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暴れん坊シーナ

「はぁ、すまないねエーフィー。どうしても彼女が君に会いたいって暴れるもんだからさ、止めようにも止められなかったんだよ。便利屋の仕事で忙しいし、足も怪我してるだろ? 親しき仲にも礼儀ありさ。と言っても聞く耳持たなかったんだけどね」


 そっか、私と会わない間に家で暴れてると言うのは本当だったのか。相変わらず愛が重いぜ! それよりもジャスティーさんがシーナと一緒にいるのが私的には一番気になるんだけどな。


「はぁい、エーフィーたんとお食べ! 甘めのシチュー大好きでしょ? 素材に拘ったんだから!」


 濃いホワイトソースの香りが鼻腔をくすぶる。ホッシーのシチューも美味しかったけど、やっぱりまだまだシーナの手料理には敵わない。なんと言ったっって掛けてる愛情が何倍も違うのだ。


「シーナ、よければ僕のも注いで欲しいのだけど」


 ジャスティーが両手で物乞の様にスーププレートを差し出すと、シーナがまるで聖女の如く目を細めながら顎を出し、仕方ないわねぇと微笑みの恵みを垂らす。完全に主従関係が成立してるのである。


 はふっはふー。


 そのまま口に運んでも美味しいし、パンに付けても美味しい。

 隣でホッシーの口元をナフキンで拭いながら、私は空いたお腹を埋めるように食べ続ける。

 というかホッシー食い方汚えな。やっぱりそんな鋭角じゃまとものスプーン持てないのかな? いやそんな事ないか、しっかり扱えてる。じゃああれか? 私の教育が悪いのかな? もし社交界に進出した際、あの星の食べ方が汚かったわうふふ、とか噂されたらたまったもんじゃないのである。


 今度みっちりテーブルマナーを吹き込んでやろう。ついでに首元の蝶ネクタイでも取り付けたら面白そうだ。


「あ、あのさシーナ。シーナのお家って潜水艦とかない? それか海底に潜れる魔法道具とか」


「ん? 海底に行きたいの? 仕事?」


「まぁうんそんなとこ。ある人の大切な物を探しに行きたくてさ」


 幽霊の事はシーナにも言わない。

 だって視えない人にとっては、それは存在しないのと同じだからだ。

 幽霊に頼まれたから海底に行って指輪を取りに行くよ! と言ったらまた病院に連れて行かれそうだ。


「ふーん、海底か。でも海底に行ける魔法道具なんて心当たりないなー……うーん。ジャスティーは聞いた事ない?」


「そうだね、僕も心当たり無いかな」


 即答するジャスティーに向かって小声で罵倒するシーナ。完全に丸聞こえである。


「なんだい!? 君だって知らないじゃないか!?」


 でも、シーナでも知らないとなると残りの心当たりの人物と言えば……エラッソかコリーさんだな。でも海底に行ける道具なんて、それこそ軍が所有している潜水艦しか検討が付かない。動かすのも莫大な費用が掛かるだろうし……。


「あ! ねぇねぇ、それならさ、錬金術師のお店に行ってみない?」


「錬金術師?」


 聞いた事はある。

 色々な特殊な素材を組み合わせて、別の道具を生み出す人達だ。

 世界各地に点在している希少な職人達である。


「最近エーレにもお店が出来たのよ? でも繁盛していないみたいね、やっぱり胡散臭いと言う人もいるだろうし、彼女らの有能さが周知の事実になるのはまだ先の話しかも。逆に考えれば今なら格安でしかも待ち時間無しに依頼を受けてくれるだろうからさ」


 知る人ぞ知る、な存在であるからか、未だ噂にも出て来ないらしい。


「ま、私やエラッソみたいな所じゃないと情報は出回らない。良かったじゃない? 行くだけ行ってみる? きっとかなり良い道具作ってくれると思うな!」


 シーナがそこまで言うなら行ってみる価値はある。

 どちらにしろどうしようか悩んでたんだ。今自分が出来る事をコツコツやっていくしかないのさぁ。


「うーん、行くとしても微妙な時間帯だね。今日はもう遅いし、お風呂入ってさっさと寝よう」


 リンドでの出来事からそこまで日数が経ってないのか、体に疲れが溜まっている。早く骨折治れば良いのになぁ。ぬるめのシャワーでしか体も洗えないし、不便ったらありゃしない。


「シーナも一緒に寝る? ジャスティーさんは……一緒に寝るかい?」


 ギロリとシーナがジャスティーを睨む。

 いや違う違う、そこはうふふー、エーフィーったら〜も〜、とか赤面する場面なのだ。何も牙を剥き出しにして野生を解放する場面ではないのである。


「シーナ、心配しなくても僕は家に帰るよ……」


 ハウス、と告げられたワンチャンみたいなしょげた表情に早変わり。見ていて可哀想だ。


「え、どうせなら泊まって行きなさいよ。寂しいでしょうが。しかもいきなり暴漢が出てきたら誰が私達を守るのよ」


 なんだろう、どうして臆面も無くそんな台詞が出てくるのだろうか。邪険にしてる癖にいざ離れると寂しいから側に居てって……雨と鞭の究極形態。


「うぅ……シーナさん……うぅ……」


 まるで教祖にお告げを授けられた信者である。

 あれか? 新手のいちゃつきか? やるなら二人っきりの時にやりたまえ。


 ルンルンと鼻歌を歌いながら食器を片付けるシーナ。

 そう言えば着替えとかあったっけ? まぁ適当な服を着せれば良いか。ジャスティーさんのも客人用の服を着せればいいし。

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