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元天才選手の俺が女子高校野球部のコーチに!  作者: 柚沙
第4章 高校1年秋
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予想外!



監督と選手たちが球場を後してから何分くらい経ったんだろうか?


俺は友愛の試合会場を近くにいた関係者に聞くことにした。


ここから俺がノンストップで走って1時間くらいの距離にある試合球場だった。



今から行って友愛の試合を見ながらでも考えようと思い、軽く準備運動をしていた。


準備運動をしていて思うことがあった。


もし監督がそうして欲しかったら、俺の事を置いていったりするだろうか?


そう思うと行っても仕方ないという気持ちになり、今ちょうど始まった城西高校と長崎県の準優勝校の諫早商業高校の試合を見ていた。



城西の試合は見ておくのも悪くないなと思いながらも、公式戦で対戦するのは早くても春の大会くらいだろう。



半年で大きく成長する選手も多いので、今この試合を見ていても来年のスタメンが全然違うなんてことはよくあるし、それは白星にも言えることだ。




なんとなく3回まで試合を眺めていたが、城西と諫早商業の2校の実力なら、白星でもまだ勝てる隙はいくつかありそうだった。



そう考えると、やっぱり今日当たった波風高校の強さはずば抜けていた。


たらればと分かっていても考えずにはいられない。


今さっきのミーティングという名の口喧嘩が、思ったよりも俺の心に突き刺さっていた。



決して俺が好き放題言えた訳じゃなかった。


選手同士がいがみ合っているところに、唯一の男の俺が敵として認識されると、ほぼ全員から俺にも責任があると押し付けられそうになった。



あの時は少しカッとなって言い返したりもしたが、今考えると仲間を攻撃するよりも俺を攻撃した方が、丸く収まると思っていたのかもしれない。




それでも今になって、あの時の敵視する目線や言葉が胸に突き刺さってきた。


もし今日の試合勝てればこんなことにはならなかったと、いつもは思わないようなことを思ってしまっていた。



「はぁ...。チームが壊れなかっただけまだいいか。」



どんなことでチームがバラバラになるかは分からない。


口喧嘩でそうなっていた可能性があったと考えると、俺が責められたことにも意味があると諦めるしかなかった。




「龍兄。おひさー。」

「龍兄ちゃん!会いたかったよー!」



「え?光瑠?穂里まで。なんでこんなとこに?」



「え?何も聞いてないと?」


「龍兄ちゃん!なんでもないから気にしないで!」



光瑠は何か言いたげだったが、穂里は何やら隠したいようだ。


隠したいことがあるならわざわざ聞くのも野暮だと思って、それ以上は何も聞き返さなかった。



「光瑠は城西に特待で行けてよかったな。一応白星でも特待生としても迎え入れれるけどどうする?」



「はぁ?城西以外に行く気なんてないし。今日投げてた西さんと私はタイプが似てるし、城西の方がチャンスあると思う。」




「確かにそれはそうかもな。センスのありそうな選手は多いけど、全体的にまとまってるからこそ、光瑠みたいな豪快なパワーピッチャーは早めにチャンス貰えると思う。」




光瑠も伊達に姉の光を崇拝しているだけはある。


自分の目で相手を判断できるのも重要な能力だ。


今のところは穂里はそういった能力が乏しく、経験を積んでいくしかない。



「そういえば、白星の選手たちバスに乗ってたけど置いてかれた?」



「はは。半分当たってるかな。」



俺は2人に事の経緯を話してあげた。


光瑠は相変わらず話半分に俺の話を聞いていて、穂里は興味津々といった様子で俺の話を聞いてくれていた。




「そうなんだ!だけど、龍兄ちゃんなら余裕出来るから大丈夫でしょー。明日その試合見に行ってもいいかな?」



「まぁ少しは参考になるかな?けど、穂里は練習とか試合は大丈夫?」



「やっと入れるチーム決まったんだよー。それが来週からだから明日は大丈夫!」




「私は行かんよ!相手が城西でも無いみたいだし。」



「別にいいもーん。1人で龍兄ちゃんのこと応援しに行くから!」




光瑠が付き合えないと言うと少し拗ねた表情をしていた。


そんな様子の穂里を見て、諦めたような表情をして一緒に行ってあげると仕方なく答えていた。



「おばさんも来てるんだよね?この試合終わったら家まで送って貰えるかな?」



「お昼ご飯のつもりだったから、龍兄ちゃんも一緒にご飯食べに行こうー!」




この後、試合を見ながら穂里に試合の流れやパターン毎の守備シフトやリードを永遠と説明していた。



穂里はそれを必死に可愛いメモ帳に書き込みながら、隣では俺たちの話を聞きながら静かに光瑠が試合を見ていた。




「城西が粘り勝ちだったね。」




城西が前半に取った5点を最終回まで守りきった形での勝利となった。


諫早商業の序盤に点差を離されながらも、最後まで諦めずにコツコツと点を返していたけど追いつけなかった。




「2人とも素直な感想でこの試合どうだった?」



「なら私からね。お互いにいいチームやと思う。やけど、女子高校野球だなって感じ?」



光瑠はお互いにまとまったチームを評価しながらも、やや物足りなさを感じているようだ。



光瑠は自分の目標である城西の試合を見ても贔屓することなく、素直な気持ちで俺の問いに答えてくれた。




「私も光瑠ちゃんとほぼ一緒ー。いい試合だと思うけど、ドキドキ出来るような対決とかなかったし。」



俺含めて3人とも同じような感想を抱いていたようだ。


どちらのチームももちろんまとまっていて、チームとしての実力は高い。


それでも突出した選手がいないので、1試合目の梨花と伊志嶺との対決のようなものは無い。



それは観客としての感想なので、突出した選手がいなくても試合に勝てればそれが一番正しいチーム作りなのだろう。



城西には目立った選手はいないが、来年は光瑠が入学する。


早ければ1年からマウンドに上がることもあるだろうし、受かったかどうか分からないが、両打ちの強打者の西郷天音さんも入る可能性もある。



その前にあのド派手な髪型を直さないと入学はさせて貰えないだろう。



俺も一応はスカウトしたので、落ちてて欲しいとは思っていなかったけど、白星高校に来てくれたらいいなと思っていた。



城西の試合も終わり、おばさんが車で迎えに来てくれたので4人でお昼ご飯を食べに行った。



末っ子の綾人とも会いたかったが、次に会う時を楽しみにすることにした。



そのまま4人で俺の家に帰ると、穂里が俺に隠していたことが明らかになった。




「は!?穂里と一緒にここに住むん!?」




「えへへー。隠しててごめんね?驚かせたくって。」



可愛らしい表情でおどけていたが、こんな重要なことを隠された身にもなって欲しいと思っていた。



この後はおばさんと母から事の経緯を説明されることになった。



本気で野球を志して、そのために俺からの指導をどうしても受けたいという穂里の提案があったらしい。



おばさんもすぐにはOKしなかったらしいが、俺が夏に家に行ってから毎日のようにお願いされて、あまりの熱意に折れてしまったらしい。



俺の通っていた中学に転校して、入るチームもやっと見つけたみたいだ。




「だからお願いっ!家に帰ってきたら自主練毎日してるんだよね?龍兄ちゃんのプレー見るだけでもいいから!」




穂里は俺の目の前に膝をついて、そのまま深々と頭を下げて誠心誠意のお願いをしてきた。



従兄妹から土下座までしてお願いされて、周りには3人の女の人に囲まれて逃げ場も断る隙さえもなかった。




「穂里。卑怯だぞ。」



「勝負に勝つ為なら有効な手を使うのがキャッチャーなんだよ?」



光瑠に言われたら文句の一つも言ったかもしれない。


反抗されたことのない穂里にそう言われると、納得出来なかった俺も成長したんだなと納得せざるを得なかった。



「はぁ。そう言われたら返す言葉がないね。」



「えへへ。私の勝ちってことで!」




「毎日は教えられないかもだけど、自主練はするからその時に少しずつ教えていくね。それを真似してみて、慣れてきたら次って感じでいいかな?」



「私は教えてくれるならなんでもいいよ!その代わりに龍兄ちゃんのお手伝いもするし、なにか手助け出来ることがあったらなんでも言ってね!」



「それは効率よくなるし助かるよ。手助けって言ってもなぁ。」




俺は穂里に課題にもなって、俺の手助けになるようなことを考えていた。



そんな都合のいい課題なんて、簡単に思い浮かぶはずないと考えるのをやめようとした。



「ん…?あっ!これだ!」



俺の目の前に毎日書いている野球ノートがあった。


それを見て俺自身が物凄く助かることを思いついた。




「いいこと思いついた。これから試合するであろう相手選手のことをノートに書いてきてくれ。」




「それって私の野球の視野を広げるためにってこと?」




「それも一応の課題にはなるけど、俺も来年スカウトしないといけないから、穂里が戦った選手の情報をまとめてくれたらスカウトがかなり楽になるんだよ。」




「あー!なるほど!それは私にしか出来ないし、龍兄ちゃんの役に立てそうだねっ。」



「頼めるか?どんな感想でもまとめ方でもいいから、出来るだけこと細かな情報でも書いてくれると助かる。それと穂里が一緒に野球をしたいと思える選手がいたら、その選手のことは必ずスカウトしに行くよ。」




「えぇ!うーん。でも…。」



「いいやない?穂里は他のプレイヤーなんて興味無さそうやし、責任を持たせれば真剣にやると思うし。」



穂里の背中を押したのは姉の光瑠だった。

妹のことは嫉妬の対象で、心から好きだと言えないと言ってはいたが、それでも妹の世話は焼いてしまうようだ。




「わかった!光瑠ちゃんもそう言ってくれたし頑張る!」



「詳しい話はまた落ち着いてからしよう。」




こうして我が家に新しい家族が増えることになった?


姉と同じく天真爛漫だが、俺の言うことは聞いてくれるので振り回されることはないだろうと思いつつも、これから大変になる予感もしていた。



これからのことや予定を長々と話していると、もうかなり遅い時間になったので明日の試合のために休むことにした。



光瑠と穂里は姉の部屋で2人仲良くベットで寝るようだ。


俺も自分の部屋に戻り、今日あった沢山のことを思い出していた。



あまりにも思い出すことが多すぎて、途中で考えることをやめてすぐに寝てしまうのであった。



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