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鬼さんこちら ③

「ぎゃー!? もう無理、無理! これ以上は死ぬデス!!」


『気張りぃや! あのアホンダラのせいでこっちはいろいろキッツイんや!』


地中から襲い掛かる種子弾丸や藁人形の踏みつぶしを躱しながら、懸命に引き金を引き絞る。

しかしいくら的がデカいとは言え、命中した箇所を自切されてしまえば磁力で引き寄せたところで無駄だ。

なんで遠距離攻撃武器の自分がこんな曲芸じみたことをやっているのかと言えば、理由はただ1つしかない。


「―――――なんでセキちゃんいないんデスかー!?」


『ん~……呼びかけてるけど反応がないわね?』


『あいつ、あんな見栄張っといて真っ先に気絶しおったんか!!』



――――――――…………

――――……

――…


「せ、セキさん!? どうして……いやどうやってここに!?」


「いや、何か分からんけど気づいたらここにいた。 なんだここ?」


「なんだここって……」


クシャクシャと掻きまわす頭の上にハテナマークを浮かべながらあたりを見渡している。

こうして面と向かうのは初めてだが、それでもわかる。 彼女はセキさんで間違いない。

周囲を流れる走馬灯じみた記憶の映像とも違う、正真正銘本物のナマモノだ。


「えーと、自分の心の中……夢? みたいな? あーれ、でもそうなるとなんでセキさんがここに……あれ、全部自分の夢っすか……?」


「混乱してんな、落ち着け。 よく分かんねーけど花子の中ってことだろ? なら問題ねえだろ」


「そ、そりゃそうっすけど……ここにいるのはセキさんだけっすか? 他の皆は?」


「ああ、多分まだ外で戦ってるよ。 オレも早く戻らねえとな」


「やっぱりなにか不味いことが起きてるんすね! 自分も戻……」


「待て、花子。 お前も分かってんだろ、このまま戻っても駄目だってことぐらい」


セキさんの鋭い言葉に喉が詰まる。

私はまだセキさんたちに対する答えを見つけていない、どうにか彼女達が消えないための手段を考えないと私はこの先戦うことができなくなる。


「じ、じゃあどうするんすか……セキさん達はこのまま消えちゃうんすよ!」


「生まれた時から覚悟の上だ、お前が無事ならそれでいいんだよ」


「でも今ピンチって事は自分の身体も危ないんすよね!?」


「あー、そこに関しではマジで申し訳ねえと思ってる!!」


平謝りするセキさん、やっぱり私の身体の状態は深刻らしい……まあそこは構わない。

死んでしまうのは困るが皆がいなくなるのがもっと困る。


「自分がいないと魔力も回せないっす! やっぱり戻……って、どうやって戻るんすかこれ!?」


「なんかこう、お前の精神世界なんじゃないのか? ノリと気合いで目覚めんじゃねえの!?」


「セキさん達がなんかこう、不思議パワーで連れて来たんじゃないすか!?」


「「……じゃあここどこ!?」」


ギュッと目をつぶってみても、いくら起きようと念じても、頬をつねってみても目は覚めない。

辺りは変わらず走馬灯が駆け巡る謎世界のままだ、セキさんもこれは想定外なのが慌てふためいている。


「ろ、ローレルの奴が仕掛けたのか?」


「いや、流石に脈絡がないというか……ここ、どこ?」


何となく自分の夢かなと考えていたが、セキさんもいるし目覚めないしこの場所は一体何なのか。

先にセキさん達を何とかする方法を、と考えていたがこれは状況が変わった。 早く戻らないと3人が危険だ。


「ど、ど、ど、どうするっすかセキさん!? どこかに出口とか……そうだ、ここにはどうやって!?」


「分かんねえってば! 入口とか無かったぞ、外のデカブツ追いかけて気づいたらここにいた!」


「デカブツって何すか! しかも手掛かり0じゃないっすかー!」


近くに浮かぶ記憶のスクリーンをかき分けて出口を探すが、少し進むと見えない何かに阻まれそれ以上進めない。

出口がないかとあたりをかき分けるが、どこへ行こうとやはり見えない壁が行く手を遮る。


「な、なんなんすかここ……セキさんも手伝ってください!」


「……花子、お前本当にこの場所を知らないのか?」


「そりゃそうっすよ! こんな空間見たことあるわけ……」


「ここに浮かんでる記憶は全部お前のもんだろ、お前以外が知るわけがない」


「それはそうっすけど、そもそもこんな非現実な空間で……」


「お前の心象世界ってのは間違ってねえと思う、出られないのは本人の踏ん切りがつかないからだ」


セキさんが私と同じようにスクリーンをかき分けて先に進む……が、彼女の歩みは見えない壁に遮られることはなかった。

私よりもずっとずっと先まで歩き、なおも壁に当たる様子はない。


「……本当は分かってるんだろ、全部丸く収まる解決法」


「いや、だって……それは」


分かっていたが否定した可能性。 気づきたくなかった選択肢。

だって私はお姉ちゃんとは違うんだ。


「花子、必要なのはお前の覚悟だけだ。 大丈夫、オレたちがいる!」


「い、いや……でも……」


駄目だ、それだけは駄目なんだ。


「魔女なんてまがいもんじゃねえ、お前ならできるんだ――――お前が魔法少女になるんだよ!」


――――私は、お姉ちゃんと同じにはなれない。

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