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「じゃあ、雌と雄一匹ずついただけますか?」
ひよこが増えるのもいいな。
可愛いんだろうなぁ。ちっちゃくてふわっふわで可愛いんだろうなぁ。
生まれたてのヒヨコを思い浮かべる。
「あいよ。まいどあり!鶏が増えすぎたら買い取りもしているから相談においで。」
ローズさんはそう言って、私に鶏が二匹入ったバスケットを渡してきた。
中でバサバサと羽を動かしている音がする。とても元気な鶏のようだ。
「あ、そうだ。忘れるところだった。これをあげるよ。引っ越し祝いだと思ってとっておきな」
そういって、ローズさんは金色に輝くオーブ状の物体を手渡してくれた。
これはなんだろう?
真ん中に横に線が入っているから開くのだろうか?
「それは、孵化機だ。一個の卵を孵化させることができる魔道具なんだ。普通に孵化させようとすると、一週間かかるが、これを使えば1日で孵化させることができるんだ。それに、普通に孵化させようとすると雌が一匹専属して卵を暖めるから、その間新しい卵を生まなくなっちまうんだ。この孵化器があればそんなことはないし便利だよ」
まあ、道具に任せたくないってんなら自然に任せるのが一番だけどね。と、ローズさんは続けた。
そうだよね。増えすぎちゃっても困るしねぇ。
でも、卵が毎日採れないのも少し寂しいような気がする。ある程度鶏が増えるまでは孵化機を使って、以降は必要な時だけ自然に孵化させようかな。
自分で育てた動物を食べるなんて、耐性のない私には無理だ。絶対、可愛がってしまうもの。
「増えすぎたら、草だけじゃご飯が間に合わないから鶏用の餌が必要になるよ。うちで売ってるから必要になったら買いにくるといいよ」
「ありがとうございます。」
この村の人は皆親切だなぁ。
突然、この世界に来てしまったどこの誰かもわからない私に優しくしてくれるなんて。
「じゃあ、帰ろう。私も荷物持ちするね」
「ありがとう」
マリアはそう言って、鶏の入っているバスケットを持ってくれた。
どうやら、このまま家まで来てくれるようだ。
マリアには本当に世話になってばかりだなぁ。




