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久しぶりのドーナツ屋さんだ!

 シャーリーさんの意向で、一旦その話は保留となった。流石にそこまでの大犯罪者を相手取れるレベルでは無いから、沢山の事を考えないといけないとの事である。

 私はとりあえずお給金を貰ったので、家に帰る事にした。今日は豪勢にステーキでも食べようかと思案中だ。


「うん? エーフィーは帰るのかい? どうせなら私と一緒にお茶でもどうだね」


 コリーさんからのいつもの紳士な誘い。下心は決して0と言う訳ではないだろうが、やはりマリーちゃんの一件も相まって私の事はずっと気にしてくれているそうだ。心強い味方である。


「うーん、でしたらあのドーナツ屋さんに連れてってくれますか? エラもそれでいいよね?」


 ここで無意識っぽくエラを誘うのが防衛ポイントなのだ。


「ほう……」


 鋭い目つきだ。コリーさんとは取引相手かもしれないけど、殺ってやるって瞳をしている。


「こーらっ! コリーさんにはかなり融通を聞かせてもらってるんだから、そんな態度しちゃだーめっ!」


 エラの腰に手を回し、自らの懐に力を込めて引っ張った。

 彼女の頭が上手く私の胸の所に寄せられる構造。彼女はこれが大好きなのである。


「えっ、エエエエーフィー! 人前ですのよ!? もうやだ恥ずかしいったらっっ!!」


 大丈夫だよエラ、寧ろ人前でやるから効果がある行為なのだよ。以前シーナから教えて貰った成年向け雑誌にこういう嗜好の人がいるって書いてあったし、さっきから頬を赤らめているコリーさんには効果は抜群と見たね!


「エラッソ嬢も一緒にどうかね。あそこのドーナツ屋さんはとても絶品だ」


 ガルルルルルルルルって乙女から出してはダメな鳴き声だと思うんだ。いくら私との時間を過ごしたいからって野生に戻るのはどうかなと思う。牙を出すな牙を。


「お、おお……動物の鳴き声かい? それならドーナツ屋に行った後、最近出来た動物ふれあい楽園に行ってみないかね」


「動物ふれあい楽園?」


 聞いた事のない施設だ。


「そうだよ、その名もワンニャンランド。結構人気らしくてね、入園規制も掛かる程の盛況ぶりさ。もちろん私の力でそんなのは軽く打ち破れるがね」


 ううーん、動物か、確かに最近触れ合ってないなー。犬とか結構好きなんだよな私。ここはお言葉に甘えてみますかぁ。


「エラも一緒に行くよね?」


「ガルルルル?」


 そこは普通に喋れよ、どうしてあなたが触れ合い対象に入ってんだよ。こっち側でしょーが全く。


 一旦便利屋の外まで出ると、そこには大きな魔導者が一台停まっていた。2人はこれでやって来たらしい。光沢のある外観だが、シックな大人の余裕を見せるスマートな作りになっている。いかにも金持ってそうだ。


「ささ、どうぞエーフィー入りなさい」


 これで向かうのはドーナツ屋さんだからお笑いである。

 いつもなら箒を全速力で飛ばし、着く頃には髪の毛がボサボサなのが日常だったのだが。

 

 中の後部座席に三人座る。中心に私、両隣に2人だ。

 なんだこの組み合わせ、めちゃくちゃに気を使うんだが。


「エラ、ドーナツ楽しみだね! って、食べた事あるかな? マギシューレンから南に行った森を抜けた先にあるお店」


「いえ、私は行ったことありませんの。エーフィーはいつもシーナと一緒に行ってましたよね?」


 そういえば、エラとこんなに深く交流し始めたのは最近になってからだ。

 ははーん、さてはその表情、寂しかったんだね? エラは可愛い所だらけだけど、またまた奥底にこんな乙女ちっくな可愛い所があるだなんて。


「あそこのドーナツはね……甘くて絶品なんだ。きっとエラも満足しちゃう魔法の食べ物! 乙女の力がグングン上がる!」


「グングン……? ふふっ、楽しみですわね。それはアンゲルのお菓子よりも美味しいのかしら?」


 ああーそれは流石にないかもしれない。

 あの人のお菓子は異次元だもの。失敗して焦がしたら泣き喚く事を除けばね。

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