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俺が魔法少女になるんだよ!  作者: 赤しゃり
本編

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231/639

闇の力 悪い奴ら ⑥

《――――マスター!!》


ハクが叫ぶ、だがそれに答える余裕は今のところない。

身体を押さえつける拘束を解くには時間が足りない、間違いなく奴のハンマーが俺を押し潰すのが先だ。

スマホは遠く、技の起動も黒衣も使えない。 文字通り手も足も出ない状況だ、だが……


「お前と同じく……こっちにだって仲間はいるんだよ」


「なに……?」


訝しげに眉をひそめたヴィーラの視界を遮るように、一機の紙飛行機が横切る。

場違いにゆったりとした速度で空を泳ぐそれは、ヴィーラにとっても予想外の乱入だったのだろう。

――――目の前で強烈な光を放ちながらはぜるその一瞬まで、無防備にも紙飛行機から目を逸らす事が出来なかったのだから。


「ギャッ!? な、なにこれ……ッ!?」


「サンキューシルヴァ、助かった!!」


「ふっはははは! 気にするな盟友!」


突然の閃光に目を奪われ、ヴィーラが怯んだ隙に無数の拘束を力づくでほどき、その場から転がり逃げる。

遅れて落ちてきたあてずっぽうな鉄槌は俺を取り押さえていた無数の手を建物ごと吹き飛ばして行った。


「「「「「ぬ、ぬわー!」」」」」


「あ゛ー!? パニパニごっめぇん! ああクッソ目ぇチカチカする、やぁってくれたなブルームスター!! 正義の味方がそういう真似していいわけ!?」


「あんな殺意満点の攻撃前にしてきれいごと言ってられるか、こちとら瞬間瞬間を必死に生きてんだよ!」


まぶたを擦りながらやたらめったらにハンマーを振り回すヴィーラから距離を取り、拾い上げたスマホの画面をタップする。


《いっきますよマスター! ハクちゃんタイマーオーン!》


視界を遮る一瞬の黒炎と身体の奥を焦がすような嫌な熱。

そして色が変わった黒い衣装を翻し、強化された魔力を片足へと集中させ……


「喰ら……」


「させるかぁ!」


蹴りを放とうとしたその瞬間、ヴィーラが地面に叩きつけたハンマーを中心に俺たちを吹き飛ばさんとする突風が吹き付ける。

いや、風というより斥力のようなものか。 近づくことを拒むように放たれる圧力が俺の身体を押し出して行く。


「はっ、なるほど! それがお前の魔法か―――――!」


≪BLACK IMPALING BREAK!!≫


ならば向こう以上の力で押しのければ良い、推進力を加えた箒で真っ向勝負を仕掛ける。

多大な減速を受けながらも燃え盛りながら振るわれた蹴りが、ハンマーの柄で防御するヴィーラの身体ごと押し返す。


「っ゛――――! ああああもうウッザァ!! わざと防御させやがったなぁ!?」


「女の子のどてっぱら蹴り込む度胸がないんでね! はやいうちに降伏しろ!!」


「そういうとこマァジで大っ嫌い……! そんだけ力がある癖に、野良が何で人助けなんかしちゃってんのさ……!」


「悪いかよ、お前らこそなんでこんな真似してんだ。 仲間を巻き込んでまでなんで俺らを狙う!」


周囲に広がるのはボコボコ空いたクレーターになぎ倒された電柱やひっくり返った車が転がっている。

人影は流石にもうすでに避難した後だが、それでも気絶したり手足がおかしな方向にねじ曲がったスーツ姿の魔法少女達が転がっている。

こんな凄惨な光景を作ってまで、一体何の目的があるというんだ。


「魔法少女が皆お人よしだと思わないでよ、大人なんて憎くて憎くて仕方ない奴らだっている!!」


「なに……!?」


()()()()()()()()()()ガキだって……いるんだよッ!!」


心の底から吐き出したような言葉に気圧され、僅かに攻勢が緩んだ隙を突かれて弾き飛ばされる。

追撃に備え、空中で体制を整えて羽箒に飛び乗るが……とうのヴィーラは地上で激しく息を切らせながら上空の俺を見上げるばかりだ。


「リーダー」 「トばしすぎ」 「魔力の危険が危ない」 「目的は十分」 「目は引いた」


「あぁもぉー……マァジ、燃費悪いなぁアタシってば……」


「待て! そう簡単に逃げられるとでも……!」


「いいの? 後ろの一般人死んじゃいそうだけどぉー?」


「なに!?」


反射的に指をさされた方を振り返る……が、そこにいたのは無表情のまま白旗を振るスーツ姿の少女が1人居るだけだ。


《マスター、騙されてますよ!》


「あ、あいつぅ!!」


再びヴィーラたちがいた場所へ視線を戻しても時すでに遅し、彼女達の姿は煙の如く消えていた。

それに合わせてか、ゴルドロスたちの動きを止めていた群れもポポポポンと気の抜けた音を立て、季節外れの松ぼっくりだけを残して煙と消える。

残されたのは空虚な破壊な跡と3人の魔法少女だけだ。


「ブルームスター、そっちは無事カナ!?」


「ああ、けど逃げられた……シルヴァ、さっきは助かったよ。サンキュー」


「礼などいらぬとも! ……しかし、何が目的だったのやら」


「さあなぁ……」


目的については最後にスーツ姿の魔法少女が話していた言葉が気に掛かる。

「目的は十分」「目は引いた」と、まるで自分たちが囮だったような言い草だ。


「……とにかく、被害者の救助と周囲の安全確認だ。 俺は残党がいないか周りを見てくる」


「OK、こっちは任せてヨ。 行こうシルヴァーガール」


「う、うむぅ……」


箒に飛び乗り、空から周囲をくまなく探す。

敵は去ったが謎が増えた……一体彼女達は何が目的だったのだろうか。

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