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逃げろホッシー!

「さーてさてさてーっと……おお! いい感じいい感じ、これでとろみをつけて、完成だ!!」


 甘く、誘惑的な香りが周囲に漂う。これはこれは絶品な物が出来てしまった。もしかしてこの星である私は天才なのかもしれない。いや、絶対にそうだ! 

 戸棚の一番上にある深めの大きなお皿を担ぎ、お鍋の前まで持ってくる。こぼさないようにそっとお玉でシチューを掬い上げると、とろとろとしたお芋が柔らかそうに他の食材と溶けているのだ。つまりはかなり美味しそうなのである。


「これと、備え付けにパンを合わせてー……完成!」


 初めてにしてはかなりの出来だと自信を持って言える。少なくともエーフィーよりかは絶対に味には自信があるのだ。彼女はサンドイッチ以外は炭にする傾向があるし。


「では、いっただっきまーっす!! ぱくぱくうーんんんん美味しいぃぃぃいいい!」


 やはり会心の出来である。

 今度からエーフィーに台所を任せてられないな! 料理はこの星の仕事とするとしよう!


「ぱくぱくーー! だっはっはっは!! パクモグパクもぐぐぐ〜ー!」


 お下品だが、本を読みながら食う飯はとてつもなく美味い。以前はエーフィーにお行儀悪いからやめなさいと叱られたが、禁止されると逆にやりたくなるのがこの星なのである。人は牢獄から抜ける瞬間、甘美な刺激に身を絆される生き物なのだ。人じゃ無いけど。


「あ! ちょっと本についちゃった、けどまぁいいか。物は必ず汚れるもの、一々気にしてられないのだ!」


 ある程度腹が溜まれば、食事は終わりである。

 いつもは片付けを早めにする我がマグ家だが、今日はその主人がいないのでお片付けはもちろん後。面倒なことは全て後からやるのが星の流儀である。


「けっぷ、さぁゆっくりコーヒーでも飲みながら本の続きでも読もうっと。あー伸び伸びぃぃぃーーーぃぃぃぃいいいいいい!?」


 部屋の扉の隙間から、何かがこちらを除いていた。

 薄青い光から、確かな殺意を感じる。

 ぎりぎり、ぎりぎりと金属の擦れる音が鳴り響きくと、勢いよく扉は開かれた。


「ボッジィィィィーー……みづげダァアァァァ」


 目をまん丸に開き、光を感じないその視線。

 右手にも持たれているのは松葉杖でもなく、魔法使いが使う杖でもなく、箒でも無い。そう、小ぶりな釘がいくつも刺さっている金属の棍棒なのである。


「う、う、う、うわああああああ!!!」


 思わず部屋の隅へと移動する。

 変わり果てたその姿、主人のエーフィー・マグだ。


「ああああああ!!!」


 思いっきり棍棒を振り上げた瞬間、咄嗟の勢いで彼女の脇を通過し、部屋を後にする。

 ダーン! と激しい音がしたので後ろを振り返ると、首だけ傾けて視線を送るエーフィーの姿があった。恐ろしい形相だ。


「どおおして逃げるのおおお?」


 けひゃひゃと笑いながらゆっくりこちらに近づくエーフィー。

 だめだ、捕まったらやられる。


「うわあああああ!!!」


 必死に飛んで逃げようとする。

 表の扉にすぐ到着し、扉を開けようとするが、何かの力で鍵が閉まっており、開く気配がない。


「な!? く、くそ、どこに逃げればいい!」


 思わず近くのソファーの影に隠れ、作戦を練る。

 段々彼女の笑い声が近くなってきた。思わず身を伏せ、生存率を上げる。

 先ほどシチューを食べすぎたせいで、思ったよりも体が動かない。今のままじゃいずれ体力が失われ、捕まって最後を迎えるだろう。その間に対策を考えなければ。


 バギボキドゴンっと金属と金属のぶつかる音が鳴り、何事かと様子を見る。

 そこには、以前エーフィーが買ったであろう、星の置物が木っ端微塵に粉砕されているのだ。


「あレぇ? ボッジー? ヂガーヴ」


 違うと分かっていながらも、トドメの一撃を何発も打ち込むエーフィー。

 憎悪の矛先が、星の形をした何かに集中しているみたいだ。


「ひぃぃ……捕まったら砕かれる。捕まったら八つ裂きにされる。なんとかしなきゃ、なんとかしなきゃ!」


 けひゃひゃと笑い声が遠くなったのを確認した後、ソファーの影から出る。

 なんとかして時間を稼ぎ、やり過ごすしか手はない。


「よーし、なんとか逃げて−−−−」


「ミーヅゲダ!!」


 後ろを振り返ると、そこにはいないはずのエーフィーの姿。

 瞬間、ガッツリ片方の手で掴まれる。


「ガグゴジナザイ、ボッジー アハハ、アハハハハ!!!」


「きゃあああああああああああああああああああああ!!!!!」

下にいる5個の透明なホッシーを、全て黒くすれば良い事が起こるそうですよ....!!(主に作者が

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