プロローグ!
電車に乗っても街の中に出掛けても、女子プロ野球選手の広告を目にしない日はなかった。
スポーツ店のモニターには選手のホームランやファインプレーの映像が映し出されていて、女子野球専門のコーナーも賑わっていた。
女子野球人気の火付け役となった東奈光の姿が大画面のモニターに映し出されていた。
そんな華々しい姿を誇らしい気持ちで眺めていたのが東奈龍。スター選手の弟だ。
姉は女子野球全国大会選手権で伝説的な活躍をして、女子選手として初めて男子プロ野球選手になった選手だった。
その頃には女子プロ野球という新たなリーグが発足しており、どの球団も姉を獲得すると表明していた。
天邪鬼な姉は簡単には女子プロ野球に進まず、男性のプロフェッショナルが集まる男子プロ野球へと進んでいった。
これ以降女性で男子プロ野球へ進める選手は現れなかった。
唯一の男子プロ野球選手として、野球に興味がない人達にも広く知られていて老若男女問わず人気だった。
今女子野球ブームが来てるからといって、既存の男子プロ野球の人気が落ちるということは無く、男女問わずに数多くの人が野球というスポーツをプレーしていた。
この空前の野球ブームの中、ひっそりと天才選手としてその名を轟かせていた俺は野球を辞めてしまった。
しかし、俺の人生に深く関わっていた姉が野球から離れることを許さず、チームを辞めることは許してくれたが、とある提案をしてきた。
俺は姉に逆らうことが出来ず、その提案を受け入れた。
中学2年秋から3年生になるまで野球を辞めたのにも関わらず、自宅の整った室内練習場で毎日練習をやる羽目になってしまった。
提案してきた姉の光は家に帰ってこず、俺が練習してるかどうかも確認せず、連絡も寄越さなかった。
そんなある日、俺の運命を変える出来事が起こった。
「りゅー。それじゃ行こっか。」
急に現れ、何の説明もなくどこかへと連れて行かれる俺は不安しかなかった。
そして、何も知らないまま着いて行った俺はとてつもない条件を押し付けられることになってしまう。
俺の新たな野球人生が始まることになり、不器用ながらも個性的な女の子達と共に全国大会を夢見て、時にはすれ違い、互いに成長しながら歩んでいく。
困難に立ち向かったり、そして立ち止まりながらも前へ進む元天才野球少年の俺の物語だ。