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海底都市だって!? 

 翌日、フィン・ドジーの構えているお店にエラと一緒に向かうことにした。

 昨晩は何とか襲われずに済んだのは幸いだ。今度からアンゲルさんと一緒に行動してもらう事にしよう。


「へぇ、ここが錬金術師のお店ですか。シーナと一緒に行動するのも久しぶりですわね」


 彼女らは犬猿の仲という訳ではないが、恋敵というべき間柄である。ちなみに登場人物は全員女。まともな所が一つもないのである。


 ガチャリと扉を開けると、シーナとジャスティーが一緒に並んでお茶を飲んでいた。その前にフィンさんが座っている状態だ。あの家庭内暴力男はどこにもいない。ほっと胸を撫で下ろす。


「あ、エーフィーおはよ……ふーん、同伴ですかそうですか」


 いつもと違い、キリッとした目つきに変わるシーナ。ジャスティーに目を配ると、彼は何かを悟ったみたいにその場から離れる。


「おはようございますエーフィーさん! もうアイテムは出来上がってますよ! ほらこれです!」


 手渡されたのは、袋に入ったビスケット。

 もっと大掛かりな船でも用意しているのかと思ったが、何かの冗談なのだろうか。


「これはですね、水の中でも息が出来る様になる成分と、気圧に影響されない膜を生成する特殊な魔術を編み込んでいるのですよ!」


 元気いっぱいに答えるフィンさん。

 まかさ、そんなバカな。

 で、でもどうせ効果は一時間しか効かないとかそんなんでしょ?


「えへへー! ちなみに効果は一粒で二十四時間きっちり作動しますとも! 合計で30粒、ちょっと作り過ぎちゃいましたけど、もしあれでしたらおやつにでも食べてください!」


 腰に手をやり、天井を見ながら鼻息をあげるフィンさん。

 可愛らしい喜び方だが、青痣のせいで全てが台無しだ。


「あらエラッソ、ご機嫌麗しゅう。モイツーランドの調子は如何かしら?」


 そういえばあったなそんな夢の国。


「あら? そりゃあもう絶好調ですわっ! 最近では参入企業が多すぎて困ってしまいましてよ! おほほ! おほほほほぅ!!」


 いつ頃完成予定なのだろうかあれは。出来れば1番目に入園したいくらいには期待度が高まっているのだけれど。我儘言ったら通してくれるかな。やっぱりあの絶叫系は乗って見たいよなぁ。箒の何倍速だろ。


「ふーん? 本当にぃ? この前材料費の事でマナーカ王国の人と揉めていたとお聞きしましたけど? 利益最優先も良いですけど、不当に料金を下げるのがモイツ家のやり方だってもっぱらの噂よ?」


 ヤッベェ、突風で煽ってく形ですか。


「いえ、それはこの前エーフィーに差し上げたお芋の件ですわ。向こうの国の最高級のお芋ですからね、大量に仕入れる機会は滅多にありませんから交渉したのですよ。私の愛の力です。モイツ家のやり方ではありません」


 大量に紅茶を吹き出すシーナ。

 紅茶なんか飲んでるから吹き出すんだ。


「な……な……なな……!! ぐ、うぅ……愛……か」


 真っ直ぐキラキラとした視線をシーナに送るエラッソ。淀みのないその心はまるで清流。私にくれたお芋のそんな深い物語があったなんて……大事に食べよう。


「さて、ご挨拶も済んだ所で早速仕事に行ってくるね! 海底のどこにあるかは分からないけど、潜れば何かした見つけれるでしょ!」


 早速バッグの中にビスケットを入れ、扉に向かったが呼び止められる。


「おいおいエーフィー、せっかくここまで協力したんだ。僕らも一緒に連れてってくれないか? 何も1人じゃないとだめなんて決まりはないだろう?」


 振り返ると、彼だけじゃなく、みんな同じだと言う顔をしている。

 そうだね、折角だし、私1人じゃ足も折れてるし、何かあったら対処も出来ない。


「わかった、ありがとうみんな。お言葉に甘えるよ」


 よかった、心強い仲間がいて。何だか安心しちゃうなぁ。


「フィンさん、これって全身を膜で覆うんですよね? 水に濡れますか?」


「ううん、濡れる事はないですよ! 安心してください! なのでえーフィーさんの足の包帯にも影響は出ません」


 良い事を聞いた。

 なんだかんだ言ってこれからの事を考えてなかったのだ。とりあえず第一関門は合格。次の関門は正確な場所だ。


____

________


 船着場に到着し、受付の人に話を聞いてみた。

 珍しい大型の事故だったためか、正確座標を記録していたそうだ。これで時間が短縮出来る。


「そこ、大型の海の魔物がいるので危険なのよ? 何と深くには大昔の都市があるそうなのよ。そこに巣食ってる奴がこの事故を巻き起こしたのね。魔術師さんだからって油断しないようにね?」


 受付の女性からの忠告を受けると、一層身が引き締まった。


「へぇ、魔物か。勇者である僕にとっては打って付け相手じゃないか。しかも海底都市だって? 心踊るね」


 何とジャスティーは勇者の剣を持って来ていた。

 頼もしい限りである。


「おーっほっほっほ〜!! アンゲル、久しぶりに腕が鳴りませんこと。あなたの力、ここで思う存分出し切りなさい! 例え食物連鎖の循環が壊れようとも、そんな危険な魔物野放しには出来ませんわ!」


 へーアンゲルさん戦闘も出来るんだ。これは楽しみ。


「エーフィー、怪我してるんだから無理しないでよ?」


「大丈夫よシーナ。私はホッシーの力を借りれるの! ね、ホッシー!」


 バッグに向かって声をかけるも、何故だか反応が薄い。


「ちょっとホッシー! 元気にしなさいよ!」


「うう……錆びないか心配だよ。死活問題なんだ」


 なんだそんな事か。

 大丈夫、例え錆びても金属削りでゴリゴリに磨いてやるから。禿げちゃったよエーフィー! って言わせてやれる自身があるんだ、私。

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