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一方そのころ ⑪


「……ん? はいはいもしもし、どうした? そっちで何かあったのか?」


「……待て待て、えっとセキだったっけ? 落ち着いて、詳しく話してくれ……うん、うん……なるほど」


「状況は分かった、場所は? ……了解、すぐに行くよ」



「――――ああ、もう少しで街に着く」



――――――――…………

――――……

――…



「……ちょっと、花子。 あんたこんな時にどこへ電話かけてんの?」


通話を終えたタイミングを見計らい、じっとりとした視線を投げつけながらアンサーが話しかけてくる。

まあ傍から見ればのんきなものだろう、だがこっちも事情と言うものがある。


「あぁ? んー、まあ癪だが修羅場潜って来た先達だよ。 そして運がいい、すぐに合流するってさ」


「ふーん……でもまあ、大分片付いちゃったけど?」


セキさんたちの足元には数えきれないほどの鎧武者、その残骸が転がっている。

先ほどまではわっちゃわっちゃと蠢いていた鎧たちだが、今となっては糸が切れたかのようにピクリともしない。

3人(実質セキさんとレトロさんの2人)掛かりで蹴散らした成果だ、今のところ廊下の向こうからは新手が湧いてくる気配もない。


「きっとシノバスが上手い事やってくれたんだわ! もう心配いらないわね!」


≪……だと良いんだけどね≫


「ああ、原因を止めた結果がこれならまだいいけどよ」


「……むぅ、どういう意味よ?」


「俺達も早く追いかけるぞ、こいつらの大元が本気出してる可能性がある」


「へっ? あっ、ちょっと、待ちなさいよー!」


――――――――…………

――――……

――…



背後でロイが抱えるショットガンが火を噴き、湧き出る武者の一体を粉々に砕く。

いや、相手が武者を盾にしているのか、先程から射線の塞ぎ方が絶妙だ。


「ロイ、あんたも上手いことやりなさい!」


≪無茶を、そこまでの機能は備わっていません≫


「こ、こっちはこっちで手いっぱいでござるー!!」


ござる口調の魔法少女も湧き出る武者たちに手一杯だ、いやむしろ段々と押されているような気配すらある。

忍者っぽい恰好からして、真正面からの戦闘は苦手か。 だとしたら時間を掛けてはいけない。


「だったら……ロイ、道開けて!!」


≪了解、フルパワーで撃ちます≫


目の前の武者を警棒でひっぱたき、後方へ蹴り飛ばす。

他の武者を巻き込みながら倒れた所を確認し、すぐさま射線を開けると、背後で構えていたロイがしっかりと構えた銃の引き金を引く。

エネルギーを最大限チャージされたまま放たれた光弾が武者たちを蹴散らす、その後に生まれるのは刀を握った少女への開けた一本道だ。


≪オーバーヒートです、再充填には少し時間がかかりますよ≫


「ありがとうロイ! これで届くわ!!」


この道がまた武者で埋まるまで数秒と掛からないだろう、だがそれだけあれば刀を握る少女に駆け寄るには十分。

――――だがしかし、全力で振り降ろした警棒はまるで飛沫を掃うかのように軽く振るわれた刀で受け止められる。


「っ……馬鹿力……!」


「「無論、童の膂力と侮らないでもらおうか」」


私だって訓練を受けた魔法少女、それに見かけの年齢だって勝っている分、力では負けない自信があった。

それでも警棒を受け止めた彼女の刀はビクとも動かない、まるで巨岩に打ち込んだような手応えだ。

少女の形をした魔物を相手取っているかのような不気味な違和感に冷や汗が垂れる。


「「……所詮は童か」」


警棒に目一杯力を込める私とは対照的に、冷めた視線を向けてくる少女はふっと溜息を零す。

それと同時に、警棒と拮抗していた刀が意図的にずらされる。

そして急に力の均衡が崩されてよろめく体、前方に倒れ込む私の腹部に添えるように、そっと刀の切っ先が当てられた。


「あ――――これ、まず――――っ!」


「あっ……ぶないでござる!!」


あわや串刺しと言う寸前、横から飛び出したござるの子が私の襟首をつかんで後方へ引っ張る。

腹部に触れた鋭く冷たい感触を残し、二人そろって後方にぶっ倒れた。


「あっぶ……あっぶ……! ありがとーござるの子!」


「シノバスでござ……へぶっ!!?」


「「……チッ、ちょこまかと」」


安心するのもつかの間、シノバスの首目掛けて振るわれた刀を寸でのところで躱す。

いや、シノバスの頭を無理矢理押さえつけて床板にめり込んでしまったがこれは一種のコラテラルダメージと言うものだろう。


「むががもがむがー!!」


「ゴメン! でもそっちは自分で何とかし……てっ゛!」


めり込んだ頭を引っこ抜こうと力を込めるシノバス、無論そんな隙だらけのところが見逃してもらえるわけじゃない。

あわやシノバスに向けて振り下ろされた二の太刀を警棒で受け止め、再びギリギリとつばぜり合いになる。

だが今度は体勢が悪い、膝立ちの状態で受け止めた刀は先程よりも重く、上からのしかかってくる。

とても自分だけでは支えきれない、警棒も嫌なしなりを見せて悲鳴を上げている。


「う、く……! ロイ、再充填まだぁ!?」


≪もう少しです、踏ん張ってください≫


頼みの綱である相棒は、新たに湧き出した武者たちに絡まれて悪戦苦闘している。

1体1体は大した戦闘力もないが、幾らでも湧き出てくるのが厄介極まりない。 お蔭で綺麗に分断されてしまった。


「ぐぬぬぬ……! あんたねぇ、何でこんなことすんのよ! 分かってる!? そんなもので人斬ったら危ないわよ!!」


「「知れた事よ、貴様らが邪魔するからだろう。 オレはただこの身体が欲しいだけだ」」


「邪魔って……するわよそりゃぁ!! 何だかよく分からないけどあんたのしようとしてることは悪い事よ!!」


「「ならば、死ね」」


再び刀に力が籠れば、苦しいながらも拮抗していた警棒がじわりじわりと押され始める。

このままでは押し切られるのは時間の問題、自分が抵抗を辞めればシノバスが叩き切られてしまう。


「ロイー!! 早く、早く何とかして!!」


≪残念ですが、こちらの対処が終わったころには間に合わないかと≫


「なんですってー!? もぉー、あんたなんかコンビ解散よ―!!」





「……いやぁ、そりゃちょっと早計だろドレッド」


≪―――――――BURNING STAKE!!≫

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