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元天才選手の俺が女子高校野球部のコーチに!  作者: 柚沙
第1章中学生時代
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無理難題!



俺は今女子高の校門の前に立っている。

普通に気まずい。


白星へ来て欲しいといわれて時間通りに来たのはよかったが、こんな時に限って少し遅れるという俺にとっては地獄のメッセージが届いた。


俺はパッと見たら高校1年くらいには見えなくもない。

身長188cm、体重82kgの恵まれた体格だったため、顔の少し幼さを除けば中学生には見えないだろう。


彼女を校門まで迎えに来ている彼氏のようで気まずかった。

隣を通っていく女の人達に品定めされるような目線がとても居心地が悪かった。



「龍くん、ごめんごめん。ちょっと道が混んじゃってて遅れちゃった。」


「いや、全然大丈夫です…。」


結局天見さんがきたのは15分後だった。

あんまり生きた心地がしなかったが、近くにあった銅像と同化することでどうにか乗り切ることが出来た。



「条件とか、そういう話は学校からまずご家族とかに話に行くことになってるの。その条件は龍くんのご両親のかわりに光さんが聞いていったよ。」


「そうなんですね。それで姉が両親に話して、その後に自分に話を聞くという感じですかね?」


「そういうことになるね。」


先に姉が話を聞いていて、何か俺が大変な事に巻き込まれるということを知っていた。


それを知ってお金を渡してきた…。


今考えてもよくわからなかった。

どう聞けばわかるだろうし、あんまり気にしないことにした。



「こんにちは、東奈くん。よく来てくれたね。」



テストを後ろでずっと見ていた理事長が俺の事を手厚く迎えてくれた。

この感じだとかなり期待されている感じなんだろう。

俺は俺が出来ることをやって期待に応えるしかなかった。



「まず、東奈くん。女子野球部のコーチとして特待生の条件を受けてくれてありがとうございます。東奈くんの特待生としての内容ですけど……。」



特待生には学校によるだろうが、基本的にはランク制度がある。

白星高校はS.A.B.Cと4つのランクがあり、俺は選手ではなかったのにA級特待生として入学させてもらうことになった。



条件の1つ目は入学試験の免除。


テスト自体は受けに行かないといけないが、極論全て白紙で出しても試験は合格するだろう。

流石にそんなことしたら入学した後に色々と言われるだろうけど。


2つ目は入学金の免除。


S.A.B特待は基本的に入学金全額免除となる。

C特待は入学金半額免除だったり、免除がなかったりする。

C特待はどちらかというと学校に入学出来ますよっていう推薦みたいなものに近い。

白星高校はC特待でも入学金半額免除されるみたいだ。



3つ目は学費の免除。


ここはS.A特待が全額免除。

B特待が半額免除。

C特待は学費の免除はない。

これは多分どこの高校もこの形態だと思うし、白星高校はこの形態になっていな。



ここまでS特待とA特待の違いがないが、S特待はスポーツが盛んな有名校でも学年に1人、多くても2人くらいしかいない。


S級はお小遣いが貰える。

というと変な風に思われるだろうが学校で必要な物。制服、体操着、教科書など全て学校が用意する。

寮がある学校などでは寮費などもすべて学校が面倒を見てくれるらしい。


俺が野球をやっていた頃、俺が中学一年生でレギュラーになった段階でS特待で迎えたいですとスカウトが何校も来ていた。


2年生となると特待の話があまりにも増え、監督は俺には特待が来たという話をしなくなった。

全国でも名の知れた高校から特待の話が来ない限り俺にまで話が来ることは無かった。


「A特待ですか。」


「やっぱりS特待じゃないと不満ですか?」


「いや、そんなことはないです。プレーしない自分にA特待はかなり評価されていると思っています。ありがとうございます。」


本心でそう思ったので、深々と頭を下げて誠意を伝えた。


「龍くん。次は私からお願いというかやってもらわないといけないことがあるの。」


俺はそう言った天見さんからとても嫌な雰囲気を感じとった。


人が本当に申し訳なく思う気持ちの時に発するモヤモヤとした雰囲気。


経験上、この雰囲気を感じた時に言われる言葉は……。




「龍くん。新入生となる女の子たちのスカウトをお願いしたいと思ってます。」



──────俺は驚愕していた。

YESともNOとも答えられずにいた。



「あ、あの、も、も、もう一度言ってもらってもいいですか?」



「龍くんと一緒に入ってくる新入生をスカウトして来て欲しいんです。」


俺の耳がおかしくなって、聞き間違いの可能性があったので聞き直してみたけど間違いではなかった。


本当にあの雰囲気のときは本当にろくな事を言われた試しがない。


選手を教えるのはまだ出来るだろうと思っていたが、同級生をスカウトする?


俺はある程度のことは覚悟していたが、スカウトは無理だ。


「あの…。断ってもいいんでしょうか?」


「そう言いたい気持ちも分かるけど、龍くんにやってもらうしかないの。」



申し訳なさそうな雰囲気を出している天見さんだが、口調はかなり強めになっている。


新任の監督として1年目はスカウトに行く暇がないのは分かる。


まず監督としてチームをまとめるのが急務で、すぐに夏の大会が始まるからそこで結果も出さないといけない。


だからこそ、俺に頼むようなことではないスカウトを俺にお願いしてきているのだ。




「うーん。」



俺も簡単に縦に頭を振ることは出来ない。

同級生の女子野球選手をスカウトをするというのは、難易度が高いとかそういうレベルではない。

会う人全てにスカウトしても全員に断られる可能性すらある…。



「どうせ伝えないといけないから、今全部話しておくね。」


俺はスカウトの話以外に話すことなんてあるのかと思っていた。



「出来れば14人くらいはスカウトしてきて欲しい。」



「────14人ですか!?」



「はは。そんなに驚かなくても大丈夫だよ。」



天見さんは俺が喜んでると勘違いしてるんじゃないだろうか?

あまりの多さに衝撃を受けたのに、驚かなくていいと言われても…。



「話を続けるけど、学校としても女子野球に力を入れていきたいっていう方針で、特待生の枠を14分貰ったんだよね。内訳はSが1人、Aが4人、Bが6人、Cが3人。ランク付けは龍くんに任せる。」



「───そうなんですね。」


辛うじて話は頭に入って来ているけど、俺の心はここにあらずという感じだった。


「後、これを渡しておくね。役に立つとは思うからそれを参考にしてスカウトしてみてね。」


福岡の女子硬式クラブチームの練習場所。

部活動で試合に出ている女子の3年生の名簿。

これまでの大会成績などがまとめられたクリアファイルを受け取った。





「そうそう。14人といっても私も行ける時にはスカウトに行くからそこらへんは安心して。」



俺は少しだけ安心した。

全ての選手を俺がスカウトするとなると、責任重大過ぎてコーチを辞退しようかとも思っていた。


「私がスカウト成功した子達も、龍くんが直接確認してランク付けして欲しい。14人のスカウト出来れば、その中での優劣をつけるのは龍くんなら難しくないと思う。」



「分かりました。それでは今日は失礼します。」



思考停止してしまった俺は目の前にあるファイルを手に取り帰ることにした。



「龍くん。家まで送っていくよ。」



俺は返事もせずにゆっくりと頷いた。


車の中では色々と話したが、なにを話していたか覚えていない。



「それじゃ、おやすみなさい。」


「はい、おやすみなさい。」



俺は家に帰ると学生服のままベットの上に横たわって、ただただ天井を見ていた。



……………。




「無理に決まっとるやないかーい!!!」



近所迷惑になるくらいの大声が悲しく響き渡ったのであった。



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― 新着の感想 ―
[一言] 「無理に決まっとるやないかーい!!!」 クソ寒いお笑い芸人みたいになってるからシンプルに 「ふざけんなぁぁー!!」 みたいな感じでいいと思う。まあこれでも変っちゃ変やけど
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