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そして歴史は繰り返される…… ~魔王を倒したその後~

作者: 3ツ月 葵

 とある世界のとある時代、世の中は混沌と狂気に満ちていた。

 世界の半分以上を魔族が支配し、その闇の力によって支配された土地の草木は枯れ果て、清らかな泉は毒沼へとあちらこちらで変貌を遂げていく……。

 そんな中ではあったが、ビクビクしながらも残された狭い土地で人間たちは助け合い、肩を寄せ合いながら生き延びていた。

 人間が住んでいる国々を治める王様たちは連合を組み、いつか魔族から世界を取り戻そうと画策はするが闇の力へと対抗しうる手段を持たなかったが為に長きに亘ってどの国も魔族に支配されていくがまま手をこまねいていくばかりであった。


 そんな折、この世界を創りし神の祝福を受けた光の化身とも言うべき赤ん坊が誕生した。

 この赤ん坊は神の祝福によって闇の力の影響を受けず、闇に支配された土地でも毒されずに生きていける強さを持っていた。

 それ故に魔族による暗殺の危機もはらんでいた為、誰にも見つからぬ場所でひっそりと大人になるまで育てられ、人間たちにとっての唯一の希望の光として来たるべき日に備えて只管に修行の日々を送っていたのである。


 この赤ん坊はいつしか「勇者」と呼ばれる様になり、15歳の誕生日を迎えて成人すると立派な体躯をした男となり、魔族らに反旗を翻すべく旗印となって魔族を統べる魔王討伐へと向かった。

 唯一にして絶対の強気闇の力を持つ魔王の住む城に近くなればなるほどに勇者しか近づくことができず、ただ一人という心細さがありながらも世界中の人間たちの思いを背負い、大地を強く踏みしめながら進んでいった。


 そして勇者は戦った。

 大きな傷を負いながらも、勇者はそれでも尚戦った。

 皆の希望と期待を胸に抱き、自分は逃げることを許されない立場だと理解し、神より与えられた使命ともいえる光の力を行使して戦った。


 そうして………、勝った。

 魔王と一対一の孤独な戦い、途中無理かもしれないと思う事もあった。

 だが勇者は勝ったのだ!


 勝者となった勇者は方々に散って悪さをしていた魔族を魔王城付近だけの小さな土地の中に閉じ込め、魔族にさらわれていた某国の姫様も助け、魔族に支配されていた土地を開放しながら母国への帰路へとついた。

 母国に着くと登城して王様へと報告し、その報告は瞬く間に世界各国へと拡散され、英雄となった勇者は様々な国からたくさんの褒美を貰う事となった。

 その1つが前に助けた某国の姫様と結婚するというものであり、付随してその国の次期国王として是非にと国民からの声もあって迎え入れられたのである。

 ここまで、勇者の人生はとても晴れやかなものであり、世界を救った英雄として老若男女に愛され、誰もが尊敬する様な人生を送っていた。


 だがしかし、一年、二年と月日が経ち、子供もデキた勇者はふと我に返った。

 人生このままでいいのだろうかと………。

 身分としては平民として生まれ、今では次期国王という地位にまで上り詰めた。

 使いきれぬ財産もあるし、自分の欲しいものは何でも手に入った。


「しかし………つまらぬ。」


 刺激が欲しかった。

 生まれてから長きに亘って修行に費やし、その後も数年を戦いに費やし、自分の人生は魔王を倒す事だけに存在していたと言っても過言ではなかった。

 そんな人生しか知らぬ勇者には、最初は何よりも欲しかったこの安穏とした日々は次第に耐えられなくなっていった。


「なにか……、なにか………。」


 それからというもの、勇者は刺激を求めて城を抜け出すことが多くなった。

 何をすれば自分は満足するのか……、どうすればこの衝動を抑えることが出来るのか……。

 勇者は悩んでいた。

 市井にお忍びで出ては酒をかっくらい、夜遊びを繰り返した。

 

 最初こそ身分を隠してはいたものの、段々とそれは緩み、罪悪感や背徳感などは消え失せて行った。

 自分が勇者だと身分を明かせば抱けぬ女などいなかった。

 プロも素人も……、気になった女は根こそぎ抱いた。

 仲の良い夫婦と言われていたのも今は昔……。

 そもそもが一夫多妻の制度をひいている国なので、姫様以外の女に手を付けた程度ではそれ程大きくは支障が無かったが………子供が生まれた。

 市井で手を出した街の娘にうっかりと、自分にそっくりな顔をした子供が生まれてしまったのだ。

 子供が出来てしまえばそれはまた別の話……。

 姫様や現国王に知られ、この事が公になってしまえば跡継ぎ問題やら養育費や遺産の問題やらが出てきて平民の女との子供だということで揉める事となってしまう。

 さあ大変だと、勇者は更に悩んだ………。


「どうしよう………、どうしたら…………。」


 自分にはどこの国の王様よりも強く大きな権威があった。

 だから逃げることも可能だ……。

 だがそれではまた同じことを繰り返すだけかもしれないし、なにより面白くない。

 ひとしきり悩んだ末………、勇者は悩むのを止めた。


「そうだっ! 世界征服をして、自分に都合の悪い事は全て消してしまおう! 都合の悪いヤツ毎全て消してしまおう! そしてもっと自分の思うままに生きるんだ!!」


 勇者は一騎当千の力をもって、人間の国を一つ残らずすぐさま攻め滅ぼし、加えて魔王の居なくなって弱体化した魔族をも配下にくだし、世界の全てを手中に収めた。

 人間の誰よりも強いのは勿論のこと、すっかりと心が荒んで闇に落ちた勇者は多くの魔族にさえ敬われる存在となってしまい、こうなってしまってはもう誰も逆らえるものはいなかった。


 が、それを歯がゆく思う者がいた。

 許せないと思う者がいた。

 勇者の手の平を返す様な所業に落胆し、奮起する者がいた。


 次代の魔王として産まれ、親である魔王が倒された後は反逆の機を窺って爪を研いで地下深くに潜んでいた魔王の娘が言った。


「あれは最早ただの親の仇ではない。この世界に生きるもの全てにとっての敵だ。今は……今こそ人間どもと手を取り合い、あの脅威を排除するのだ!」


 勇者が次期国王として入った婚家である国の現国王を中心とした、人間の国を治める各国の国王たちは言った。


「これはもう、新たな魔王。新たな脅威である。同じ敵を持つ者同士、今は同盟を組み、魔族と共に協力してあの脅威の塊となった元勇者を……倒すのだ!」


 斯くして人間の国を治める王たちと、魔族たちを統べていた魔王の忘れ形見が手を取り合い、この世界を自分たちのもとへと取り戻すべく、立ち上がったのである………。

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