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俺が魔法少女になるんだよ!  作者: 赤しゃり
本編

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白雪が降るころに ②

「…………ふむ」


ゲームチェンジャーの画面に映った映像を確認し、唸る。

解像度が荒いのは魔力の密度が濃すぎるせいか、ドローン越しでは流石に限界もある。


共犯者(ローレル)の置き土産という訳ではなさそうだな、氷と植物では明らかに形質が違う。 それに根本的な部分で食い違いがあるようにも思える……」


口から零れる思考を改めて耳で聞き取り、問題を整理する。 魔法少女ですら近づけない濃度の魔力など自然発生するものではない。

東京内部では未だローレル戦の爪痕が残っているようだが、天の壁に閉ざされている状態なら外部……それもこんな離れた所まで発生するわけがないのだ。


「それも東北、彼女達の拠点に向かって伸びているなんてね」


何らかの意思が介在していると考えた方がいい、この現象を起こしているのは明らかな知性体だ。

だが、そうすると必要なのは敵の正体とその解析。 先に嗅ぎつけたあの姉妹のように自分も一度東北へ戻るべきか?


「……ちょっと君、そこで何してるの! 危ないわよ!」


「待ってください先輩、あの姿は指名手配中の……」


「おっと、見つかったか。 面倒ごとはごめんだ」


≪―――――“墓荒らし(デッド・コピー)”!≫


没収されたカセットは回収できていない、頼れるのはあの病院に仕込んでいたこの一本だけだ。

動作が不安定な失敗作だが、何もないよりはマシだ。 もし失敗してしまったら、その時は……


「……()()が1つ減るだけだ、気楽に行こう」



――――――――…………

――――……

――…



「えぇ、こっちに来るのかね? うむ、うむ……分かった、明日また対処しよう。 それでは」


「HEY! ただいま戻ったよ局長! ……って、なんか顔色が悪いネ?」


「ああ、おかえりコルトクン。 まあねぇ、仕事が溜まっているのだよ。 縁クンが抜けた穴は大きいね……」


朝よりも高く積まれた書類の山に埋もれた局長が片手の携帯を引き出しに戻し、机に突っ伏す。

この仕事も以前は殆どローレル……もとい葛城 縁が片付けていたものだ。 

知らず知らずのうちに根を伸ばしながら魔法局へ入る情報をほとんど一人でかき集めていたのだ、いなくなった後の穴は相当大きい。


「代わりの人を雇えるといいネー……手伝おっカ?」


「いや、これは私がやらねばならぬ仕事だよ。 街の方はどうだったかね」


「魔物が一体沸いてたヨ、こちらの被害はないけど一応シルヴァーガールはメディカルチェック中。 私もこの後向かうカナ」


「そうか、また出始めたか……怪我がなくてよかった、報告書だけ頼むよ」


「OK……あー、でも倒したのは私達じゃなくてブルームなんだよネ」


魔物を倒したり目撃した場合、めんどくさい書類を書かないといけない決まりがある。

自分達で討伐した場合は問題ないが、他人……それも野良の魔法少女が倒したとなると報告書の規定がより面倒くさいものになるのだ。


「む、ブルームクンか。 それならいつも通りの書式で構わぬよ」


「あれ、いいのカナ? まあ文句を言うような人も余裕も今のこの支部にはないけどネ」


「もはや彼女は我々の仲間のようなものだ、それにこうしたところからこつこつと外堀を埋めていつかは魔法局に登録を……」


「うわー、悪い事考えるようになったネ」


「それだけ人手が足りないのだよ! ……と、そうだそうだ。 人手で思い出したがね、悪い話ばかりでもないぞ」


局長が書類の山から一枚の髪を引っ張り出す、「特別出張許可証明書」と書かれたその紙には知っている魔法少女の名前がプリントされていた。


「ツヴァイシスターズ……ああ、あの姉妹の魔法少女だネ。 それが何で東北に来るのサ」


「例の凍結事件の調査に駆り出されたらしい、あれの痕跡がこの地に向かって伸びているのは知っているだろう?」


「あぁ、なるほどネ」


ツヴァイシスターズ。 肉体労働担当の姉と頭脳労働担当の妹、見事に役割を分け合った姉妹の魔法少女。

駆り出された、ということはロウゼキさんの指示だろうか。 何はともあれ人手が増えるのは助かる。


「ま、懸念事項はまだまだ多いけどね……ゴルドロスクゥン、アメリカからの激しいアプローチが飛んできているんだけどねぇ……」


「ヤダー!! 私はもう海外支部とは関わらないヨ! キャプテンに怒られるのはまっさらごめんだヨ!!」


「じゃあこっちだ! 某エンタープライズから魔法少女の民営化に関する打診がだね……」


「なんで私にばかり面倒そうな案件押し付けるのサ!!」


「我が支部に所属する魔法少女の中で君が一番交渉事が出来る人材だからだよ!!」


「………………Ahー……」



――――――――…………

――――……

――…



「……あ、お帰りなさいお兄さん。 買い物ですか?」


「っと、アオか。 ちょっと料理酒が切れててな、所で何しているんだ?」


早朝の魔物退治を終え、裏口から店に戻るとアオと出くわした。

アオはエプロンを巻き、厨房で何かを作っているようだが、昼食にしては少し早い時間だ。


「それがですね、私の友人が病院食は不味いと文句がうるさくて……条件付きではありますがこうして連れて来た次第で」


「友達じゃねえし! つーか到着したなら目隠し外してよマジで! おーなーかーすーいーたー!」


「うるさーい! これでもかなり譲歩したのですから少し我慢してください! まったくもう、ごめんなさいお兄さん」


「ははは、なるほどなぁ。 そういう事なら俺が何か作るよ、アオはその子と一緒に待ってな」


「むぅ……ご迷惑おかけします」


アオも俺に任せた方が早いと判断し、素直に作業を引き継がせてくれた。

この進行具合なら残りの作業は5分も掛かるまい、腹を空かせた育ちざかりたちを待たせることもないだろう。


《……マスター、今の声ってもしかして》


「ああ、元気そうで何よりだな」


魔女の皮を脱げばヴィーラも形無し、しかしその割に姦しく聞こえてくる声から憑き物が落ちたような印象を感じる。


「……あ、ちょっとコックさーん! この後うちらの友達も連行……いや、合流すっから! あと2人追加で頼んます!」


「はいはい、もう少しだけ待っててな」


さて、病院食じゃ物足りない少女たちを満足させるように腕を振るおうか。

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デン○ャラスゾンビーやんけ
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