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俺が魔法少女になるんだよ!  作者: 赤しゃり
本編

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422/639

朽ちた弾丸 ①

酷く気分が悪い、それでも紙面にペンを走らせる腕は止められない。

全身に浴びせ掛けられるような膨大な魔力が()()()()()()()のが酷く苦痛だ、この濃度は幾ら魔法少女でも毒になる。

それもいつかのネズミに噛まれた程度では済まない、長期戦はこちらが不利だ。


(盟友たちは、大丈夫か……? これを、より近い距離で……!)


自分の役割は目標を十分に滅せるだけの火力を備える事、繭からは十分距離を保っているがそれでも気が狂いそうだ。

腕が震える、もし一文字でも書き損じてしまえばその時点で編んだ魔力が全て台無しになる。

焦ってはいけない、作戦の要は私だ。 あの繭を仕損じてしまえば盟友たちの命が危ない。


「だ、大丈夫……じゃないっすよね、自分でも辛いっすから」


≪とんでもない魔力よねぇ~、一体どこからかき集めているのかしら≫


「いや、仔細ない。 この距離で十分だ……これ以上離れると射程圏外になる」


頭の中にあるイメージを完璧に魔術として出力できたとして、ギリギリ威力を保てる距離がこの間合いだ。

これより離れたうえで威力を保つとなれば、執筆にさらなる時間がかかる上に私の魔力が持たない。


「花子よ、むしろ其方だけでも逃げても良いのだぞ」


「冗談、あいつをぶっ飛ばさないと皆の魔力が帰ってこないっすよ。 怖いっちゃ怖いっすけど逃げてられねえっす」


「……そうか」


ここまで何度も修羅場をくぐって来たからか、肝が据わっている。

本人にその意思があるかは分からぬが、彼女はきっといい魔法少女になるはずだ。


「……どのみち、この場を乗り越えねばそんな未来も無いのだな」


滴る脂汗が本を汚す前に拭い、執筆の手を早める。

耳鳴りや頭痛に喘ぐのも、恐怖で気が狂うのも後で良い、今はただただ逆転の一手を描き続けろ――――



――――――――…………

――――……

――…



「…………ブルーム、大丈夫?」


「ん、何がだ?」


共に繭の周りを旋回している最中、ふとオーキスが口を開く。

その額には脂汗が滲み、顔色も蒼白に近い。 


「……あの繭から発せられる魔力、いつかのペストと比べ物にならないレベルだよ。 正直そんなにすました顔でいられるほうが心配になるかなぁ」


「確かにさっきから肌はピリピリするし、繭が破れる前より魔力が濃くなったのは分かるが……そんなにか?」


《ここまでくるとニブチンってもんじゃないですねー。 気を付けてくださいよ、魔法少女でも無害じゃすまない濃度ですよ》


いつも索敵や感知を任せているハクに呆れられる、俺の鈍感っぷりは相当らしい。

見ればオーキスも近づくだけでかなり疲弊しているようだ、こうなるとまともに動けるのは俺しかいない。


「無理するな、今からシルヴァの護衛に戻ってもいいんだぞ」


「冗談、独りにしたら何するか分かったもんじゃないからねぇ」


「信用されてねえなぁ……っと、向こうもこっちに気付いたか」


周囲をなぎ倒した後、今の今まで繭から伸びた腕はだらりとその腕を垂らして動くことはなかった。

しかし接近する俺たちに気付いたのか、今だらけ切った腕がピクリと反応したように見える。


「ここから先は具体的にどうする、ブルーム?」


「全力でぶん殴って気を引かせる、いくぞ!」


「やっぱそうなるよねぇ!」


気づかれたならこそこそする必要もない、箒の高度を一気に落として繭へと突っ込む。

先ほど蹴りを入れた時は繭には焦げ跡程度しかつかなったが、中身なら外装よりは柔らかいだろう。


《……マスター、ラピリスちゃんが沈む前に話してた意味、分かりますか?》


「いや……俺にもさっぱりだ」


結局返せないまま、俺の首に掛かったままのペンダントを握り締める。

ラピリスはこれが自分ではなく俺にとって必要だと言っていた、当たり前だが自分がこの媒体を使うことはできない。

このペンダントはラピリスのために調整された、ラピリスだけのアイテムだ。


『―――――ギャアアアアアアアアアアアアア!!!!』


「ああもう……人が考えてるときにうるせえな!!」


≪IMPALING BREAK!!≫


もはや耳が痛いだけの絶叫を上げ、繭の中の腕がこちらに向かって伸びる。

足元の羽箒を乗り捨て、腕に向かってぶつけてみるが―――――砕け散ることも無く、奴の表皮に当たった瞬間に消滅してしまった。


《げ、げぇ!? ままマスター、よく分からないですけど不味いです!!》


「っ……! オーキス、一度下がれ!!」


すぐさま袖元から新たな羽を取り出し、箒に変えて旋回する。

間一髪で迫る腕から逃れることは出来たが、表皮に掠ったマフラーの一部は綺麗に消えてしまっている。


「ハク、オーキスは!?」


《無事です、ちゃんと躱してます!!》


俺より距離に余裕があった分、後方から追従していたオーキスも回避に成功したようだ。

ほっと胸を撫で下ろすが、状況は悪い方に傾くばかりだ。


「ブルーム! 今のなにかなぁ!?」


「分からん! けどこれで更地の原因は分かった、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()!」


「―――――ふふふ、7割正解……というところかしらね?」


オーキスのものではない声が、俺たちの間に割り込んでくる。

その声を知らないはずがない、だが……


「……おい、あまりにも早い復活じゃねえか――――ローレル!」


「あらあら、感動の再会なのだから泣いてくれてもいいのよ?」


声の主は―――――()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

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