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俺が魔法少女になるんだよ!  作者: 赤しゃり
本編

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237/639

終点・ノンストップ ①

「あいっつつつ……大分やられたなぁ」


《お疲れ様ですマスター、ご自愛ください》


店に戻り、戸棚の奥から引っ張り出した救急箱を使ってもはや手馴れた応急手当を施す。

ただ今回は外傷より打撲打ち身の負傷が多い、体のあちこちに張り付けた湿布が染みる。

最近は魔法少女の増加に伴って魔石の入手も難しくなってきた、傷は増えても治療手段が少なくなるのが悩ましい。


《消えない生傷も増えて来ましたね、その恰好葵ちゃんに見られたら卒倒しちゃいますよー?》


「いや、元からこの手の傷は多かったんだよ……ほら、腹のこことか因縁付けたって言われてヤンキーに刺された傷」


《うっへぇなんでそんな事に巻き込まれるんですかマスター、本当になんかに憑かれてんじゃ……あいたー!》


自慢にもならない腹の傷を仕舞い、ドン引きしているハクの額を軽くはじく。

魔法少女の姿になれば傷の殆どが消えるのは幸いか、傷だらけの野良なんて今まで以上に良くない噂が立つ。


《……と、そうだそうだ。 連絡来てますよマスター、花子ちゃんとコルトちゃんの2人から》


「ん、大体内容は分かるな……開いてくれ」


ハクが開いたSNSの画面に映ったのはまずコルトからのメッセージだ、内容としては魔法局の被害と実行犯についての処置を簡単にまとめたもの。

捕まえた実行犯はケガと筋肉の痺れが酷いため、まともに喋れるようになるまでは手厚く治療されるらしい。

ちなみに魔法局が受けた損害費は……目がくらむような数字だ、あまり直視しない方が良い。


花子ちゃんの方は……ギャラクシオンという魔法少女との交戦記録だ、そしてその後のアンサーの安否を心配するメッセージなどが続いている。


「……相手の目的は半強制的に解答を引き出せる魔法を持つアンサーだった、どう思う、ハク?」


《口封じ、としか考えられないですね。 アンサーちゃんの能力は相手にとってもかなり厄介なものだと思います》


「だよな、魔法局に乗り込んでまで仕留めたい……てことは相手も相当な組織力ってことだ」


言い方は悪いが、魔法少女崩れの野良が集まったところでここまで大胆な発想は出てこない。

今回の一件、その裏には正体を掴まれたくない相手……薬をばら撒いている黒幕が絡んでいる筈だ。


「……子供に躊躇いなく人殺しを任せるようなやつが、な」


いまだその全貌が掴めない黒幕、一体そいつは何が目的でこんな真似を……


《……そもそもなんですけどねマスター、なんでアンサーちゃんが狙われたのでしょうか?》


「うん? そりゃまあアンサーの魔法が……」


《じゃあその情報は一体どこから?》


ハクの言葉にはっとする。 そうだ、魔法局がホイホイ外に情報を漏らすわけがない。

アンサーがヴィーラたちの仲間でもなければ彼女の魔法についてなんて外の人間が分かるはずがない。


《いつか花子ちゃんが言ってましたよね、魔法局の中に錠剤を作っている人間がいるかもしれないと》


「待てよハク、その話が本当だとすると……相手はかなり身近に潜んでいるぞ」


一口に魔法局とは言え各地方ごとに幾つかの支部がある、ただ遠ければ遠いほど情報の伝達もフットワークも重くなる。

アンサーが捕まってからわずかに数日、そこからほぼ遅れも無く行動を起こせたとなれば……相手は間違いなく、俺たちの近くに潜んでいる。



――――――――…………

――――……

――…


「アンサー殿ぉー! 聞いてないでごじゃるよそんな危ない状況だったなんてー!」


「そりゃ心配かけたくないから言ってないものー!」


「まあまあ、二人ともそこら辺にしておくっすよ。 あれは仕方ない事故っす」


3人組の定例なのか、この前と同じ笹雪家の小屋にてシノバスとアンサーが取っ組み合いの喧嘩を始める。

その様子をベッドの上からしかめっ面で眺める笹雪、きっとこの三人は今までもこんな調子だったのだろう。


「紫陽、それでも自分から前線に向かうなんて感心しないけど。 私のためだなんて言われてもあなたに危険が及ぶなら全然うれしくないわ」


「ご、ごめんって笹雪~!」


「……そういえば、いつもの癖でホイホイ集まってしまったけど大丈夫なのでござるか? このまま例の魔女なるものに襲われるなどは……」


「心配ないっすよ、魔法局のめちゃつよつよな人が見張っててくれるので心配ないっすから!」


このさきアンサーはほとぼりが冷めるまで魔法局の特別保護課に置かれる、暫くこうして3人で集まる機会も少なくなってしまうだろう。

だから今回、この集会は“彼女”が設けた最後の温情のようなものだ。


「……それじゃ、自分は邪魔しちゃ悪いっすからね。 ちょっと外見てくるっす」


「えー、別に気にしなくていいのに」


「そうよ、花子ちゃんは紫陽を助けてくれた恩人なんだから……」


引き止められる前に簡素な押し戸を開き、外へと逃げる。

仲良しグループに一人放り込まれる、あの空気は何だか苦手だ。 こうして一人でいる方が自分には合っている。


『一人じゃねえだろー、寂しい事言うなよ花子』


『せやせや、うちらがおるやないか』


「あはは、ありがとうっす……」


思えばこっちに来てから友達と言う存在はこの4人ぐらいだ、知らず知らずのうちに友人に飢えていたのかもしれない。

家を飛び出し、泊まる当てもなく半分ホームレス生活。 知らぬうちにホームシックを患っていたのだろうか。


「――――なんやぁ、そないに寂しんなら帰ったらどない? ご両親も心配しとるで?」


「……いやぁ、それはあなたには関係のない話っすよー」


先ほども言った通り、アンサーたちを護衛するために魔法局から派遣された魔法少女がいる。

話しかけられなければそこにいたのかも分からないほど自然な佇まい、そして人を試すかのようなその口調は歴戦の証だ。


「まったくいつまでたってもおせっかい焼きっすねー……ロウゼキさん」

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