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錬金術ってすげー!

「えっと、改めまして自己紹介しますっ! 私の名前はフィン・ドジー。隣にいる人はグロッグ・イーグルです! この度は当店をご利用いたたたちまし……」


 人前が苦手なのだろうか、結構噛むなこの人。

 いやっ、きっと隣にいるグロッグって男性のせいなのだ! きっと脅されてるんだ!


「初めまして、私の名前はシーナ・ブルグと申します。唐突の来店で申し訳ないです。あなたが錬金術師だと聞いてここにやって来たのですが」


「はっ、はい! 私は錬金術師です!! 何でも作れますよー!! 何だって作れますよーー!!」


 自信満々に声を上げる錬金術師。


 手始めにどんな仕事なのか紹介をしてもらった。

 宙に浮いている大きなガラスの球の中に素材を入れ、特殊な魔力を使って精製するとのこと。正直何を言っているのかさっぱり分からなかったので、実演をしてもらう事にした。

 お題は、星のぬいぐるみだ。


 すると、錬金術師は紙と綿毛、金属の破片をガラス玉の中に入れ、蓋を閉じる。

 下に描いてある魔法陣に触れて魔力を送り込んだら、中にある素材が中心に向かって高速で回転し始め、一つの光の球となった。


 段々と光の輝きが無くなると、その中には一つのお星様の人形。

 再び蓋を開け、手に取りこちらに見せる。


「ほ、本当だ!! 本当に人形になってる!! すごいすごい!!」


 しかもお試しと言う事で貰う事が出来た。

 またホッシーが何かやらかした時、目の前でビリビリにする役目を与えてあげよう。


 にしても本当に凄いのである。

 錬金術は製法の一つとして学んでは居たけど、正直使いこなせなかった分野だ。あまりにも難解な学問で有名であるし、マギシューレンでまともに使いこなせている人を見たことがない。

 授業と言っても薬草と液体を混ぜた実験みたいな物だし、文字通り金を生み出してる人なんて世界に一人も居ないだろう。


 だから、こんな短い時間にぬいぐるみを作れるのは本当にびっくりした。

 この人の腕は本物だ。

 

「あの、でしたら潜水艦を作れないでしょうか?」


 なんだか真面目な顔と声でこんな事を聞くのが非常にバカらしい。普通作れる訳ないだろう、この人じゃなければ赤面していた所である。

 ま、でも流石の錬金術師さんと言えど、潜水艦は桁違いだろう。


「えー……うーん、結構時間は掛かってしまいますけどそれでもいいですか?」


「ええええ!? 本当に作れるんですか!? そんなバカな」


「はい、必要な素材さえ集め切れれば作れるとは思います……。にしても潜水艦ですか? 目的は海底に潜る事ですか?」


 詳細は省いたが、どうしても仕事で海底に行かなければいけないのを伝える。

 まぁ決して仕事では無いのだけれども。


「なるほど。その地域の海底は言うほど深くありませんからなんとか潜水艦に頼らなくて済みそうですね。問題は空気と水圧ですが、問題ありません」


 そう言って錬金術師は戸棚から本を一冊取り、私に見せて来た。

 恐らく自分で書いたのだろう。明らかに手書きの文字で綴られてる文章と図解、字が綺麗でその人と形を表しているみたいだ。しかもなんだか良い匂いもするし、幼気で守ってあげたい可愛さを醸し出している。


 くそ、青痣だけが許せない。

 そこでのんびり座っている男は何もしないのか! 


「で、これが必要な素材ですね。合計すると5000デルくらいの費用を頂ければ作れますけど……」


 5000デルか。アイテムの効果を考えればかなり安い部類に入るのだが、今の私にとってはそれなりの死活問題。でも背に腹は変えられぬ。


「分かりました。お支払いします」


「ありがとうございます!!! ありがとうございます!!!」


 地面に頭を激突させるんじゃ無いかと心配になる程頭を下げる錬金術師。どうしてそんなに腰が低いんだい。夢みたいなすごいアイテムを作れるんだからさ、ちょっとくらい殿様商売してもいいだろうに。


「やったー!! 初めてのお客様だーー!! これで美味しい物が食べれるぞーーー!!」


 そんな悲痛な叫びはせめて私達が居ない所で言って欲しい物だ。

 でもおかしいな、お客さん来ないのだろうか。やっぱり看板が無いのが痛いのかな。それを差し引いても引っ張りだこな気がするけど。


「ええ、お客さん来ないんですか? こんなに凄い物作れるのにですか?」


「はい……どうしてでしょうか。皆私を見て避けるんです……ぐすん……」


 そりゃあだって闇が深そうだもの。

 

 男に視線を移すと、気怠そうに組んでいた足を戻しながら本の次のページをめくっている。

 やっぱり改めて見ると、手元は傷だらけ。きっと剣士だ、壁には剣が立て掛けてあるし。


「そちらの男性は? ご夫婦ですか?」


 シーナが突っ込んだ質問をすると、錬金術師はどうも気の毒そうに顔をしかめている。

 彼が怖いのだ。怯えているのだ。


「フィン、俺は少し外で散歩してくる。どうも邪魔そうだしな」


「あ、グロッグさん。夜ご飯までには帰って来て下さいね!」


 返事もせず男は店を後にした。

 感じの悪い奴だぜ! フィンさんなんてこんなに可愛くていい人なのに!

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