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俺が魔法少女になるんだよ!  作者: 赤しゃり
本編

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蒼炎燃ゆる ②

俺の魔法は触れたものを箒に変える、ただそれだけのものだ。

素材となったものの材質によって空を飛んだり強度が変化したりするが、あくまで箒は箒だ。

それでも俺はずっと考えていた、この魔法の効果範囲について。


「っ……!!」


「顔色が変わったなァ、ローレル!」


植物は変わる、金属も変わる、流石に生物は試す気にはなれなかったが、それでも羽や髪の毛など生物から剥離したものなら箒に変えることができた。

そして、相手の魔力の影響下にあるものでも、それ以上の量を注ぎ込めば箒に変えることができる。

―――――()()()()()()()()()()()()()()


「馬鹿ね、出来る訳がない……私とあなたでは魔法の規模に天と地ほどの差がある!」


「その割には随分と焦っているように見えるなぁ、だったら止めてみろよ!」


ペンダントを握り締めた腕にありったけの魔力をねじ込む。

この媒体自体にはそれほどの魔力は込められていないはずだ、いつもと勝手が変わらないなら箒に変えられるはず。

正直ここから先は何が起きるか分からない完全な賭けだ、それでも俺はこいつを託したラピリスを信じたい。


《ま、まままマスター! なななんか根こそぎ魔力が吸われているんですけど本当に大丈夫ですかこれ!?》


「残ってる魔力全部注ぎ込んでいるんだから当たり前だ、我慢しろ!」


《いや、()()()()()()()()()()()()()()()()()!》


「……うんっ!?」


『ギキャアアアアアアアアアアアア!!!!』


足元で俺らが騒いでいるのが不快だったのか、今まで大人しくしていた繭が突然暴れ出す。

ローレルがひっついた腕を滅茶苦茶に振り回し、根も葉も樹木も関係なく薙ぎ倒しながら豆粒ほどの俺たちを叩き潰そうとしているらしい。


「クソ、このタイミングで鬱陶しい……!」


「チッ、どいつもこいつも聞き分けのない子……! けど、良いわ! やってしまって!」


ローレルがかけてくるようなちょっかいなら問題ないが、流石にあのサイズの腕が振り下ろされたら焼き尽くすどころの話ではない。

しかもそうこうしている間にも繭から伸びた腕は俺たちの姿を正確に見つけたのか、滅茶苦茶な軌道から一転して真っ直ぐにその掌を振り下ろし始めた。


「ああもう、邪魔すんじゃねえ!!」


繭への憤りのままに、無意識に箒状に成型された「それ」を振るった。

――――腕との距離はまだかなりあるというのに、振り下ろされてくる掌に十文字の太刀傷が深く刻まれた。


『グ……ギイイイイイイイイイイイイイイイ!!!!!』


「なん……だ、今の!?」


《マスター、箒! 箒をよく見てください!》


予想だにしなかった反撃に腕が怯んでる間に、ハクに促された箒の形状を確認する。

それはまるで子供が書いた落書きのような、ガタガタで不定な輪郭に玉虫色の光彩が張り付いている棒状の何かだった。

先端の部分が幾本にも枝分かれしているため、箒と認識できなくもないがお世辞にも上出来とは言い難い。 何より柄の部分すら枝分かれした突起が生え揃い、俺の腕を貫通している。


「っ゛! どういうことだこれ……!?」


《箒だけじゃないですよ、マスターの格好も変です!》


先ほどまで黒に染まっていた外套もまた、ガタガタの輪郭とぼやけた玉虫色の色彩に置き換わっている。

俺の体すら焼き尽くす熱波も収まったようだが、今度は別の問題が発生した。

身じろぎ一つ、衣や箒のはためき一つが真空の斬撃となって辺り一帯を切りつける。


「クッソ、止められねえ……! 暴走してんのかこれ!?」


「どうやら、賭けには失敗したようね……」


熱を失ったこの状態ではローレルの攻撃を防御出来ない、このタイミングで根や種に襲われたら一巻の終わりだ。

どうにか止めようにもガタガタの箒は元のペンダントに戻ってはくれず、辺り一面に斬撃を振りまくばかりだ。


「ハク、なんとかできないか!?」


《随分な無茶振りですねぇ! 出来るならやってます!》


「だよなぁ……ならこっちから突っ込んでやる!!」


《馬鹿ですか! 馬鹿でしたねそういや!! バーカ!!》


どうせ制御できないなら諸共だ、それにどうやらこの斬撃はあの繭にも通用するようだ。

至近距離で浴びせてローレルごと細切れにできれば上々、これが泣きの1回最後の賭けだ。


「馬鹿ね、やすやすと近づかせるとでも思っているのかしら」


もちろんローレルも肉薄されたら不味いということは分かっている、当然抵抗は先程までより激しい。

上空からは種子の弾丸、地中からは足を掬おうと根が襲い掛かる。

厄介な事に単調な攻撃では対処されることを学んで来ている、時間を掛ければこちらが不利を背負う一方だ。


《マスター、分かってると思いますがペンダントのせいかかなり不安定な状態になってます。 焼却のデメリットも消えているので四肢がもげたら次はないですよ!》


「ああ、気を付けていくよ!」


《信用できないなーまったく!》


……走りながら考える、箒だけでなく黒衣にすら影響を与えるこれは一体何なのか。

元の材質に合わせて箒の形状が変わることは少なくないが、魔法少女の衣装にまで干渉されるのは初めてだ。

元はラピリスの戦力増強に使われていた外付けの強化媒体、それが俺の魔法の影響を受けたのなら――――


「……この姿のさらに先がある、のか?」

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