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俺が魔法少女になるんだよ!  作者: 赤しゃり
本編

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皆底に沈む ⑦

無数の閃光が走る中を必死に避け続ける。

目前を掠める熱線の一端にでも触れた途端、その部位は炭と化すだろう。

死を予感させるそれを間一髪で避け続けられるのは、他でもないネロちゃんのお蔭だ。


「あちゃちゃちゃぢゃぢゃ!!? ちょっとこれ洒落にならないくらい熱いんだけど!?」


「大丈夫です、死なない程度に弱体化出来てます!!」


「私が無事じゃないのよ何一つ!!」


確証はなかった、しかし予兆はあった。

初めにこの熱光線による不意打ちを受けた時、ネロちゃんだけが見切って私を突き飛ばしてくれたのだ。

彼女は光線を見切っていた……いや、ネロちゃんの周囲ならンロギの力は減衰する。


『チッ……その力を誰に向けて振るってんだぁネロォ!!』


「いくら凄んだって……もう怖くないわよ! 私はもうあなたの道具なんかじゃない!!」


死中に求めた賭けは成功だった、ネロちゃんの知覚を通過した光線は私でもなんとか躱せるだけの速度と威力にまで減衰している。

まして彼女本人に直撃する光線に至っては「熱い」で済むレベルだ、流石に何発も受けてはいられないようだが。


『僕に向けられねえようにセーフティは掛けたはずなんだがなァ、一体どこで外しやがった?』


「私だけじゃ、あんたに反抗する気も起きなかったわよ……!」


『そうか、じゃあそこの出来損ないが元凶か』


「……!」


ンロギの視線が私へ向けられると同時に、全ての熱線が私に照準を合わせる。

今までも精いっぱいだったところに倍の砲門、回避は絶望的だ。

ネロちゃんへの攻撃は効果は薄いと見て先に私を焼き尽くす気か、だがそれならそれでいい。


「私を無視すると――――後悔するわよっ!」


『チッ……!』


照準が外れた瞬間、一気に距離をネロちゃんの掌がンロギの肩を掠めた。

平手打ちでも、グーで殴るわけでもない、彼女はただ触れるために手を伸ばしただけだ。

だが、それでもンロギは咄嗟に身を捻って()()した。


「やっぱり……私が触れるとまずいみたいね!!」


『お前……お前ェ……!!』


僅かながら、ネロちゃんの掌が掠めた部分は風化し、闇の中へ溶けていく。

やはり彼女が持つ賢者の石を打ち消す力は、この防衛システムにも有効だ。


『お前ごときに……よくも俺に、回避させやがったなッ!!』


「そんなんだから友達いないのよ、創造主!!」


「ネロちゃん、ちょっと下がって!!」


「ぐえっ!?」


怒りを噴出させるンロギを前に嫌な気配を感じ、ネロちゃんの襟を掴んで手繰り戻す。

四半秒前まで彼女がいた場所へ代わりに振り下ろされたのは、鉄の塊にも似た歪な大剣だった。


「ひえ……!」


『ネロォ、お前の性能ぐらい俺が把握してないとでも思ったか? お前に与えたのはあくまで賢者の石がもつ力の減衰であり、無効化するわけじゃないんだよねぇ!!』


「わーわーわー!? バックバックバック、あんなの喰らったらひとたまりもないわよ!!」


「ら、ラジャー!!」


10の力が1まで減衰してしまうなら、100の力で叩きのめすといわんばかりの力技だ。

実際にあんな鉄塊で押し潰されれば、1/10の力でも十分死んでしまう。


「ネロちゃん、こちらの勝利条件は!?」


「何とか懐に潜り込んで一発触れる! それだけで十分無力化できるわ!」


「そうですか、ではあのブンブン振り回してる剣を躱して潜り込めます!?」


「その間に10回は死ぬ自信があるわ!!」


「ですよね! 私もです!!」


悲しいかな、一発さえ当たれば勝てる見込みはあるのに2人揃ってスペックが足りない。

例え運よく接触出来たところで、その間に2人のどちらかは犠牲になることだろう。


「けどこのままじゃジリ貧よ、逃げ道だってどんどん狭まっている」


「ええ、その通りですね……もう、行き止まりです」


走り出してまだ10mも逃げず、見えない壁によって戦略的撤退は阻まれた。

後方からは大剣を引きずりながら近づくンロギの気配、どんどん狭まる空間に逃げ場はない。


「……ど、どうする? こうなったらもうイチかバチかしかないわよ!?」


「いいえ、まだ諦めちゃ駄目です……これだけ狭まったらそろそろのはずなんです……!」


「何よ、そろそろって!」


「まだ外で必死に戦っている仲間たちの事です!」


『なにグダグダ話してんだ、命乞いなら――――』


ゆっくりと歩み寄るンロギが私達を剣の間合いに捕らえる……その寸前、今まで以上の振動がこの空間全体を揺るがす。

立つことすら難しい衝撃に、その場にいた全員が膝をついた。


『なに……!?』


「間に合ったぁ!! ネロちゃん、今です!!」


「っ――――――!!」


危機一髪で生まれた明確な隙、これを逃すわけにはいかない。

姿勢を崩したンロギに向かい、倒れながらも跳んだネロちゃんの掌が今――――接触した。

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