エラッソのお家へ!
ホッシーが白い星を黒く染めてだって。お願いだよーだって。
「医者様がそうおっしゃられるのでしたら……仕方ありませんね。エーフィー、私は基本的に家族でさえもお金の貸し借りは断っているのですが、今回はお薬代くらいは出させて頂きますね。大切なお友達です。お見舞いの代わりと思っておいてください」
なんだろ、言ってることは凄く優しくて素敵な提案なのに、しっくり来ないし納得も出来ない。私は病気じゃないんだ。
「……うん」
「ああ! エーフィーったらこんなに弱って……! もっと私が監視してればこんな事にならずに済んだのに!|」
と言い、これでもかと抱き締められる。
もう、もう気にしないんだ。私は哀れな頭のおかしい病人。なんか陰で写真をパシャパシャ撮ってる広報関係の人もいるし、いくら否定してもたちまち噂はエーレ中に広まるであろう。
号外号外!! あのマーフィー・マグの甥孫が先日のガイストとの戦闘で負傷!! 頭を強く打ち、正常な判断が出来なくなったそーだ!!
「はぁ」
踏んだり蹴ったりである。くそぅ。
「ねぇエーフィー、もう夜は遅いんだし、今から夜道を辿るのはとても危ないわ! 私の家がすぐ近くにあるから、とととと泊まっていかれないかしら!?」
途中でどもるのは悪い癖だぞエラ。折角のお誘い文句、ビシッと決めたほうが格好良いぞ。
「うーん、うん。そうね、もう眠たいし、折角だからお言葉に甘えようかしら」
本当なら今すぐ家に帰ってホッシーを砕きたい所だが、今日はもう疲れた。お腹も減ったし、フカフカのベッドで横になりたい。
「よっしゃあああ!!」
病院の中だと言うのに大声でガッツポーズを決めるエラ。その動きは恐怖さえ感じる。狙っていた獲物がわざわざ餌場へと簡単に誘導されたのだから。
「お嬢様、病院ではお静かに」
流石にセバスチャンも看過出来ないのか、お嬢様を戒める。
「あらいけない私ったら、あまりの嬉しさに心の声がダダ漏れでしたわ。はしたないはしたない」
もうだいぶ前からはしたないが、本人が気づいてないのなら黙って置くべきだろう。
にしても、エラの家かぁ。多分マギシューレンでエラの家に行ったのって、エーデル学院長くらいじゃなかったっけ? 確か、流石の私も度肝の抜かれました……って言ってたような。
「エラのお家って、やっぱり大きいの?」
「もちろんですのよ! 本当は本家と分家と色々ありましてね、普通なら本家には誰も入れないようにしているのですけど、貴方は特別よ。きっと私の家族も納得して快く入れてくれるに違いないわ!」
ふーん、そっか。それはそれは大層なおもてなしを期待してもいいのかな? でも警戒はしておこう、いつどんな状況で襲われるか、油断ならないからね。
「へぇ〜それは楽しみだな〜。あ! 今お腹がぐるるるーって! 御相伴に預かりたいですなぁ」
へっへっへ。
「な……!! セバスチャン!! セバッスチャーン!!」
「はいお嬢様、隣にいますので。あと病院ではお静かに」
「今の会話を聞いていたわね!? 早速家に帰って準備してくださいまし!!!」
「安心して下さいお嬢様。貴女が猫休でコーヒーを楽しんでおられた時点で、このような出来事は予測済みなのです。お家に帰り次第、最高級のお食事が楽しめることでしょう」
えええ、セバスチャンってすげええ。
「ふふふ、流石ですね。でしたら私達は少し遠回りをしながらゆっくり帰ります。折角なら、エーフィーにあれも見させてあげたいですからね」
あれ? あれってなんだろう。
「ほほう、お嬢様もお戯れますな。まぁいいでしょう。専属の魔法使いも呼び出して置きます。びっくりされるでしょうな」
「エラ、あれってなんなの?」
「ふっふっふ、それは見てからのお楽しみですわね! じゃあ帰りましょうか?」
この切り替えの速さである。ついさっきまでは私の事を病人扱いしていた癖にさ!




