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Re:東京事変 ⑤

「降りるぞ、このまま飛んでたら狙い撃ちだ!」


「風で逸らすぞ、その間に盟友たちは飛び降りよ!」


シルヴァが書き上げた紙を一枚受け取り、オーキスが作った切れ目から地上に向かって飛び降りる。

と、丁度そこへ向こうも二発目を打ってきたらしい。 先ほどよりも大きな岩の塊は、避ければヘリに直撃だ。


「ちったぁこっちを敬う気持ちがねえのか……なっと!」


早速シルヴァから貰った紙を広げてみれば、紙面から飛び出した暴風が真っ向から跳んで来た岩石をあらぬ方向へと吹き飛ばす。

そして素早く羽箒を展開し、一気に下降して相手の目をこちらへと引き付ける。 そうでもしないと降りる間にヘリが集中砲火を喰らうだけだ。


「よぉ、ヴィーラ! 一人で東京観光にでも来たか!?」


「あぁ!? ()()()()()!! アタシのこと知ってんの!?」


「―――――……ああ、そうかよ」


二度目の初めましては相変わらず堪えるが、怯んでいられる状況でもない。

すぐに思考を切り替え、振り下ろされた鉄槌を箒で受けながら逸らす。


「はじめましてだな! お前たち魔女と、ローレルの野望を止めに来た!」


「こりゃまたご丁寧にどうも! はじめましてだけどなんかアンタむかつくし!!」


相変わらずの馬鹿力は逸らすだけでも腕が痺れる……いや、もしかしたら以前よりもパワーが上がっているんじゃなかろうか。

ともかく、これでヴィーラの意識は完全に俺へと向けられた。


「2人とも、今のうちに中に入れ! 俺も後から追う!」


「め、盟友!? それは……」


「―――――分かった、行くよぉ」


躊躇するシルヴァを抱きかかえ、オーキスが切り開いた地面の中へと潜る。

それで良い、ヴィーラは3人がかりでも無傷で勝てる相手ではない。

きっと東京を守る魔女も1人2人ではないはずだ、ならば損耗は出来るだけ抑えた方が良い。


「んー……あっちがオーキスってやつと、銀色っぽいのがシルヴァ、んであんたがブルームスター?」


「……随分とのんきだな、2人も見逃したってのに」


ひぃふぅみぃ、と悠長に指折り数えるヴィーラ。

こちらの面子についてはやはり情報が割れているか、そのうえ忘却しているというのに「ブルームスター」の名前が知られている。

ローレルは忘れていないのか、だとすればこちらの手の内もまた知られているはずだ。


「まーね、アタシもローレルにいやいや従ってるだけだし。 一人でも邪魔できたら御の字っしょ」


「そりゃ随分と雑な仕事だな……で、ヴィーラ」


片手に構えた箒を旋回させ、構え直す。

黒衣は前回の酷使からインターバルが怪しい、奥の手に頼った立ち回りは難しいだろう。

それはそうと……これで何度目かも分からないヴィーラとの邂逅になるわけだが、一つ気になる事がある。


「――――お前、ローレルに何かされたのか?」


明らかに、以前よりもヴィーラから感じられる力が強くなっているのだ。



――――――――…………

――――……

――…



息継ぎのために一度地上に浮上すると、そこはもう東京を覆う壁の目の前だ。


「こ、このまま進入するよぉ……準備は?」


「できている! 行くぞ、ラピリスを奪還するのだ!」


後方を振り返らずに、目の前の壁を切開し、バターのように割けた切り口へと体を滑り込ませる。

私の魔法に物理的な防御力は意味を成さない、この進入方法ももはや懐かしいものだ。

壁を抜けた途端に感じるのは一層濃い魔力に満ちた大気、並の人間が触れてしまえば命の保証は出来ない濃度だ。


「に、二度目だな……」


「私は里帰りだねぇ……こ、こんな形でとは思わなかったけど――――」


「……? どうし――――ふぎゃうっ!」


不意に前方からの殺気を感じ取り、傍らのシルヴァの頭を押し付けて地面に伏す。

間一髪、頭上を掠めて飛んで行った何かが背後の壁に激突し、爆炎を巻き上げた。


「な、な、な、何事だァ!?」


「うーん、狙撃されてるねぇ……それに結構一杯いるよぉ」


射撃の方向を探っても狙撃手の姿は見つからない、良い腕だ。

それに、他にも何人か気配を感じる。 隠れるのが下手というよりもわざとか、こちらを挑発している。


「数はこっちが不利だねぇ……一回引く?」


「まさか、押しとおるぞ! 援護を頼む!」


「うん、いい答えだねぇ……いいよ、後ろは預けた」


懐かしい戦場の空気が肌を差す、後ろを誰かに任せて戦うのはいつぶりだろうか。

……さて、ローレルの前に少し肩慣らしをしよう。 思い上がった魔女たちに年季の違いを教えてやる。



――――――――…………

――――……

――…



「……さて、我々の仕事はここまでかな」


「ああ、口惜しいが引くしかないな」


目の前に聳え立つのは、10年前から変わらずそこにあり続ける東京を覆う天の壁。

私達が文字通り心血を注いで建てたあれももはや用済みが近いとなると、嬉しいやら悲しいやら。


「連絡はロウゼキが置いて行った無線機で取りあう、いったん補給した後にいつでも魔法少女達を回収できるように備えるぞ」


「了解、いやあしかしこうして2人だけでも集まると昔の事を……」


 ――――わ、わ……速く下りないと……っすね……


「…………?」


「ん、どうかしたか日向?」


「……いや、なんでもない。 ()()()()()()()()()()()

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