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半端な自分に負けたく無い。周りに負けても、自分にだけは!!

「ってうわああああこっち見てるううううう!?」


「エーフィー!! 箒に乗って逃げるんだ!!」


 瞬時に箒に跨り、一気に飛翔すると、目前に火の玉が迫っていた。

 なんとか空中で回転し、体勢を整える。


「わわわ! あわわわわわ!! どうしようホッシー!! あんなのにどう抵抗すれば」


 ガイストはまたもや耳をつんざく様な奇声をあげた後、猛烈な速さでこちらに突進し始める。

 追いつかれたら命は無い。全速力でその場から離れるのみだ。


「ひゃああああ!! 追って来てるーーー!!」


「エーフィー前まえまーえー!! 前を見てえええ!!」


 建物と建物を繋ぐ、連結橋の空いている隙間を縫う様に通り過ぎる。

 その後すぐに、大きな聳え立っている教会の壁を伝う様に天へと上り詰めた後、確認の為に後ろを見た。

 ガイストの姿は見当たらない。


「ど、どこに行ったの? ホッシー探せる?」


「さ、さあ……あ! あれを見て!! 女の子が魔物の影に包まれてどこかに連れ去らレようとしているじゃないか!?」


 蜘蛛が捕食対象を糸で包む様に、ガイストの影の中心にいる女の子は闇に取り込まれようとしていた。


「う……ぐ––––!」


 ダメだ、このままじゃあの子は連れ去られ、ガイストの住処で死ぬまで生命力を吸い取られてしまう。誰かが助けなきゃ、助けなきゃ、助けなきゃ。

 でも、敵は強力な魔物。自分ではどうしようもない相手。下手すれば自分も殺されてしまうかもしれない。それに、きっと別の人間が動いているに違いないのだ。


 辺りを見回す。

 自分以外に魔術師や魔法使いの姿はなく、そこらで火災も起こっており、その対応に軍人達は手一杯の様子だ。

 影に包まれようとしている女の子の周りにいる人達も、様子を見るばかりで、一向に動こうとしない。

 

 まるで見て見ぬ振り。

 皆怖いのだ。

 いつ自分に矛先が向けられるか、必死に避けようとしている。


 ––––誰か!! 助けて!!


 影の中心から、助けを呼ぶ声が聞こえた。

 紛れもない、恐怖の叫びだ。

 

「あーーーー!! もう!!」


 小さな心から、枯れたスポンジから水を絞る様に、自分の中にある臆病な感情を地面に落とす。

 どうしてここまで怯えているんだ。

 自分は決めたじゃないか、大叔母様の様な偉大な魔法使いになるって。それがこんな魔物一匹に手こずるし、目の前の人ひとりすら助けられない。


 ––––私は、この程度の覚悟だったの?


 違う、断じて違う。

 

 決めたんだ。


 それなのに、いつまで甘えた思考をしているつもりだ。

 動け心、動け体、動け……!!

 敵なんて強大でもいいじゃないか! 勝てなくてもいいじゃないか! 勝利条件を間違えるな! 才能が無いのだから、経験から逃げても一生成長出来ない!!


 ただ確実に言えることは、ここで私が逃げ出したら、あの子は死んでしまうということだけなのだ。


「ホッシー……ごめん、馬鹿だ私」


 止められるかと思ったが、ホッシーの反応は少し違う。

 まるで待ってましたと言わんばかりに、みるみる金属の体内から魔力を量産しているのだ。


「エーフィー、今こそ心の魔法を発動させる良い機会なんじゃないかい? 相手が魔物だろうが精霊であろうが、必ず感情はある。その隙間を上手く使えば、どんな強敵にも必ず隙が出るってもんさ! 相手の慢心を利用しようじゃないか!」


 ゲフュール。

 今まで怖くてあまり使っていなかったけど、命の掛かる戦闘であれば話は別だ。


「攻撃は私に任せてくれ! 周りの恐怖の感情のおかげで、攻撃性能は桁違いに上がってるのさ! あのガイストみたいな火球は出せないにしても、近い威力は出せるかもしれない」


「ホッシー……」


 やる気満々の星を見ると、不思議と体の内側から高揚感が湧き上がってくる。


「ね? エーフィー。これこそ、大魔法使いの第一歩だとは思わないかい? 勇気は魔法を超えるよ」


 勇気は魔法を超える。

 そうだ、冷静に考えるんだ。本当に勝てない相手か? もっとよく観察するんだ。

 さっきだって箒の速さにはついて来られなかった。それなら最悪倒すことは出来ないにしても、あの女の子を救出するくらいなら出来るのではないか?


「ええい! 考えてる時間が勿体無いね! ゲフュール!!!」


 瞳に熱が籠る。

 視界の先には色々な心の色が浮かび上がっていた。

 その中で歪な黒が一つ。穏やかな狼煙の色を天に昇らせながら、ゆっくりと影の球を作っている。


「ホッシー、あの穏やかな影に一発打ち込んでみましょうか」


「了解だよエーフィー!」


 手をかざす。

 今回はホッシーの助力を最大限に借りた、エーフィー・マグ史上、最大火力の魔法。


「おっと、このまま発射したら周りの人達にも被害が出るかもしれないね! もっと近づいて危険を知らせなきゃ!」


「いいでしょ? 大丈夫、きっと避けるって」


「そこは適当なんだね君!?」

 

 ––––星よ、精霊よ、我に力を与えたまへ。業火を司る自然の力、滾る情熱を手中に具現せよ!


「ファイ!!!」

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