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俺が魔法少女になるんだよ!  作者: 赤しゃり
本編

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ハイウェイ・デッドヒート ⑩

刹那、我等が肉体はこちらの世界から完全に消失している。

魔法少女に世界をまたぐ術はない、故に詰みだ。 彼奴等の攻撃は我等に届かず、我等の先を走らせない。

陣の完成は目前、我等が勝利を確信し、再びあちらの世界へと肉体を引き戻す――――


「――――よう。 数秒ぶりだな、首なし魔人」


紫電と白砂、深紅と蒼炎が舞う。

我等の目前に不敵な笑みが立つ、我等より先に―――我等より速く。


「お前の特性はだいたい分かった。先に言っておくが、もうお前は不死身じゃない」


あなや、ならない。 先を征かれてはならない。

その先に決して、我等の道はないのだから。


「スノーフレイクと同じだ、お前を守っているのはエネルギーの魔力変換。 だがそれは完全じゃない」


先に立ちふさがる赤き魔法少女が合図を下すかのように片手を振るう。

その号令に従ってか、地中から伸びた巨大な刃が無数に重なり、壁となり彼奴の背後を隔てた。

進路は断たれた、背後から迫るのは奇天烈な鉄馬車――――脚を止めれば刹那と待たず死が訪れる。


「速度の鈍化が限界なんだろ、それも自分を超える速さのものは止められない。 銃弾が効かなかったのは背後からの攻撃は速度を鈍らせた間に()()()()ことができるからか」


口惜しい、陣の完成を目前としながらも……万事休すとはこのことか。


――――――――…………

――――……

――…


背後に展開したのはガス欠のライナを隠す目くらまし、そして万が一の防波堤でもある。

俺を突破しても刃の壁がデュラハンをせき止めてくれるはずだ。

これでようやく……足を止めて戦闘に集中できる。


「悪いな、ダービーはここまでだ。 お前にゴールテープは切らせない」


首のない魔人は声を発さない、しかしそれでも臨戦態勢に入ったということは分かる。

その腕にはいつの間にか分厚い大剣が握られ、嘶く骨馬は俺を踏みつぶさんと前足を高く上げる。

だが遅すぎる。 もっと早い段階で俺たちを殺す気なら、もっとやり方もあっただろうに。


「ハク、後ろだけ気に掛けてくれ。 壁の向こうのライナに何かあればすぐに報告」


《任されました、マスターも飛びこされないようにしてくださいね!》


「もちろんだ――――よっ!!」


振り落とされた前脚を躱し、飛び散る火の粉と石片を旋回させた長刀で振り払う。

足を止めたとしても油断するな、魔人の巨躯はそのまま絶大な破壊力へと変わる。

火の粉は牽制と目くらまし、馬の脚すら布石だろう。 本命は間違いなく……


「……剣だな」


荒れ狂う突風が頭上を掠める。 

この戦闘で間違いなく一番の破壊力を込めた剣撃だ、しかし真一文字に振り抜かれたその剣は俺を狙う気が欠片も無い。

あくまで狙いは背後の壁――――魔法陣の完成を阻止する長刀の刃が、紙細工のように切り裂かれる。


《あいつ、この期に及んでまだ逃げる気ですか!?》


「いっそ清々しいな、だがさせるかよ!!」


強引に撫で斬られた壁は魔人の体躯なら悠々と飛び越えられる。 案の定、俺を無視して再度走り出そうとする始末だ。

だが俺も隙だらけの背中を見送るほど間抜けじゃない、逃げる馬の尾を力任せに鷲掴む。

魔人の馬力は恐ろしいものだ、それでも灼火体のスペックなら拮抗できる。 


「あくまで拮抗だが……速度を殺されるのはお前に取っちゃ拙いだろ?」


一瞬でも動きを止めれば、魔人を守る魔力転換の鎧は意味を成さない。

あくまで逃げようともがく魔人の頭上から降り注ぐのは、大気を素材に生成された長刀の雨だ。

ラピリスを相乗した灼火体の刃は魔力を切り伏せる。 絶え間ない刃の雨は俺ごとデュラハンの外皮を確実に傷つけていった。


『――――おい、無事か!!』


「遅いなぁドクター、もうこっちは片付く……ぜッ!!」


ようやくドクターの車両が俺たちに追いつく、しかし加勢の必要はもうないだろう。

降り注ぐ長刀に怯んだ魔人の馬力が一瞬緩んだ隙を逃さない。 掴んだ尾を全霊の力で振り上げ、路面へと叩きつけた。

デュラハンから零れる火の粉が鮮血のように飛び散り、路面一体に夥しい火柱を生み出していく。


ビクリ、ビクリと跳ねた身体は……もはや二度と動く事はないだろう。

路面に叩きつけられたデュラハンの胸元には、巨大な長刀が突き刺さっているのだから。


「……HeyHey、ブルームゥ? 道路の修繕だってお金かかるんだヨ?」


「わ、悪い。 つい勢いでやっちまった……」


デュラハンを叩きつけた衝撃で路面はぐしゃぐしゃに粉砕、その上に火柱の熱波で一部が融解してしまっている。

この道路の修繕に掛かる費用と労力は……あまり考えたくないが、作業員の方々にはあとで土下座しなければならない。


《まあまあ、魔人は倒せたのでOKですよ。 まずはお疲れ様です、マスター》


「ああ、お疲れ……しかし、最後は随分あっさりと倒せたな」


魔人の抵抗は予想していたが、想像以上に勝負が一瞬で片付いてしまった。

果たしてこの魔人の目的は何だったのだろう、今となっては魔法陣の目的すら分からない。


《うーん、魔法陣に関しては後でシルヴァちゃんに解析してもらうしかないんじゃないですかね? 杞憂って可能性もありますよ》


「そりゃそうだが……いまいち気にかかるな」





「……へぇ、良い勘してんじゃん。 流石この世界の賢者の石ってとこか?」


――――背後から伸びて来た腕が、俺の頬をぬるりと撫でた。

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