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激しく解釈違いです ⑤

「お、まえぇ!?」


《マスター、文句は後です! 着地の事を考えて!》


ヒョウカの爪により、屋上の一部が瓦解する。

幸いにもこれだけの建物を一気に崩壊させるまでの威力はないようだ、だがこれだけの瓦礫が落ちるとまずい。


「トワイライト! 止められるか!?」


「―――――あなたの、指図は受けない……!」


「いいから出来るかできないかどっちだ!!」


「っ――――――……この落とし前は、あとで……!」


落下しながらトワイライトが複数の瓦礫に向かい、ナイフを振るう。

すると、ナイフが掠めた瓦礫はどれもが時が止まったかのように空中で停止する、しかしそれでもトワイライト一人では撃ち漏らしが多い。


「サンキュー、あとは任せろ!」


もはや慣れた感覚で片足に冷気が籠った魔力を充填し、残った瓦礫をビルの壁面に向かい蹴り飛ばす。

蹴り飛ばされた瓦礫は壁面に触れる瞬間、遅れて発生した凍結減少により、接着剤のように壁面に縫い付けられた。

流石に二人だけでは防ぎきれないが、あとは小さな瓦礫ばかりだ、マフラーで弾きつつ着地する。


「……ふぅー。 トワイライト、下ろして良いぞ」


「―――――……」


一息整えてから頭上のトワイライトに声を掛けると、空中に固定された瓦礫が再び落ちてくる。

落下しながらに比べては処理も楽なものだ、一部は箒に変えながら、受け止めきれないものは蹴り飛ばしてなるべく被害が少なそうなところに軟着陸させる。

幸い、落下地点は道路に面していたが、大した被害はなさそうだ。


《マスター、いいんですか? トワイライトちゃん逃げちゃいましたよ》


「流石にそっちまで気ぃ回せねえな、人命優先だ」


「ふひへひへぇ……ブルームスター様の活躍をこんな間近で見れるなんてヒョウカは幸せ者です……」


……トワイライトはとっくに逃げていたようだが、こっちは未だのんきに現場に残っていたようだ。

振り返ると、恍惚の表情で緩む頬を抑えるヒョウカの姿があった。


「……俺が言う事じゃないと思うけどな、お前はお前で何やってんだ」


「……はっ! しまった、逃げるつもりがすっかり見とれていました……!」


《なるほど、さては馬鹿ですねあの子》


懐のスマホを軽くたたく、思っても言ってはいけない台詞ってもんがあるだろう。

それに本人にとっては大誤算だが、こちらにとっては好都合だ。


「よーし、そこ動くなよ。 今度は同じような真似したら……ふぎゃっ!?」


「ぶ、ブルーム様ー!?」


台詞の途中で真横からそこそこの質量の何かが衝突し、派手に吹っ飛ばされる。

反応と爪を振った気配がないことから、ヒョウカの攻撃ではないようだが一体何だ?


「っ……ぶ、ブルーム……?」


「あいって……て、ラピリス!? おま、誰にやられ……」


「……ボクにだよ」


ぶつかって来たのはボロボロのラピリス……そしてそのラピリスを追って現れたのは、ドクターだ。

既に例の無敵のカセットを使っているのか、その身体は薄っすらと金色のオーラを放っている。

そして彼女の肩には、ヴィーラとパニオットの2人が担がれていた。


「ドクター……!」


「……そっちの子が例の魔女狩りかい? 困るな、魔女の数を減らされるのは」


「ぐっ……ブルーム、その子を連れて逃げてください! ここは私が引き受けます!」


「馬鹿言うな、お前ひとりでどうにかなる相手かよ!」


「二人掛かりでもどうにかなるなら苦戦してませんよ!!」


ごもっともだがだからと言ってラピリスをおいていくわけにもいかない。

ヒョウカを庇うように前に出た――――俺の右腕を、いつの間にか目の前まで距離を詰めたドクターが掴んでいた。


「……色が違うな、何だその姿は?」


「何―――!? ぐあっ!!」


膂力だけで振り回され、俺の身体は抵抗することもできずアスファルトに叩きつけられる。

追撃の踏みつけに対して箒でガードを試みるが、柄を砕かれたうえで腹を踏み抜かれる。

夕飯を軽めに済ませて置いて正解だったな、相変わらず重い一撃にすっぱいものがこみあげてくるが何とかこらえた。


「今の所、君が一番の脅威なんだ。 悪いが加減は出来ない」


「ぶ、ブルーム様ぁ!? こ、このぉ!!」


「ぐっ……馬鹿、逃げろ!」


激昂したヒョウカが放った衝撃波はドクターに命中する……が、当たり前のように傷一つ付けられない。

ドクター本人は、そよ風が吹いたのかとでも言わんばかりに冷たい視線をヒョウカに向けている。


「ひょ、ひょえ……あれぇ……ドクターって後方支援が主じゃ……?」


「情報が古いね、興味がある魔法少女以外はあまり調べないのかい? それは命取りになるよ、今のように」


俺を足蹴にしながら、茫然としたままのヒョウカに向けてドクターが手を伸ばす。

2人の間に距離はあるが、今のドクターならビームの1つや2つ飛び出してもおかしくはない。


「この……やめろ、ドクター……!」


「辞めろと言われて辞める奴がいるか、計画の邪魔をするような魔女は―――――っ!?」


ドクターの脚を握る腕に思わず力がこもる……その瞬間、無意識に冷気を伴う魔力が掌からあふれた。

本来なら効くはずがない、それも僅かばかりの魔力だ。 しかしドクターは弾かれたように飛び退いた。


「……? なんだ――――」


「――――なにを呆けているんですか! 今のうちに逃げますよ!!」


明らかにおかしな反応のドクターの隙を突き、ラピリスが俺とヒョウカを抱えて地を駆けだす。

何かに怯えたようなドクターと視線があったと思えば、すぐにその表情ははるか遠くに遠ざかって行った。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 怯えるドクターかわいい推せる
[一言] 完全にトラウマになってんじゃん……
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