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俺が魔法少女になるんだよ!  作者: 赤しゃり
本編

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再現される達人芸 ②

「――――箒! 古村さんは!?」


夕焼けに照らされた病院の廊下を歩いていると、向かいから息を切らせたアオが走って来た。

知らせを聞いて慌てて駆け付けたのか、額に大粒の汗を滲ませながら肩で息をしている。


「落ち着け、突き当たりの病室で眠ってる。 傷に障るからあまり騒ぐなよ」


「ええ、大丈夫……大丈夫です、私は落ち着いています。 彼女の容体は?」


「あまり良くはない、通常の医療じゃ回復は無理だ。 だから俺はこれから元凶を断ちに行くよ」


「…………箒。 あなた今、酷い顔していますよ」


「……ああ、本当だ」


窓ガラスに映った俺の顔は、アオの言う通り酷いものだった。

腹の底から沸き立つ殺気が隠しきれていない、こんな顔で出歩いたところで相手が出て来てくれるはずもないだろうに。


「悪いな、変なもん見せた。 俺は行くよ」


「待ちなさい、元凶に心当たりがあるのですか? なら私も……」


「駄目だ、お前じゃついてこれない」


アオの制止を突き放し、足も止めずに廊下を歩き去る。

灼火体の事を考えると同行者が増えるのはありがたいが、今回の戦いは他人を巻き込めない。

……どれだけ強い味方だろうと、戦う相手を忘れてしまえば足手まといでしかないのだから。


「ドクターの事は任せてくれ、元凶は必ずこの手で殺す」


「……箒。 あなたは……」


あいつは月夜の名と姿を騙り、あまつさえその手で人の命を奪おうとした。

到底許せるものではない……俺は七篠 陽彩として、妹の偽物を殺さなければならないんだ。


――――――――…………

――――……

――…


《マスター、行く当てはあるんですか!?》


「ない、だからしらみ潰しだ! お前は覚えているだろ、あの月夜もどきの事を!」


《そうですけどねー! 砂漠で砂粒探すような話ですよ、監視カメラとか探っても無駄でしょうし……》


ドクターの胸部に開けられた風穴、その傷口にしみこんだ魔法は間違いなく“奴”の仕業だ。

どういう経緯があったのかは分からないが、おそらくドクターに知られたくないものを知られてしまった。 だから口封じに走ったのだろう。


《えーっと、東京まで飛ばしてみますか?》


「居座っているとは思えないな、それに今あの場所に忍び込むのも楽じゃない」


東京の周囲には雲の上までそそり立つ天の壁、そのうえ周囲は京都を中心に厳重な警戒網が敷かれている。

ドクターのような裏技でもない限り、忍び込む事だって楽じゃない。 それに成功したところで内部は未だ濃い魔力で覆われている。


「目撃者の記録を抹消する体質、潜伏に徹されたらお手上げだ。 痕跡だって髪の毛一本たりとも残っていないだろうよ」


《それじゃこうして探すのも完全な無駄足じゃないですか! どうしろって言うんですそんな相手……》


羽箒に乗り、上空から目下の街並みをくまなく見下ろすが、運よく見つかるはずもない。

こうして手をこまねいている間にも日は沈む、このまま夜になれば捜索は困難になる一方だ。

“持って一日”、ドクターの言葉が真実ならばあまり時間は残されていない。


「――――手がかりなら、ある」


こちらから探して見つかる可能性は低い、ならばどうするか? 相手から現れるのを待つしかない。


「ハク、店で出会った時に奴が言っていた台詞を覚えているか?」


《……白雪が降る頃に、ですか?》


「ああ、“冬まで待て”という意味にしては少し回りくどいと思ってな」


店で出会った時から、どうもあの言い回しが引っかかっていた。

だけどもし、あのセリフが再開するための合図だとしたら―――


「冬まで待っているような時間はない、何か意味があるはずだ。 あいつの言葉の真意を解くしかない!」


時季は未だ秋、当然ながらまだ雪が降るまでの気温には届かない。

……なぜだ、なぜあいつはわざわざ「雪が降る頃に」なんて条件を付けた?


―――雪が降ることに、一体何の意味がある?

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― 新着の感想 ―
[一言] ブルームやコルトに対しては気安く呼び捨てなのに、古村「さん」と呼んでいる心の距離にドクターは肉体的だけじゃなく精神的にも致命傷…! 愛情も友情も重いタイプの葵にすらさん付けされる、程よい距…
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