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元天才選手の俺が女子高校野球部のコーチに!  作者: 柚沙
第4章 高校1年秋
131/280

VS筑紫野女学院②!



試合が始まった。


今日の試合のキーマンの海崎先輩がマウンドに上がった。



スタメンの選手たち全員が海崎先輩のことをじっと見つめていた。



うちと竹葉との一回戦をチェック出来ていなかったんだろう。


相手の選手たちは海崎先輩のフォームを凝視し過ぎているし、なによりも相手の監督が必死に選手たちに何かを伝えようとしている。




多分、アンダースローの打ち方を教えているんだろうが、アドバイスしただけで簡単に打てるようになるとも思えない。




俺が思った通り、海崎先輩にあんまりタイミングが合わずに初回はあっさりと終わらせてマウンドを降りてきた。



1回戦の竹葉は、夏の大会で海崎先輩と対戦していたし、どんな球を投げるとかアンダースローだということが事前にわかっていた。



それとプラスで柳生が緊張していて、リードがバタバタしていたことを考えると、あの試合の海崎先輩は点を取られたが、そんなに悪いピッチングではなかった。




「柳生ー!ちょっと来てー。」




「はい。なにかあった?」




「あんまりリードのこととか言いたくないけど、今日は負けられないからアドバイスするけど、相手は慣れようとしてボールを見てくるだろうから、1巡目は打たれてもいいからストライク先行で勝負して。」




「海崎先輩に慣れさせないように強気でいっていいってことね?」




「そういうこと。よろしくね。」




今日の試合は選手の成長とか言ってられない。


俺はコーチとして選手の成長がいちばん重要だけど、九州大会進出となれば高校の名前も売れるし、白星高校に入りたいという新入生も増えるだろう。




結構自信を持って組んだ打線だったが、かのんはファーストファールフライ、氷もサードファールフライ、桔梗がサードゴロでチェンジになった。




「テンポよく抑えていこう!」




「「おぉー!!」」



珍しく監督が選手たちに声をかけていた。

選手たちはキビキビとグランドに駆け足で出かけていく。



2回も海崎先輩は柳生の強気のリードに引っ張られるように、ストライクをどんどん取りにいっていた。



ギリギリを狙わずに、アウトコース中心に変化球を投げ込んで、あっさりとスリーアウトをとった。




この前の試合はスライダーがよかったが、今日はどのボールもそこそこよく、コントロールもバラついていない。



2回を投げて22球で、この調子で行けば7回まではいけそうだ。


相手はまだ海崎先輩のアンダースローに全然慣れていない。



1巡目は多分どうにでもなるだろうが、問題は2巡目になってからどれだけ抑えられるかが重要だ。



2巡目も踏ん張れれば、3巡目は海崎先輩の調子を見て梨花に交代することもできる。




「海崎先輩、今日は長いイニングいけそうですね。」



「今日は調子いいかも。エースナンバーもらってるんだから、私のピッチングでこの試合に勝って九州大会に出たいんだよ。」




「俺もそのために今日は色々と指示出したりしますよ。」




「私は打つ方は全然だから、みんなに点とってもらうしかないからね…。だから、死ぬ気で抑えるよ。」




海崎先輩はタオルで汗を拭いながら、俺の隣で選手を応援していた。



2回は大湊先輩からの攻撃だった。


試合前に4番で試合に出るのは緊張するかと聞いたら、野球やってきて4番だけは打ったことがないと言っていた。




あまり1年生達には知られていないが、大湊先輩は元々ピッチャーで、中学生時代には今日5番を打ってる遠山先輩と同じチームだったらしい。



今の2年生にはS特待がいない。


海崎先輩、瀧上先輩、剣崎先輩がA特待で、大湊先輩と遠山先輩はB特待らしい。



遠山先輩はあんまり人と話さずにいつも黙々と練習しているので、大湊先輩もわざわざ話しかけたりしないらしい。



だからか、話したところを見た事ないという話になっていた。



だが、2人はよく携帯で夜まで連絡を取り合って会話をしているみたいだ。


野球のことや私生活のことを携帯でやり取りしているのを、知らない1年からは不仲説が出ている。




投手から野手にコンバートしたときに、打撃の基本を教えてあげたのは監督と遠山先輩らしい。



だからこそ大湊先輩は遠山先輩のことをとても気にしているし、それを知られたくないから本人に言わずに、影で遠山先輩のことを支えようとしていた。




「甘いっ!」




カキィン!!



大湊先輩は甘く入ってきたカーブを狙い打ちして、ライト前に鋭い当たりを飛ばした。



大湊先輩は速い直球よりも緩いカーブやチェンジアップを打つのが上手い。



足をあまり上げずにすり足で打つのと、ステップが小さくギリギリまで軸足に体重を残して打つので、緩い変化球をしっかりと待って打つことが出来る。




逆に、相手が結構なスピードのストレート持っている場合は振り遅れることもある。


頻度が多いわけではないが、変化球に対応したいという気持ちがあるのかストレートの対応が曖昧になる癖もあった。




ランナー1塁に大湊先輩が出た。


大湊先輩は梨花とほぼ同じくらいの足の速さで、チームで盗塁を狙える選手の1人だ。



今日の試合は、無理にでも走ってランナーを進めて、1点ずつ重ねてジリジリとリードを広げる。



遠山先輩は監督のサインを確認している。

監督は盗塁のサインを出していない。



かのんと大湊先輩と瀧上先輩は、グリーンライトが出てるので、いける時は早めに早めに仕掛けて欲しい。



バッターは走るのを待ちすぎても、カウントが悪くなってしまって、結果的にヒットを打つ確率が低くなってしまう。



遠山先輩を5番にしたのは、元々消極的なバッターでツーストライクからでも自分のバッティングが出来る。



2人は信頼関係があるからこそ、大湊先輩がスタートしなくても、遠山先輩はギリギリ走るまで待つだろう。




1球目は走る様子もなく、バッテリーもあまり警戒していない?


大湊先輩が4番だからか、好打俊足タイプというのを分かっていない可能性もある。



でも、ポジションはショートだから足が遅いわけが無い。



あまり無警戒だったので、大湊先輩はさっきよりもジリジリとリードをとって、2球目にスタートを切ってきた。



遠山先輩はスタートを切ったのを見て、絶妙なタイミングでスイングしてキャッチャーの邪魔をした。



キャッチャーはそれをやや嫌がりながら、キャッチしてセカンドに送球。




「セーフ!」




警戒されてなかったのか、あっさりと盗塁を決めて2塁へ到達。



カウントは1-1。




流石に大湊先輩はグリーンライトとはいえ、三盗をしようという素振りは見えない。



遠山先輩は秋季大会で2試合とも代打で出場している。


まだヒットこそ出ていないが、犠牲フライと四球を選んでいる。



本当はスタメンで多い打席を与えて、その3打席で1本打つような安定した打者なのだ。



本当は代打の切り札みたいな選手がいるといいが、そう都合よく選手が湧いてくるなんてことはない。




3球目、大湊先輩はピッチャーが投げてからかなり遅れてスタートを切った。



セカンドの大湊先輩から見て、甘いコースに来たんだろう。


遠山先輩がスイングすると分かっていて、遅めのスタートを切ったことで、ヒットエンドランの形になりそうだ。




遠山先輩はスタートをしたのを目の端で確認したのか、それとは関係なく甘く入ってきたストレートを狙いすましたようにライト方向へ流し打ち。





「やった!!」




セカンドが飛びつくが、打球はライト前に抜ける。



あらかじめ走っていた大湊先輩は3塁を回ってホームへ。




ライトはバックホームをしようとするが、大湊先輩がかなりホームに近い位置にいたのを見て、中継にボールを返球した。




先制点は白星だった。


秋季大会初スタメンの遠山先輩のバットで先制点を叩き出した。



一塁上で嬉しそうにしてはいる。



一塁ランナーコーチから話をされているが、ペコペコ頭を下げているだけで会話になっていなさそうだ。



6番の月成は何球かファールを打つと、最後のスライダーを打ち損じてサードゴロになった。



かなり打球が死んでいたので、1塁ランナーの遠山先輩を2塁に進める進塁打になった。



最低限の結果でベンチに帰ってきた月成は、バツの悪そうな顔をしている。




「ごめんね。打てなかったよ。」




「進塁打になったんだから、月成は普通にしていいのに。ゲッツーとかなら分かるけど、あんまり深刻な顔をしてるとみんなも気を使うぞ?」




「う、うん。」




「スタメンに選ばれてるんだから、自信持って堂々としてないと目指す自分にはなれないよ?」




「そ、そうだよね!気合い入れていくよ!」



「そうだよ。月成はよくやってると思ってるし、私が投げてる時は胸張ってプレーしたらいいよ。」




「はい!海崎先輩は調子よさそうですね。後ろで守ってて安定感感じますよ!」




「そう?このまま行けるように頑張るよ。」




そういうと隣にいる海崎先輩は近くのヘルメットを取って、銀色の軽く短めのバットを持って一応打席に入る用意をしている。



ベンチの一番前に陣取って打席に入っている瀧上先輩を応援していた。



ワンアウト2塁のチャンスで、瀧上先輩はいつものように大きなスイングで空振りしていた。



守備が上手く、盗塁走塁技術もいいものがあるのに、打撃はかなり荒い瀧上先輩。




1球目のカーブを豪快に空振りして、2球目の同じカーブを空振り。



カーブを狙っているようなスイングをしているが、ほんの少しだけ後ろから投げるトスバッティングの成果が出てる。




ギリギリまで狙っていないボールでも、しっかりと体重を残してスイング出来ている。




キャッチャーから見れば、タイミングが合っていないように見えていないかもしれない。


俺はカーブにタイミングがあっていないのが分かっているが、そこに気づけるかどうかは相手次第だが…。




3球目は1球外にストレートを外して、バッテリーは海崎先輩の様子を見たが、大きく外しすぎて特に反応してる様子はない。




4球目。




3度目のカーブを投げてきた。


相手はタイミングが合ってないのがわかっていたのか、決め球に緩いカーブを投げてきた。




ここで一枚上手だったのは瀧上先輩だった。


それまではスライダーかストレートのやや速い球を待っていたみたいだったが、この4球目は狙いを変えてきた。




いつもよりも始動が遅く、カーブ一点狙いのタイミングのとり方をしてきた。



いいコースに決まるカーブだが、この打席はカーブ連投してきていたせいか、瀧上先輩は完璧に捉えて、右中間よりに鋭いライナー性の打球を放った。




センターはそれに反応して、落下地点へ一直線で打球を追っている。



足は結構速いが、瀧上先輩のように打った瞬間に判断できる能力はなかったし、打球をチラチラと確認するのではなく、かなり凝視しながら走っている。




横を見ながら打球を追うのと、打球がここに落ちてくると思って一直線に走るのではスピードがかなり変わってくる。



その数十cm、数cmが勝敗を分ける。




センターは打球にギリギリ追いつきそうだけど、どうだろうか?




「抜けてーー!!」




ボールはセンターのグラブを避け、一番深いところまで転々としている。



2塁ランナーの遠山先輩は抜けたのを確認して、ゆったりと歩いてホームに帰ってきた。



それとは対照的に瀧上先輩は、最初からトップスピードでサードまで行ってやろうという勢いだ。



サードのランナーコーチは腕を回し、瀧上先輩はそれを見てセカンドベースを蹴ってサードに向かう。



ランナーコーチはよく見ていた。

ライトのカバーがやや遅く、ボールの処理ももたついている。




「セーフ!」




瀧上先輩が滑り込んでから、3塁へボールが返ってくる。



スライディングをして、すぐに立ち上がって軽くガッツポーズをしていた。



肘のレガースを外しながら、3塁のランナーコーチと少し話をしていた。




「舞さんナイスバッティングー!」




2-0になって、しかもまだワンアウト3塁の大チャンスだ。



柳生は一塁側のベンチをじっと見つめている。



ここはスクイズの可能性が高い。


ヒットやランナーがホームに帰ってこれる犠牲フライよりも、確実に転がして1点を入れられるスクイズが普通だろう。




相手チームもこちらのベンチを見ているが、監督はサインを出す様子がない。



普通この場面ならスクイズするにしても、しないにしてもサインは出す。




その場面でサインを出さないのは、相手もかなり警戒するだろう。


相手からすれば、本当にノーサインでヒッティングしてくるのか、それとも分からないところでスクイズのサインが出ているのか。




ヒッティングするにしても、サインは出す。


サインさえ出しておけば、相手がスクイズ警戒で外したりすれば、ボール先行になって打者有利にもなる。




そうなると相手が考えるのは、何球目かにスクイズをするか決めているのか、それともカウントによってスクイズしてくるか。




こういうのは野球とは別の心理戦になってくる。




1球目。


俺が相手の立場ならここが1番怪しい気がする。


初球は警戒されるが、バントができるコースにボールが来ればギリギリのところを狙ってバント出来る。



失敗してもワンストライクになるだけだし、バント失敗したリスクは少ない。



だが、それは守ってる側も同じことが言える。


初球はまず様子見で外してもいい。

とりあえずワンボールになるだけだし、相手の出方を見るには仕方ない。




「ボール!」




やっばり初球はスクイズ警戒で外してきてた。


柳生はスクイズの構えもなく、あっさりとボールを見逃した。



サードランナーの瀧上先輩は少しだけ走るぞという格好だけは見せているが、スクイズをするはずの柳生からその様子はない。



2球目を投げるまでに柳生はこちらを見ているが、監督はサインを出さない。




ワンアウトランナー3塁だから、スクイズ警戒でカウントがかなり悪くなれば歩かせてもいいが、今の打順は8番だ。



下手にランナーを出して上位打線に回して、長打を打たれると1点どころの話ではなくなる。




それなら警戒しつつ勝負した方が大量失点は防げる。




2球目。



ランナーがスタートして、柳生はスクイズの構えをした。




「よしっ!」




バッテリーは2球連続ウエストボールを投げ、バッターの届かないところに投げてきた。



だが、柳生もバットを引いて、瀧上先輩も途中で止まって急いでサードベースに戻る。




キャッチャーは3塁へ送球するが、戻るのが早く3塁はセーフ。



ツーボールになるとバッテリーはかなり厳しい。



ここでもう1回ウエストしてきて、こちらがスクイズして来なければスリーボールになる。


そうなればほぼ歩かせる以外に選択肢が無くなる。



ストライクを取りに来てもいいが、柳生はストレートだけに絞ってスイングしてくるだろう。



そこまで打てない柳生でも甘いストレートが来るとわかっていれば、結構打てる可能性も高いだろう。




3球目。




バッテリーは諦めてストライクゾーンで勝負してきた。


歩かせてさらにランナーを増やすのは嫌だったのだろう。




柳生はスクイズの構え。

それをみて瀧上先輩は遅めのスタートを切ってきた。



サインは本当に出ていなかった。


だが、作戦では柳生がバッターの時で、ランナーが3塁の時で、満塁じゃない場合はストライクが来たらセフティースクイズをする。




スクイズには大きくわけて2種類ある。



普通のスクイズは、スーサイドスクイズと呼ばれる。


3塁ランナーがピッチャーが投げる瞬間にホームに突っ込んでくる。



セーフティスクイズとは、バッターがバントした瞬間にホームに突っ込んでくる。




スーサイドスクイズは転がせばまずアウトにすることは出来ない。


欠点があるとすれば、バッターが転がせずフライをあげたらダブルプレーを取られる。



もうひとつはバットに当たらない所に投げられると、サードランナーは挟まれたらほぼアウトになる。




セーフティスクイズは名前の通り、打者がバントを行ったあとに、三塁走者がスタートをするスクイズのこという。


打者は送りバントと同じで、確実にバントできる投球を狙う。



三塁走者はそのバントをみてから、ホームへ帰ってこれるかを判断する。



スーサイドスクイズと比してリスクが低く安全(セーフティ)であることからこう呼ばれる。






柳生がやろうとしてるセーフティスクイズだが、瀧上先輩はスタートがややはや過ぎるが、バントの上手い柳生ならどうにかなるだろう。




セーフティスクイズは転がしてもホームでアウトになることもあるし、無理だとサードランナーは走ってこないので、バントしても点にならないこともある。




だから少し早めに瀧上先輩は柳生を信じてスタートしたんだろう。




バントはサード方向にきっちりと転がしてきた。



ピッチャーとサードがホームでアウトにしようと猛チャージしてくる。



サードがボールを捕ってホームにトスするが、瀧上先輩が上手くキャッチャーのタッチを避けた。



すぐさまキャッチャーはファーストに送球。




「アウト!!」




ファーストはギリギリアウトだったが、スクイズは成功してもう一点追加した。




「愛衣ちん!ナイススクイズだったよ!」



「ありがと。今回大会バントしかしてないけどね。」




確かにその通りだけど、1度もバント失敗していないのは役割としてはかなりしっかりとこなせている。




続く9番の海崎先輩は2球目を詰まらされてショートゴロでスリーアウト。




「よしっ!この回3点取ったぞ!まだまだガンガン攻めて、しっかりと守っていくぞ!」




「「おおー!」」




3点先取して、選手たちはいい流れのまま3回表の守備にベンチを飛び出していった。




「これで3試合連続先制点だね。今日は1点じゃなくて3点だしいい感じだね。」




「確かにそうですね。ここまで先制点取れてるから有利に試合運び出来てますね。けど、試合後半次第でしょうね。」




俺も監督も多分先制すると思っていた。


うちは7回まではどこからでも点を入れられるだろう。



梨花の対策をしてきたであろう筑紫野女学院に慣れるまで、海崎先輩がどれだけ長く投げられるか。



梨花は確かにいい能力を持っているが、1週間かなり対策してきているだろうから、出来るだけ海崎先輩に長いイニングを投げてもらいたい。




カキンッ!




「オラーイ!」




月成が相手の打ち損じたピッチャーフライを先導して取りに行く。



海崎先輩はその場から少し離れて月成に任せた。




「アウト!スリーアウトチェンジ!」




ピッチャーは小フライ以外の高く上がったフライは捕球しない。


内野手は守備練習をしっかりとこなしているので、あんまりフライの練習をしない投手の代わりにボールを捕りにいく。




ピッチャーも上手い選手はいるが、ピッチャー用のグラブで捕るよりも内野手用のグラブの方がいい。



エラーすることはあまりないだろうが、こういうプレーは横着していると、いずれエラーしたりする。



練習試合ならいいが、甲子園のサヨナラの場面でエラーなんて考えたくもない。




海崎先輩は3回完全試合中で、投球数も34球と抑えられているし、向こうがアンダースローに慣れるために消極的なのが、こちらにとってはかなり追い風になっている。




3回裏は1番からの好打順だった。




かのんは4球目連続でファールを打ったあとに、最後に高めのボール球を振らされて空振り三振。


初戦の3打席目から合わせて8打席ノーヒットで、この前の試合も今日の試合もあんまり調子が良さそうではない。




氷がカーブを見極めて、続く低めのスライダーを流し打ちしてレフト前ヒット。



桔梗が打席に入り、今日いい打撃を見せている4番から後ろの2年生に繋ごうという気持ちが伝わってきた。




3球目のアウトコースに逃げていくスライダーを完璧に捉えた。



鋭いライナーだったが、ファーストが構えているグラブの中に飛び込んだ。




氷は一瞬帰塁するのが遅れ、そのままファーストがベースを踏んでダブルプレーでチェンジ。




桔梗は打った瞬間アウトになったので、ホームベース付近でヘルメットを脱いで、落ち着いた表情でバッティング用の手袋を外していた。




桔梗も2回戦目からヒットが出ていないが、桔梗は打てない時でも簡単に三振せずに、球数を投げさせたり、少しでもチームのためになるバッティングをしている。




しかも、高校に入ってから練習試合と公式戦エラー0で守備の上手さも光っている。




そして、ここから中盤戦に入る。




海崎先輩の球筋は1打席目に相手にじっくりと見られている。


ここからは海崎先輩が相手を上回るかどうかだ。





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