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俺が魔法少女になるんだよ!  作者: 赤しゃり
本編

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112/639

誰がためにと願わくば ③

魔法少女が持つ魔法は本人の心象に影響されると、あの人は言っていた。

1つの器に2つ3つと心は入らない、故に1人の魔法少女が持つ魔法は1つ。

メインとなる魔法を補助するように衣装がサブの機能を持つことは多々ある、だけどこれはめちゃくちゃだ。


ノーモーションで放たれる発火現象、コウモリ型の拘束技、龍を思わせる姿への変貌・身体強化能力。

そしてたった今喰らった全方位からのほぼ同時攻撃――――おそらく超高速移動によるものだろう、無茶苦茶だ。

1人の心が支えられる容量を明らかに超越している、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()かのような……


「ふぅ、いややわぁ。 やっぱりまだ扱えへんなぁ」


地上に落ちるまでにいったい何度殴られたのだろう、およそ10秒ほどがどこまでも長く感じた。

当の本人は涼しい顔をして、地面に這いつくばる私の目の前でこれ見よがしに髪をかき分けて見せる。

掻き立てられる憎悪に答えてくれない体が恨めしい、化け物め。


「お前、は……お前はいったい、何なんだ……!?」


「さてな、通りすがりの魔法少女とでも思ってくれてええよ。 別に覚えなくても構わんけど」


忘れるものか、二度とその顔と名前は忘れない。

ロウゼキ、私はお前を忘れない。 東京を見殺しにしたお前を私は絶対に許さない。


「……オーキスはん、やったっけ? それとスピネはん、あんたら2人の目的は」


「そん、なの……! この街を見ればわかるだろう! 私は、朱音ちゃんは! お前たちが見放したこの街を取り戻したいだけだ! 亡くしたものを、全てッ!!」


周囲にあるのは人だったものと、かつて営みがあったころの残骸ばかり。

10年前に全てが消え去った、私たちの居場所がこの世界から消え去った。 それを取り戻したいから私達は今ここにいる。


「…………無理や、壊れたものは二度と戻らへん。 魔法は万能やない、人の命は還らない」


「五月蠅い! まだ皆死んじゃいない、魔法なら……みんなが救えるんだ……! そうでないと、お父さんは何のためにっ!」


「……百歩譲って可能かも知れん、けどそれは“ダメ”や。 万が一に人が生き返ってしまえば皆自分も自分もとキリが無い。 この星が溢れてまうよ」


頭のどこかで、彼女の言い分も一理あると考えている自分がいる事に吐き気がする。

反論の代わりに握りしめた拳で訴えた暴力は軽く受け止められ、再度地面へと叩きつけられる。

強さの次元が違う、同じ魔法少女としてここまで実力に差が出るのか。 なのになんで、なんで……


「……そんなに強いなら、1人でも多く救えたくせに……っ!」


「―――――――……」


自然と毒を吐き出した私の言葉に、ロウゼキの動きが一瞬止まる。

地面へ倒れたまま見上げた顔は、酷く悲しそうな笑みを浮かべていた。


その背後に現れた黒騎士が全力で振るった大槍に弾き飛ばされるまで。


「く、クロキチ!?」


『黙れ、無事か姉殿』


「黒騎士……ちゃん……?」


もうもうと沸き立つ砂煙を払いのけ、片手を伸ばした黒騎士がそっと私を抱き上げる。

彼の肩には顔を蒼くしたシルヴァの姿もある、なぜ彼女がここにいるのだろう。


『仕留めた手応えがない、奴が戻る前に一度退くべきと進言する』


「駄目、あいつはお父さんとお母さんの……皆の仇……!」


『ならばこそ万全の姿勢で臨むべきだ、違うか?』


「っ……!!」


今のままでは奴には勝てないと、頭では分かっていても感情が追いついてこない。

頭と心の温度差で二の句が継げない私を待たず、黒騎士は素早くこの場を後にする。


『お許しを、あなたの命令を無視させていただく』


「……いいよ、ありがと。 私がワガママ言うより早く逃げて」


迅速で正しい判断だ、彼を責める道理はない。

一度体制を立て直すべきだ、1人は無理でも朱音ちゃんとなら……


「……待って、朱音ちゃんはどこ? 一緒じゃないの?」


『…………既に姉殿と合流していると思っていたのだがな』


確か朱音ちゃんは騎士と共に、馬鹿っぽい魔法少女とブルームスターの相手をしていたはずだ。

その騎士が今ここにいる、なら朱音ちゃんは一体どこに消えたのか。


「探して! 朱音ちゃんが勝手にどこか行くわけない、他の子と戦っているのかも!!」


『承知、すぐに探し出そう』


「……く、クロキチ? あのな、我な」


黒騎士の肩から振り落とされぬよう、必死にしがみ付いていたシルヴァが口を開く。

だからなんでこの子はここにいるんだ、まさかあの廃病院から自力で抜け出してきたのか。 頼むから大人しくしていて欲しい。


『黙れ、今貴様の相手をしている余裕はない』


「待て、聞け。 交渉だ、我ならおそらくスピネの居場所を割り出せる」



――――――――…………

――――……

――…



「不味いわ、非常に不味いわ」


揺れる車内の中、ネズミに怯え助手席で縮こまるドライブガールがぽつりと呟いた。

彼女の視線はじっとメーターパネルを見つめている。


「どしたヨ、いい知らせじゃなさそうだけど」


「……ガス欠寸前よ、ありったけ詰め込んだ魔石が底をつきそうだわ」


世界の終わりのような顔をして、ドライブガールが指差したメーター針はほぼ「エンプティ」に重なっている。

隣のスピードメーターも徐々に速度を落とし、後方から追いかけてくるネズミとの距離がじわじわと近づいていた。


「もう駄目だわ、お終いだわぁ……このままみんなネズミに耳をかじられてタヌキ型ロボットになるしかないのよぉ……!」


「弱音は後で幾らでもいいなヨ! 補給方法は!?」


「外の給油口に魔石を放り込めばいいけど、この状況じゃ無理!!」


締め切った窓に顔を押し付けると、なんとか給油口の蓋らしきものが見える。

仕組みは実際の車と同じか、ネズミたちとカーチェイス中の今はとてもじゃないが確かに給油なんてできない。


「ああもう、この車に武器は無いのカナ!?」


「あるけどそれも魔力が燃料よ、こんなガス欠じゃ豆鉄砲しか撃てないわ!」


万事休すか、もし停止してしまえばネズミたちに取りつかれてゆっくりと餌食になるだけだ。

ならいっそ、相打ち覚悟で飛び出して無理矢理突破口を……


「駄目だ、多少撃ち払った所で本体を叩かなければ無駄弾になる。 ここは君が出る幕じゃない……うぇぇ」


「ドクター、酔いつぶれながら言っても恰好つかないヨ。 それとも他に何か方法が?」


「ああ、あるとも。 君ではなく僕が出て行けばいい」


体調が悪そうな顔のドクターはそう言って、1つのカセットを取り出す。

ディフォルメされたネズミのイラストが描かれたそれは、以前にも使用したものだ。


「ドクターちゃん、だけどそれは効かないって話じゃ……」


「なに、距離が近づけばやりようがある。 それにこのままじゃ緩やかに詰むだけだ」


「確かにそうだけど……大丈夫?」


「任せろ、ついでに給油口も何とかしておこう。 開けておいてくれ」


扉のロックを外し、ゲーム機を構えるドクターはいつでも行けるといわんばかりだ。

その姿をミラー越しに確認した運転手(ロイ)が給油口のレバーを引き、黙って片手のサムズアップを見せた。


「ボクが飛び出したら一気にアクセルを吹かしてくれ、お互い無事なら後で会おう」


「コラ、縁起でもない事いうなヨ!」


「ハハハ……それじゃ、()()()()だ」


ドクターが僅かに開けた扉の隙間から外へ飛び出し、同時に車体が一気に加速する。

メーターの針を見れば既にエンプティのマークから大分離れた所まで浮き上がっている、今の一瞬で魔石を放り込んだのか、なんてやつだ。


「っ……ロイ、ドクターちゃんの犠牲を無駄にしちゃ駄目! どうにかあのネズミたちを何とかしないと!」


「死んでない、死んでないヨ!!」


『わかってらァ! だが数が数だ、多少ぶっ飛ばしたところでまたワラワラ……』


 ―――――ピピピピピピッ!!


ふと一人分広くなった車内に甲高いコール音が鳴り渡り、ダッシュボードに取り付けられた無線機のランプが赤く点滅し始めた。

ドライブガールが慣れた手つきで無線機を手に取り、ボタンを操作すると車内に聞き覚えのある声が響いた。



『あーあー、聞こえてるかねチミたち? ……あれ、聞こえてる? この無線機なら大丈夫って聞いたんだけど』


「…………局長?」


何処か頼りないふくよかなその声は、我々東北魔法局の局長その人のものだった。

【久々のちょっとした小話:東京名所 ~地下ラビリンス~】


東京の地下に張り巡らされた地下空間。

まともな光源がないシックな空間は訪問者を上質な恐怖へと陥れる事でしょう。

更に地中を移動する魔物たちのせいで地下はしっちゃかめっちゃかな横穴で繋がれ迷宮化、

一度地下へ落ちたら最期、いつ魔物とエンカウントするか分からないスリルと極上の冒険をあなたに。

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