけばいくほど姉に似てくるような気もしなくはないが、今のところはその兆候はなく、上木さんの方が姉に似たような選手になるだろう。




「私もちょっと楽しみなんだよね。紫扇さんって人がどんな子か。」



「いい子だよ。実力も確かだけど、曲がったことを許さない強い意志を持ったプレイヤーじゃないかな?」



「へー。なら大迫くんの歌と2人の勝負も楽しみだね。」




高校に入って初めての文化祭を楽しみにしていたが、それよりも前に小濠高校との準々決勝が待っている。


勝ち進むほど緊張感があって心の余裕が無くなる。



気のせいなのか、試合前は食欲もあまりないし、選手の成長とかをガン無視して桔梗とかスタメンの選手を使ってしまおうと思ってしまう。



それでも選手たちには俺の信念がどうだとか言ってしまっているので、ここで全てを放棄することは出来ない。



俺にはこの大会の目標がある。

それは準決勝まで進出することだ。


俺の予定なら準決勝でいい対決が待っているはず。



ここまで柳生を使ってこなかったのは、七瀬に経験を積ませるという意味もあるけど、準決勝では最初から最後まで固定で使う予定でいる。



俺の予定通りに行けばだけど、準決勝の相手は柳生にとっては重要な意味を持つ試合になる。



俺が準決勝の相手になると予想している相手は福岡国際付属高校。


元々うちに特待が決まっていた、柳生の双子の姉の柳生結衣と多賀谷鈴音が在籍している高校だ。



柳生の姉が登板してくるかは分からないが、この大会では背番号1をつけているので十分登板してくる可能性はある。



ずっとボールを受けてきた柳生が、姉を攻略するにはどんなやり方をするのかが鍵になるだろう。


俺が下手に映像で分析するよりも、柳生が全員に説明した方がいい結果になりそうな予感もしていた。



それもこれも次の試合に勝たないといけないし、福岡国際も準々決勝で負ける可能性だって残っている。



先のことばかり考えていても仕方ないなと思いながら、今目の前にある課題からこなしていくことにした。



俺は昨日出した問題の成績上位9人を、どうやってポジションに振り分けるかを考えないといけない。




「これで行くか。」



テスト結果とスタメン。



1番.四条(二)1位

2番.江波(中)2位

3番.時任(右)4位

4番.円城寺(三)5位

5番.月成(遊)6位

6番.七瀬(捕)9位

7番.西(投)8位

8番.青島(一)7位

9番.奈良原(左)10位



3位は桔梗だったが、準々決勝でも俺はスタメンで使わないことに決めた。


これが舐めてるといえば舐めてるかもしれないが、桔梗には3位だったこととスタメンから外すことは今日の登校のうちに伝えておいた。



その代わりに終盤でのチャンスでは絶対に代打として出すと約束して、準決勝ではスタメンで使うことも伝えておいた。




「後は選手達への説明と試合をやってみるだけだな。」




俺はスタメンを決めると、授業中にも関わらず満足して野球ノートを閉じて、そのついでに目も閉じてしまった。



その後に氷と共に怒られたことは言うまでもなかった。




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