でかいヤマを任されちまったぜ!
「ええ!? 魔物の駆除ですかぁ!? えーーーいきなりですね」
便利屋、ペグヴェームで働き出してから役一ヶ月が経とうとしていた所。もうそろそろ良いだろうと、街の使いパシリよりも遥に稼ぎの良い依頼を提示されているのだが、如何せん戦闘が混じるとなると話は別である。
「何よー文句あるー?」
相変わらず蒸留酒を喉に通しながら、シャーリーさんは密など無視に執拗に体に絡み付いてきていた。そこまで食生活も乱れに乱れまくっているのに、この体型の良さはなんなのだろうか。
それに、いつも同じ銘柄のお酒だ。お気に入りかな?
「いーえ、何も文句はありませんよー! でも魔物かぁ……って、このエーレにですか? そんな馬鹿な」
「んな訳ないでしょー。この国に魔物なんて出た日にゃ一大事どころの話じゃないわよ。そんな出来事、魔王の完全復活意外ありえないって。遠征よ遠征。リンドからの依頼よ」
「リンドって……違う国じゃないですか!! え? え? 飛ばされるのですか自分」
マギシューレンでの勉強もあるのに、そんな遠くでの長期滞在なんて無理無理無理なのだ。
「ま、魔物駆除って行っても後方だから。怪我しないとか限らないけどほぼ安全よ? それに一週間の旅行みたいなものよ。丁度向こうの魔術師が体の具合が悪くて休みたいらしいからさ、金の掛からない貴方が抜擢されたって訳。ふふふ、魔術師として初の仕事じゃない!」
魔術師として……初の仕事……? まじで? この私が?
「え、でもでも、私攻撃魔法なんてなーーーーーーーーんにも出せないですよ! そんな落ちこぼれの底辺が戦いの場に出ても邪魔になる未来しか見えないんですが!? ですがぁ!?」
「ふぅ、ちょっと飛躍して話し過ぎたわね。きちんと説明するとね」
魔術師というものは、何も魔法を生み出すだけが仕事ではないのである。
先日の鍛冶屋の様に、火元を増強させる増幅魔法。魔力を物体に流し込み、様々な効果を摘出させる流動魔法。そして、自信の身体能力を強化させる、付属魔法。と、世の中には色々な種類の魔法があるのである。
ちなみに、感情を読み取る「ゲフュール」は、どちらかと言えば付属魔法に分類される……かもしれない。
今回の依頼は、中にある流動魔法を主に行う様だった。
リンドは城塞都市だ。依頼内容は、城壁にある大砲に魔力を込める単純なお仕事。
魔法使いにとって一番簡単な技術は、物に魔力を込める流動魔法だ。いつも乗っているカスタム箒も原理は同じなのである。
「こ……これなら私にも出来る……!!」
「ふふふ、流石にそこはきちんと調べて受注しているよ。単身で魔物を退治してこいってのは無理だもの」
「でも、リンドかぁ。あそこはなんかですねぇ。こう、ビシッとし過ぎてるというか。お堅いですよねぇ」
「まぁ軍事国家だしね。魔王の城から離れているからって、その脅威を食い止めるのがこの国の仕事だし。ま、良い経験になるよ」
そうだ、良い経験になる。自分には経験が必要だ。他がダメな分、それを補う何かが必要なのだ。
「ところで、気になる報酬の面なのですが……!」
一番重要な事である。
私はお金で動く。決して安上がりでは済まさないぞ!
「うーん、これが成果給なのよね。正直いくらになるかは解らないの。でも、一般的な魔術師が稼ぐお金よりかは貰えるかもね。また100万デルくらいなんじゃない?」
ウッヒョ〜〜! それはかなりの大金じゃないですか! やった!
「顔に出てるぞ。可愛らしい乙女がはしたない」
おっとっと、気をつけなければ。
「そういえば、どうしてこの前の街のゴミ箱の設置はあんな額貰えたんですか? かなりの法外な値段でしたけど……気を使ってくれたり?」
「アッハッハ! そんな訳ないじゃない! ほんっと、あの市長には困り物なのよね。私と会うために金で釣ろうとするんだもん」
あ、なるほどそういうことね。納得。報酬と言うよりは接待費用みたいなものだったのか。にしてもシャーリーさんも苦労してるんだなぁ。周りに変態しかいないのかもしれない。
「でもおかしいのよね……最近あの市長、めっきりセクハラをしなくなったみたいなのよ。夜の街には遊びに行くらしいんだけど、どこか健全になったと言うか……まぁいいか」
あのナメクジみたいなねっとりした視線を思い出すと吐きそうになるが、それが無くなったと思えば幸いだ。きっと闇に蠢くダークヒーローが懲らしめてくれたのだ。
「よし、まぁ承諾と言う事で良いね? 一週間くらいなら学校に行かなくても平気でしょ? 試験はこの前終わってるはずだし」
「ええ! それくらいでしたら授業にも出なくて問題ないです! あぁ……魔術師の仕事かぁ。大きな一歩の為の小さな一歩……」
昔からの憧れに、一つ近づく事が出来た。
いっぱい学んで、いっぱい成長しよう!
「はいこれ、飛空挺のチケット。無くさない様にね。それと、全部経費で切りたいから細かな明細書は全て保管する事。後これ別途で旅費ね」
小さな皮袋の中に、お金と紙を挟む冊子が入っていた。これは貴重品だ、無くしたらいけない。これも全て試練なのだ。
「いきなりだけど、出発は明日の十二時手前よ。二時間前には発着場に着いて、きちんと待ってる事。貴方一人だけど大丈夫よね?」
実は星が一個いることをシャーリーさんは知りもしない。
「了解です! エーフィー・マグ、出陣してきます!」




