2ー27
「2000万ニャールドの炬燵かぁ。夢の逸品だよねぇ」
マリアがしみじみと頷いている。
「マリアも炬燵欲しかったの?」
思わず聞いてみた。
常春のこの世界でも炬燵が好まれる理由というのを知りたいとも思っていたし。
「もちろんよっ!私は炬燵を使ったことないけれども、噂は流れてくるわ。炬燵はとても気持ちがよく暖かくなれる魔道具だって。それに、猫様も大好きで炬燵の中には猫様まみれの天国だって聞いているわ」
猫まみれの炬燵を想像しているのか、マリアの顔がうっとりと蕩けている。
こっちの猫も炬燵が大好きなんだね。なら、なんでこんなに炬燵って高いんだろう。
「炬燵ってなんでこんなに高いの?」
「炬燵というのは元々寒い地域で使用されているものなんだって。だからこの世界では需要がないらしいの。で、マコトさんが制作者なんだけど、材料費はかかるし魔力を込めるのも他の魔道具と違って大変なんだって。だから数が出来なくてプレミアがついて高くなっているのよ」
「マコトさんしか作れないの?他の人も作れたら量産できるんじゃないの?」
「そうなんだけどねぇ。今はマコトさんしか作れる人がいないんだって。そのマコトさんも他の魔道具を作成してたりするから、炬燵だけに時間が割けないっていうしね」
ふむふむ。需要と供給のバランスが取れていないから高値になってしまうのね。
でも、どうしてマコトさん以外炬燵を作れないのかしら。
マコトさんがこの世界に来てから50年経つのに、一人くらい作れるようになっていてもおかしくないのに。
『次はぁ~。異世界からの迷い人とぉ~猫様の合作ですぅ~。なんとぉ~飲める化粧水ですぅ~』
炬燵に思いを馳せていると、テレビから私が作った化粧水が紹介されていた。
「あ、マユ。見なきゃ」
「う、うん」
さて、いくらの値がつくのか楽しみだ。
オークション会場では一段高い壇上に化粧水が飾られた。
『この化粧水はぁ~飲むとぉ~お肌つるつるぅ~になりまぁすぅ~。しかもぉ、付属効果としてぇ~肌の色がほんのり変わりますぅ~』
鑑定士さんが、化粧水を指しながら紹介をしている。ボーニャとの合作とあってか、会場内の大半が化粧水に注目しているようだ。
猫様効果ってすごい。
『私もぉ~試してみたんですけどぉ~。そっこーでお肌つるつるになりましたぁ~。ってことで、開始値は通常の化粧水の価格の1000ニャールドからですぅ~』
鑑定士さんが告げると、オークションが開始された。
『1100』
『1150』
『1200』
うむ。
さっきの炬燵と違って知名度がないからか、値段が思ったように上がらない。小刻みに上がっているようだ。
「あら、思ったように値段が上がらないわね。珍しいものだと思うのになぁ」
「うむ。こんなに美味しいのにのぉ~」
マリアも村長さんも残念そうに中継を見ている。でも、普通の化粧水よりは高値がついているし満足しなきゃね。
『1300』
『1350!』




