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そして私は一歩踏み出す

「いいねぇエーフィー、星の河と言うのはこんなにも美しいんだ。もしかしたら君が隣にいるからかな?」


 キザったい台詞を吐く星である。

 でも、飛空挺から見える夜空は本当に美しくて、溜息が出そうなほどだ。


「ねぇホッシー、あんたさ、もしずっと星のままだったらどうする?」


「ん? うーん、難しい事を聞くね。もし私に昔の記憶があれば元に戻りたいと考えるかもだけど、今はそんな風に考えれないかな。どうしたんだいエーフィー?」


「いや、こう……先が見えないと言うか。将来が分からないと言うか、ね。こうして今はシャーリーさんの所で働かして貰って、仕事も取って来てくれるけどさ、いつまでもそれが続く訳がないでしょ?」


「なるほどなるほど、それはまた漠然とした不安をお持ちだね。確かに、世の中には始まりがあれば終わりもある。その定めには抗えないよ」


 頭では理解している。

 やらなきゃいけない事が沢山あって、そんな事考えている暇もないほどに。

 でも、ふと夜空を見上げると、ついつい色々な思考が巡り巡ってしまうのだ。


 私は、決して私一人では生きてはいないけれど、私を立たせれるのは私一人だけなのだ。この細い二本足でどこまで駆け抜けていけるのか。途中で走れなくなってしまうかもしれない。その時に乗超えなきゃいけない壁が、届かない程高ければ、私は諦めてしまうのだろうかと考えてしまう。


「生き方って難しいからね、でもねエーフィー、この私の短い星生でも、変わらない事実が一つだけあるんだ」


「星生って……」


「いいかい? 落ち込んだり悩んだりした時はね、とりあえず美味しい物を食べて寝る事だ」


 ただの食いしん坊発言に聞こえたが、妙に説得力があった。

 

「本当に? それが真実なの? 疑いようもなく?」


「ああ本当さ! これだけは人の歴史を見ても一切変わってないと断言できるね! 皆美味しい食べ物には抗えない。次第に壁なんてどうにでも良くなるってものさ!」


 たまに本を読んでるかと思えば、そう言う事を勉強していたのか。


「そして時に空を見上げ、星を見る。人は星が大好きなのさ。だからさ、星に纏わる物語だって世の中数多く出ているだろう? この星の形がこうなって見えるってこじつけてまでさ!」


「美味しい物を食べて星を見て寝る?」


「うん!!!」


「いつも通りの生活じゃないそれ……」


「そうだよエーフィー! だから君は幸せ者なのさ!」


––––

––––––––


 翌朝、私達はリンドの国に降り立つ。

 軍事国家なだけあって、何隻もの飛空挺が降り立っており、皆仕事に励んでいた。

 中には魔物を入れた鉄牢も見かける。一体何に使うのだろうかあれは。


「おお、壮観だなぁ。リンドの空港はエーレに比べて無骨だから、そこら中に大きな部品が転がってるねぇ」


 工房、ついで空港と言った所だ。

 とりあえずさっさと仕事場に行き、状況を確認する事にする。


「えーっと、ここからは箒での移動……は禁止なのか。じゃあ駅に向かわなきゃだけどー…

…あそこか駅」


 エーレ以外での国は、箒での移動が禁止されてるのが殆どだ。何せそこら中に小型艇が飛んでおり、空路交通法なるものが敷かれている。


「たまには地上の旅もいいものよね」


 汽車に乗り、中心街を目指す。

 時たま心臓が高鳴るのは、緊張からだろう。


(上手く出来るかな……不安になって来た)


 汽車から降りると、目的地の場所は目の前にあった。

 城壁での任務と聞いて来たのに、どうして中心街まで向かわなければいけないのだろうと疑問に思う。

 だが考えるのは話を聞いてからなのだ。今はとにかく勇気を持って建物に突っ込むのみ。


「ご、ごめんください!」


 扉を開けると、簡素な事務室である。

 机に何人かの職員さんが椅子に座りながら、書類とにらめっこしているのだ。


「ん? どの様なご用事で」


 白髪頭のおじいさんが受付をしてくれた。

 事情を話す。すると大きな相槌を打った後、後ろにある資料を一枚差し出してくれた。


「君がエーフィー・マグだね? じゃあ早速宿屋に行って荷物を置いて、現場に向かってもらおうか。頼んだよ」


 貰った紙に住所が記載されていたので、その通りに道を進む。

 リンドの街並みはやはり無骨で、石の家達は合理性の追求、遊び心など微塵も感じられない。


 宿屋に着く。

 幸いな事に、ここには公衆の大浴場が付いてるとのことであった。仕事終わりの楽しみがあるのは気持ちに繋がる。

 部屋は普通の簡素な物だが、下手に豪華なのも気が引けるので、心地よい。


「さって、今からお仕事だね! 気合入れるぞー!!!」


「そのいきだよエーフィー! 大丈夫さ、私も付いてる!」


 と、言うことで早速再び駅に向かう。


 城塞行きの汽車を降りると、目の前で体格の良い男達が、大砲の玉の積卸を行っていた。

 そこまでの量が必要な程、外壁の外には魔物が出るのだろうか。


(魔王の動きが活発になってる証拠なのかも、怖いなぁ)


 しばらくじっとその光景を眺めていると、後ろからトンっと肩を叩かれる。

 振り向くと、そこには少し痩け気味の女性が立っていた。その顔立ちでピンとくる。


「あら? 可愛らしいお嬢さんがいらしたじゃない。あなたがエーフィー・マグ?」


「こ、こんにちは! 初めまして!!」


「うふふ、緊張しないで。まだ学生さんと聞いたけど大丈夫。この任務はそこまで難しいものじゃないわ。箒で空を飛べる時点でこなせないことはないの」


 それを聞いて安心する。

 一番苦しいのが、報酬無しとかよりも、仕事をこなせないことなのだ。

 

「えっと、砲弾に魔力を込め続けるのですよね?」


「そうよ、とりあえずやり方は今から教えるから、しっかりと覚えてね?」

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